さよならのかわりに10
playmakerのスキル、データストームの発動が宣言された。

ライフポイントが1000以下となったことで、どこからともなく発生した強烈な風が渦を巻き始める。停滞することなく動き続ける自然災害は、playmakerの電脳世界との密接な親和性により引き出された強力なスキルに変貌を遂げた。砂埃の柱が目視できるまでの規模になると、もうただの災害である。スピードデュエルを行うゴーストとplaymakerの乗るデータストームの風が下から上へと巻き上げられていく。細長く伸びる高速な渦巻きは次第に近くのオブジェクトを巻き込みながら肥大化していった。強烈な風を伴ってスピードデュエルを阻害する。近くのエリアに甚大な被害をもたらしながら、ゆっくりと近づいてくる。ゴーストは当然回避行動、playmakerはそのまま突っ込んでいく。


『風をつかめ、playmaker!』


中心部では猛烈な風が吹き、巻き込んだオブジェクトを一瞬で破壊させていく。巻き込まれたオブジェクトは空中に巻き上げられ、四方八方にまき散らされていく。現在のplaymakerの逆転の一手となる重要な局面だ。


『今回はまた特大なやつがきたぜ!振り落とされんなよ!』


playmakerのアバターが発光する。playmakerの呼びかけに《サイバース》の住人達が応じ始める。その答えはいつだって1枚のカードとなってもたらされた。《魔弾》という強烈なパーミッションデッキに対抗しうる強力な対抗手段。エクストラカードに舞い込んだ新たなる力。playmakerはしっかりとテキストを確認する。いつだってデータストームはplaymakerの力だった。


「あのとき俺にとどめを刺さなかったことを後悔させてやる」


手を抜かれたことがちょっと嫌だったplaymakerの言葉にアイはこっそり笑った。


「こい、俺の元に!」


playmakerの叫びに光が渦を描きながら集まってくる。ひとつの輪郭を形取り始めた光はやがてデュエルモンスターズのカードとなる。青い輝きがあたりに散っていった。


「すっごいね、これが噂のデータストーム!」


興奮気味にゴーストは笑う。


「俺のスキルを見たいがためにあえて攻撃を止めたこと、後悔するんだな」

「さーてそれはどうだろうねえ!だってボクにはそれを仕留めるだけの充填は完了してるもの!そこまでたどり着けるかどうかみせてよ!」

「いいだろう、ゴースト!アンタの誰にも見せたことがないそのスキル、発動させるまで追い詰めてやる」

「おっと、強気に出たね。楽しみにしてるよ!どうせなら強いデュエリスト相手に使いたいしね、ボクのスキル!」


(ボクがスキルを発動するとしたら、それはきっとplaymakerとの最後のデュエルになるだろうけどね)


ゴーストの気持ちなどしるはずもないplaymakerは入手した新たなる力をエクストラデッキにくわえる。 


「さあて、いい力は得られたかい?そのサーバースと特別な親和性がある人間だけに許されたリンクセンスとデータアクセス、playmaker、キミたちだけの力だ。きっといい子が来てくれたんだろうね」

「なぜそう思う?」

「だって今いい顔してるもの」


ゴーストに指摘され、playmakerは緩んでしまっていた頬を抑えた。アイの視線を感じてちら、と横を見るがアイは不自然なまでに目を合わせようとはしない。震えているのがわかる。笑っているのだろう。戻れ、ととっても低い声が出て、びくっと肩をふるわせたアイはこれ以上の逆鱗を恐れておとなしく目玉モードになった。


「いくぞ、ゴースト!弾丸の準備はできてるか」

「いつでもかかっておいでよ、playmaker。真正面から展開を叩き折ってあげる!」


データストームを乗り越え、ふたたびサイバースの風はひとつになり、playmakerとゴーストのスピードデュエルは至近距離の攻防に戻っていく。


「俺のターン、ドロー!!」


カードを手にしたplaymakerは今度こそ口元をつり上げる。カードが何枚か伏せられ、そして怒濤のリンク召喚が幕を開けた。

playmakerから繰り出されるモンスターたち。あっという間に3体埋まり、《デコード・トーカー》が呼び出された。


「そうはいかないよ、手札から罠発動《魔弾ーデスペラード》!自分フィールドに《魔弾》モンスターが存在する場合、フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する!」

「まだだ!まだ終わっちゃいない!」


playmakerは叫ぶ。そして墓地に行ったモンスターたちのトークン生成、蘇生からの連続リンク召喚により、また三体のモンスターが並ぶ。


「アローヘッド確認、召喚条件はモンスター3体!俺は《サイバース・ガジェット》と《バックアップ・セクレタリー》、そして《デジトロン》をリンクマーカーセット!サーキットコンバイン、リンク召喚!リンク3《パワーコード・トーカー》!!」


それは真っ赤な《コード・トーカー》モンスターだった。焔の剣を振りかざし、颯爽と現れた新たなる《サイバース族》はplaymakerの先陣を切ってゴーストと相対する。


「なら発動させてもらうよ、罠カード《デモンズチェーン》!フィールド上に表側表示で存在する効果モンスターを指定して効果を発動!もちろん《パワーコード・トーカー》だ!対象は攻撃する事ができず、効果は無効化される。つまりただの木偶の坊だね!」

「それだけは断る。速攻魔法発動《サイクロン》!フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する!これで無効だ!」

「うーん、残念だけど無理だよ。カウンター罠発動《魔弾ーデッドマンズバースト》!《サイクロン》は無効だよ」

「なら《サイバネットバックドア》で《パワーコード・トーカー》を除外させてもらう」

「じゃあキミのフィールドはガラ空きだね、playmaker」

「そうだな。ターンエンドだ」

「じゃあボクは《魔弾の悪魔 ザミエル》の第二の効果により、二枚ドローさせてもらうよ」


ゴーストは笑う。


「ボクのターン、ドロー!ボクは《魔弾の射手 カラミティ》と同じ縦列で《トゥーンのもくじ》を発動、《魔弾の射手 カスパール》を守備表示で特殊召喚!じゃあ、バトルといこうか、playmaker!ボクは《魔弾の悪魔 ザミエル》でダイレクトアタック!」

「それだけは通せない。俺は手札から《ロックアウト・ガードナー》のモンスター効果を発動!相手モンスターの直接攻撃宣言時にこのカードを手札から攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、このターン戦闘では破壊されない」

「うーん、しぶといねえキミ」

「それほどでもないがな」

「やるなあ、じゃあターンエンドだよ。うーん、こう着状態」


playmakerはドローを宣言した。


「《サイバネットバックドア》の効果により《パワーコード・トーカー》はフィールドに帰還する!さらに直接攻撃の効果を付与!ここで《パワーコード・トーカー》第一のモンスター効果!1ターンに1度、表側表示モンスターの効果をターン終了時まで無効にする!宣言するのは《魔弾の射手 カスパール》。新たな《魔弾》魔法罠を補充されたらたまらないからな」

「あはは、やるじゃないか!さすがはplaymaker!そうこなくちゃ!」

「さあ、バトルだ、ゴースト!俺は《パワーコード・トーカー》で《魔弾の射手 ザミエル》を攻撃!この瞬間、リンク先の《ロックアウト・ガードナー》をリリース。そして、《パワーコード・トーカー》のモンスター効果を発動!このカードが戦闘を行うダメージ計算時、リンク先の自分のモンスター1体をリリースすることで攻撃力は倍の4600となる!さっきのダメージ分、きっちり返してもらうぞ」

「さすがにワンキルはやだなあ、せっかく楽しくなってきたのに!というわけで発動させてもらうよ!速攻魔法《魔弾ークロスドミネーター》!自分フィールドに《魔弾》モンスターが存在する場合、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力・守備力は0になり、効果は無効化されるね」

「まだだ。さらに罠発動、《リコーデッド・アライブ》!バトルを終了した《パワーコード・トーカー》を除外し、エクストラデッキから《コード・トーカー》モンスター1体を特殊召喚する!こい、《デコード・トーカー》!!」

「おっと、そうはいかないよ!ボクは2枚目の《魔弾ークロスドミネーター》を発動!対象はもちろん《デコード・トーカー》だ!《パワーコード・トーカー》がいないから《魔弾の射手 カスパール》のモンスター効果で《魔弾》カードをデッキから手札に加えるよ」

「やはり半端な展開では阻害されるか。なら、俺はエクストラゾーンにモンスターがいないため、墓地に行った《リコーデット・アライブ》の第2の効果を発動!墓地のこのカードを除外し、除外されている《コード・トーカー》モンスター1体を特殊召喚する!再びフィールドに舞い戻れ、《パワーコード・トーカー》!!」

「うげっ、また《魔弾の射手 カスパール》の効果無効にされちゃうじゃないか、めんどくさい」

「俺はターンを終了する。これで《魔弾ークロスドミネーター》の効果はきれて攻撃力と効果が復活する。《デコード・トーカー》のリンク先に《パワーコード・トーカー》が存在することで、《デコード・トーカー》の攻撃力は500ポイントアップ。よって、攻撃力は2800だ」

「ボクのターンだね、playmaker。ね、いったでしょう?簡単には負けてあげないよって。キミのエンドフェイズだから、《魔弾の悪魔 ザミエル》のモンスター効果を発動させてもらおうかな。また2まいカードをドロー!なかなかいいデュエルじゃない?ストームアクセス見られたし、ボクは満足だよplaymaker」

「お膳立てされた危機はいただけないがな」

「まあそういわないでよ、カッコいいよ、《パワーコード・トーカー》。純粋にパワーで殴られるとガチできついから勘弁してほしいなって思うくらいには強いから!」

「どこまで本気なんだか」

「それはキミの想像に任せるよ」


ゴーストはウインク一つ、playmakerに笑いかけた。playmakerは眉を寄せている。


「俺たちの闘いに面白半分で首突っ込むのはもうやめろ」

「やだね、それだけはできない相談だ」



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bkm






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