2週目歌仙とリセット本丸4

「今日から部隊を3つまで編成できるようになったから、今までとは部隊編成を変えようと思う」

主の言葉にいよいよかと僕達は背筋を正した。

「短刀部隊の平均レベルが目標値に到達したから、岩融と巴形薙刀は第3部隊に移籍してくれ。部隊長は引き続き岩融」

「よかろう!次から次へと敵を狩ろうぞ。にして3番隊の編成はどうするのだ?」

「補充戦力の役目、たしかに拝命した。必ずやお役目を果たそうぞ。おそらくは岩融、4番隊の条件である遠征を成功させねばならないことを考えると槍の誰かを顕現させねばならないのではないか?」

「なるほど、新入りの育成だな!あとの3振りはどうするのだ、主よ」

「巴形のいう通り、本丸の運営も軌道に乗ってきたから槍の新入り、あと2振りは打刀、1振を太刀で予定してる。うちの本丸歌仙しか打刀がいないんでな」

「いつもどおり生存を重視するなら、和泉守兼定と大倶利伽羅になるね。槍は蜻蛉切がいいんじゃないかな。太刀はどうする?」

「小烏丸にしよう。よし、2人はあとで鍛刀部屋にきてくれ。代わりに3番隊の部隊長として脇差の物吉貞宗を指名する。やれるな?」

「ぼ、僕が隊長......!?は、はいっ、みんなが勝てるよう、がんばっちゃいます!」

「短刀は引き続き小夜左文字、不動行光、前田藤四郎、乱藤四郎、博多藤四郎の5振りに頑張ってもらう。4番隊が解禁されたら、脇差や短刀を顕現する余裕ができると思うから薙刀の2人にはそれぞれ隊長にわかれることになるだろう。池田屋さえ攻略できれば長いこと顕現出来てない残りの48振りの顕現も行う予定だ。もう少しの辛抱だ、頑張ってくれ」

「主、僕達一番隊はどうするのさ?」

「これからいうとこだったんだよ、急かすな。一番隊長は歌仙兼定、編成は次郎太刀、太郎太刀、石切丸、ソハヤノツルキ、大典太光世。つまりそのままだ」

「恐悦至極、まあ当然だよね」

「はあーい、質問!池田屋は狭いとこばっかであたしらは向かないって話だけど、じゃああたしらはどうすんだい、主?一番隊は遠征できないよね?」

「そろそろ演舞にも出ていい頃合だろうからな、時期が来たら頼むよ。池田屋の次はどうも第1部隊の出番になりそうな予感がするからな。池田屋攻略と並行して、一番隊には引き続き最大戦力として腕を磨いてもらう予定だ」

「主ー!内番は?」

「引き続き歌仙兼定とソハヤノツルキ、短刀部隊で回してくれ」

「なんでだよ!?新入りが4振りも来るなら抜けてもいいだろ!!」

「よくない。早く抜けたかったら偵察ばかり上げてないで、はやいとこ生存をあげてくれ。以上だ」

「えええー!!」

「それぞれの部隊の日程を調整をしたいから部隊長は残ってくれ。隊員は解散」

僕はそのまま会議に参加になったのだった。




「今日から演練に参加するということだけど、他の本丸の刀剣男士の第1部隊と戦うだろ?かつての仲間と遭遇する覚悟が決まったって考えていいのかい、主?」

「そうだな、いつかはやってくることだ。逃げてても仕方ないし、時の政府に今の俺たちの実力を見せなきゃいけないしな」

「ならいいよ、僕達はいつも通りの実力を披露するだけだからね」

「頼んだぞ、歌仙」

「この僕を誰だと思っているんだい?之定が一振、歌仙兼定だよ?」

主はなんだよそれと笑ったのだった。

そしてその日の午後、注連縄がされた三本松の大広間に僕達はいた。前に立ち上る巨大な松明の熱気がこちらにまでやってきそうだ。紫の装束に身を包んだ者たちが並んでいる。カシの葉に息を吹きかけ、手を交差させて後ろに投げた1人がが、体内に宿った悪霊を振り払うために赤土をお神酒で練ったものをご祈祷してからなめて、残り土で柱に「山」と「八」の字を書き込む。

白装束の男がホラ貝を吹いた。

紫装束の男たちの手の松明に火がともされると、炎がまたたくまに燃え広がった。

汲み上げられた聖水は、大松明で清める壮麗な儀式経た後、傍らを流れる川に沿って、1.5kmほど上流の瀬へと運ばれて行く。

この聖水を送る行列は先頭に大松明を掲げ、それに何百もの松明が続いて、深閑とした漆黒の闇の谷間に、幻想的な光景を描き出していく。

そして、川の瀬に到着すると、ここで再び大きなかがり火が焚かれて、清められた後、聖水は、おごそかに深い淵へと注がれていく。

どこからともなく、荘厳な声が聞こえてきた。

「汝ら審神者率いる本丸第1部隊は、歴史修正主義者から民の歴史を守りし術をその身に刻みし者たち。任務の最中、修練場に出向いた汝らの御足労に感謝する。この定期報告会は汝らの有り様を今ここで示す場である。まずは汝らの忠誠のほどを示せ。汝の名の叫びをもって其れを裁断す」

音もなく松明が消えていき、あたりは真っ暗になった。

隣で主が叫んだが、名前だけは聞き取ることが出来ない。それが修練場の修練場たる所以だった。

ふたたび松明が大広間を照らし出す。

「汝のその叫びをもってすれば、審神者の重責をもはね返せよう。この定期報告会は、汝らの日頃の実践さながらの部隊の戦いを披露する場でもある。修練、鍛錬、の成果を存分に発揮されたし」

声は聞こえなくなった。

「これより、五番勝負を行う。両者であえいっ!」

紫装束の男が叫ぶ。

「歌仙、行けるな」

僕はうなずいた。

「細かいことは言わなくていい、攻め口を教えてくれ」

主はじっと相手を見つめて陣形を予想し、指示してくる。どうやら僕の予想と同じらしい。僕は一番隊に陣形を指示した。

「文系の意地があるんでね、武辺者には負けられないな」

僕は本体を構える。そして先陣をきったのだった。







快勝とはいかなかった。辛勝に次ぐ辛勝だった。それでも僕達一番隊は僕やソハヤノツルキ、大典太光世が確実に一振一殺を心がけていたし、大太刀の三人は確実に残りを纏めて屠っていった。おかげで誉は大太刀の誰かがいつも獲得していたが、僕は気にしなかった。最後まで誰かしらが立っていればいいと思っていたし、それが僕でなくても構わなかった。

気づけば4勝だった。あと一組勝てば全勝となるが、そうは問屋が卸さないだろう。この五番勝負はいつだって最後に戦う本丸こそが屈指の実力者を擁すると相場が決まっているのだ。それまではこちらの戦力と拮抗するように定期報告会の運営側が調整をしてくれるが、最後の戦いはそうはいかない。極ばかりの短刀部隊だったり、僕達より遥かに強い部隊だったり。学ぶことも多いが警戒するに越したことはない。

主に提示される電子端末には、数週間前に始めた主とは桁違いのランクにいる審神者のデータが載っていた。主が部隊をみる。

僕達も前を見すえた。陣形を考えなくてはならないからだ。

「......え?」

さすがの僕も驚かざるをえなかった。第1部隊の面々も困惑している。

「おい、歌仙......どういうことだ?定期報告会ってのは、一戦ごとに手当してもらえるものじゃないのか?」

「あ、わかったー!まだ手当終わってないんだよ」

「いえ、どうやらそうではないようですよ。ねえ、歌仙」

「そうだね、あれは......初めからああなんだろうさ。それだけ自信があるんだ」

最後の演武の相手はなんと一人だったのだ。一瞬僕達の知らない大太刀かと思ったが、どうやら違うらしい。

「ひとり......?いや、うちの太郎太刀とは明らかに違うな、白装束......?まさか、極ってやつか。しかもこの霊力は......?」

主は混乱している。なぜ相手から自分の霊力が感知できるのかわからないのだ。僕もうなずいて続ける。

「どうして主の霊力なんだろうね、といいたいところだが、おそらく不思議な巡り合わせってところだろう。あるいは主催側の粋なはからいかな?」

僕の言葉に紫装束の男たちは反応がない。布をはい出みてやりたいものだ。

「いくら神がかりとされ、霊格が上がろうと、今の私は彼の実戦刀。そういうことですよ。お久しぶりですね」

「やはり、君は前の本丸の太郎太刀だね」

「おや、驚きましたね。なぜ貴方がここにいるのですか、歌仙兼定。貴方は確か......」

「小鳥丸の言葉を借りるなら、星の巡り合わせっていうやつだよ」

「なるほど......。まあ、あなたに拾っていただき、この領域にまで霊格を引き上げていただいた恩は忘れませんが、今の私の主は彼です。悪く思わないでくださいね」

「それが前の本丸解体のときに選んだ道なんだろ?ならいいじゃねえか、ここでぶつかるのも一考だ」

「あなたならそう言ってくれると思っていました。ありがとうございます。生きていてくれた、それだけが嬉しかった」

そして相手の太郎太刀は本体の切っ先を向けてきた。松明の揺らめく中に氷のようにきらめきつつ振り回される刀の光が、言いようもないほどおそろしい。思い出は思い出として通り過ぎてきたのだから、これからのためにたち塞がるつもりらしい。

僕は息を飲んだ。

「さあ、来なさい。私はここですよ。私に攻撃を届かせるだけでも、修行になりますからね。今の貴方がたの実力見せてもらいましょう」

「いってくれるじゃないか」

前の本丸の刀剣男士はみんな、序盤に加入したこの太郎太刀の加護を受けて育ったといっても過言ではなかった。検非違使の置き土産だった今まで見たことがないほど巨大な太刀を持ち帰ることが出来たのは後にも先にもこれきりだと小夜左文字がいっていたことを思い出す。

僕もみんなと同じように、かつて薙刀が誰もいない本丸の環境下で強くなるための付き添いしてもらった。すでに能力値が最大値を迎えていたこの太郎太刀に何度鍛錬をお願いしたか覚えていない。

つまり、僕の手の内はモロバレ、主の得意とする戦術も把握されている。しかも相手の太郎太刀はかつてその中核を担ったこともある強敵というとんでもない現実が僕達の前には横たわっていた。

「だからといって僕達が負ける理由にはなりえない」

僕は太郎太刀に切りかかったのだった。

その大太刀が、ほとんど無意識のうちに僕の一撃を受けとめた。刀装すら剥がせない。今までの第1部隊とは隔絶した力の持ち主である証だ。僕が太郎太刀をとめている間にソハヤノツルキと大典太光世の太刀の刃が割って入り、そうぜんとした響きと共に、またたく間のあいだ、火花を散らした。

ひとはくおいて、僕の部隊にいる太郎太刀や次郎太刀、石切丸が攻撃をしかけたのだった。



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