第1期終幕C(修正済み)
「時間ぴったり、きてくれたのね、ゴースト」


リンクヴレインズのあるエリアにて。待ちわびていたゴーストガールは、そこに現れた男性アバターに話しかけた。


「うん、きたよ」

「うーん」

「どうしたのさ、おば」

「なーに?誰がおばさんですってー?こんな素敵で可愛いお姉さんからのデュエルの申し込みに応じておいて、それはないんじゃないのかな?」

「……ナンデモナイデース」

「うんうん、素直がいちばんよ、素直がね」

「ま、御指名とあっちゃあデュエルしないわけにはいかないよね!初めまして、ゴーストガール。こうして会うのは初めてだね」

「ええ、噂はかねがね聞いてるわ。うちのクライアントの中でもなかなかの人気者なのよ、あなた。うちのお得意様は特にね」

「それはSOLテクノロジー社かな?それともグレイ・コード?」

「それは秘密よ、私の信用問題にかかわることだから。ごめんなさいね」

「それは残念、まあいいや。それはいずれわかることだしね。ボクがなにもしなくてもplaymakerが教えてくれる」

「あら、私のパーソナル情報を抜いたのに動かないの?」

「デュエルしたい人リストを作る以外で使うのはボクの流儀に反するんだよねー、これがさ」

「ふふ、どこまで本当なのかしら、わかったものじゃないわね」

「ひどいなあ。これでもボク、playmakerにわかりやすいから助かるって言われることに定評あるんだよ?」

「それって褒めてるの?明らかに呆れてない?」

「そうともいうかもね、うん」


ゴーストは笑う。


「それじゃあ、お近づきの印に」


それは一瞬だった。先ほどまでいた場所から忽然と姿が消える。弾かれたように周りを見渡したゴーストガールは、真後ろから伸びてきた手がアバターを貫通する衝撃に息を飲む。


なにかを探られるような不可解な感覚、そして警告音、ゴーストガールのデュエルディスクやアバターの所属先から真っ赤なメッセージがならぶ。


「手荒な真似をするのね、なんのつもりかしら?」


ゴーストガールからは冷や汗がつたっている。演出の一環だろうが体に他人の手が突き刺さっているのはなかなかにえぐい光景だ。間近でまさかのホラーである。いらない特等席にゴーストガールの声は自然とうわずった。


「君のパーソナル情報はいただくね、おねーさん」


真後ろのゴーストの手のひらにはくるくると回転する発行し続けるマテリアル。四角いキューブのようなそれはゴーストのアバターにとりこまれてしまった。ゆっくりと振り返ったゴーストガールはひきつった笑みを浮かべている。


「こ、これはずいぶんな挨拶ね、ゴースト。ちょっと悪ふざけがすぎるんじゃないかしら?せっかくあなたの情報をクライアントにばら撒かないって確約のためにこの身一つできてあげた私に失礼じゃない?」

「そんなことないよ、お姉さん」

「どうして?」

「だってこのボクが生体情報をいただくのはお気に入りの決闘者だけに決めてるんだ。ボクがパーソナル情報をいただくのは、次があるってことだよ」

「あら、そうなの?もしかしてうちのお得意先になってくれたりするのかしら?」

「それは今日のお姉さんとのデュエル次第ってとこかなあ、まだまだわかんないよ?」

「でもとりあえずは気に入ってもらえたってことでいいのかしら?」

「うん、あってるよ」

「もしかして、playmakerがあなたに連絡とれたのは、逐一playmakerを観察できる立場だからだったりするの?」

「うん、まあね。ボクさ、playmaker推しだから」

「うーん、お姉さんさすがにちょっといけないと思うわよ?パーソナル情報の強奪はサイバー犯罪の中でも重罪じゃない」

「まーね、でもゴーストガール、君にだけはいわれたくないかな」

「うふふ、たしかにそれをいわれると痛いかもね。それならがんばらなきゃ。あのplaymakerがわざわざ私との交渉に応じてあなたをここに呼んでくれたわけだしね」

「そうだね、ボクもplaymakerがいうから応じたんだよ。デュエルログは見せてもらった、いいデュエルだったね」

「ほんとにデュエルが好きなのね、ゴースト。しんじゃった決闘者の幽霊って噂はあながち間違いじゃないのかしら?」

「さあ、どうだろう?デュエルすればわかるんじゃないかな?」

「それもそうね。ところであなた、ほんとに徹底してるわね、そんなに身バレしたくないの?」

「なにがだい?」

「だってそうでしょ?生体情報をデータに変換してログインしてる以上、どんなにアバターをカスタマイズしたって必ず男か女かはわかるわ。人間、好みってものがある以上、それを分析すればある程度の傾向は掴めるはずなんだけどね。あなたはほんとにわからない。解析しても、ほんとデータを収集してるんじゃないかと思うほどいろんなアバター使ってるでしょう?今だっていろんな姿のあなたが他の決闘者とデュエルしてる。果たしてあなたはどれがほんとなのかしら?」

「どれがいい?」

「私はイケメンな男性を希望するわ。男か女かすらわからないんだもの、中の人くらいは好きに想像させてもらうわ」

「そっか、なら今度デュエルしたくなったら君のデュエルディスクにメッセージ送るから、御指名よろしくね。それなりの格好はしてあげるよ」

「あら、意外とノリがいいのね、ゴースト」

「ボク、楽しいこと大好きなんだよ。もちろん一番はデュエルだけどね」

「ふふ、私も好きよ」

「奇遇だね、じゃあ始めようかゴーストガール」

「ええ」

「どこかで見てるはずの誰かさんのためにもね」

「そうね、下手なデュエルはできないもの。こことかね、足長おじさんとplaymaker、見てるかしら?」


ばっちりカメラ目線でゴーストガールはウインクを飛ばした。真正面からウインクを受け取った草薙は苦笑いする。遊作は腕組みをしたまま眉を寄せた。隣で初めて見るゴーストガールという情報屋に和波はきれいな人だと見入っている。アバターだからどんな人かなんてわからないという最もな指摘が遊作から飛んでくる。ぐさっと突き刺さった和波はちょっとくらいドキドキしてもいいじゃないですかとぼやいた。


「バレてるな」

「それくらい想定内だろ、草薙さん」

「ああ」

「え、そうなんですか?」

「ああ、ゴーストガールは複数の取引先をかかえた売れっ子だ。俺たち以外にも見に来てる奴がいるんだろ、たぶんな」

「たとえば?」

「ゴーストの本体とかな」

「なに?わかるのか?」

「なにおどろいてるんだ、草薙さん。ゴーストがアバターにログインするのは俺とデュエルするときだけだろ。このゴーストは電子の気配しか感じない。AIにやらせてるんだ」

「すごい、モニタ越しにでもわかっちゃうんですね、藤木くん」

「それも見越して初めから本体がログインするきはなかったみたいだな。俺たちが特定するのはお見通しか」


遊作はどこか不機嫌そうだ。デュエルをするために広いフィールドに移動し始めた2人を睨むように見つめている。


「でもGO鬼塚やブルーエンジェルともデュエルしてなかったか?」

「たしかに」

「最近のゴーストは表に出てくるようになったしな、いやまてよ。たしかにあの2人とは......!なにか関係あるのか?」

「playmakerが認めた実力者とか?」

「あ、2人ともplaymakerとデュエルしたことありますね」

「そういえば俺とあいつらがデュエルしたあとにすぐデュエルしてたな、ゴーストのやつ」

「あっはっは、ここまでくると筋金入りだな、遊作。いちばんのファンが熱狂的だと大変だな」

「草薙さん、だから毎回そんなにやにやしながら指摘するのやめてくれ」

「そういえば僕がゴーストにデュエルを挑まれたのも、藤木君にデュエルを挑まれた後すぐだったような?」

「和波、みなまで言わなくてもいい、わかってる」


はあ、と遊作はため息をついた。


「ほんとにそれだけなんですかね、なんか意味深なこといってたんでしょう?」

「ああ、俺が思い出さないと明かす気はないらしい。俺はそれが知りたいっていうのに」


舌打ちはまた後攻ワンキルを食らったことに対する悔しさだろうか。さすがにそこまではわからなかった。


(HALノリノリだなあ)

(特注で作り上げた飛び切りの複製AIだかんな、見てろよ見てろよ)

(うん、楽しみにしてる)


アイが実体を取り戻したことで連動して実体を取り戻したHALは和波のデュエルディスクから身を乗り出して分身の活躍を見守っている。


デュエルの開始を告げるブザーが鳴り響く。先に点灯したのはゴーストガールのほうだった。


「先攻はいただくわね、ゴースト。せっかくだからあなたとのデュエルが少しでも長く楽しめるように、しっかりと準備させてもらうわ」

「うんうん、いい心構えだと思うよ。ボクとデュエルするときは防御札握ってないと勝負は一瞬だからね!」

「あら怖い。ならさっそく!私は《オルターガイスト・マリオネッター》を攻撃表示で召喚!」


ゴーストガールの呼びかけに応じて、フィールドに奇妙な色合いの円が出現する。まるで花のような突起が現れ、中心から機械仕掛けの人形が出現した。奇妙な鳴き声をあげ、独特の揺れを伴ってゴーストガールの前に浮遊し始める。


「召喚に成功したことでモンスター効果を発動よ。デッキから《オルターガイスト》カードを1枚サーチしてセットすることができる。さらにカードを1枚伏せてターンエンドよ」

「順当に守りを固めてきたね。でも、これから始まるボクの猛攻、全部防ぎきることはできるかな?」

「それはやってみなくちゃわからないわね」

「よし、それじゃあボクのターン、ドロー!」


ゴーストはカードを引き抜いた。


「さっそく発動させてもらおうかな、魔法カード《手札抹殺》。お互いに手札をすべて捨てて、その枚数分デッキからカードをドローしようか」

「さっそく始まったわね、墓地肥やし」

「これがないと始まらないからねえ。よし、いいカードがきてくれた。発動するよ、魔法カード《トレード・イン》!手札からレベル8のモンスターを捨てて、デッキからカードを2枚ドロー。ボクが捨てるのは《破壊竜ガンドラ》」

「これが噂のガンドラシリーズね?よかった、他の人と一緒で見せてくれないんじゃないかと思ったわ」

「playmakerから直々にお願いされちゃ手を抜くわけにはいかないからね」


お互いに墓地に送られていくカードは開示情報である。ゴーストガールはいつ罠で妨害すべきか慎重に見定めている。


「《エクリプス・ワイバーン》が落ちたから、ボクは《破壊龍ガンドラ・ギガレイズ》をデッキから除外するよ。そして、発動魔法カード《光の援軍》!デッキからカードを3枚墓地に送って、レベル4以下の《ライトロード》モンスターを1枚手札に加える!もちろんボクがサーチするのは《ライトロード・サモナー ルミナス》!ついでにもう1枚サーチさせてもらおうかな、さらに発動《光の援軍》!3枚カードを墓地に送って、今度は《トワイライトロード・シャーマン ルミナス》を手札に加えるよ」

「これはまずいわね」

「あはは!なにいってるのさ、まだまだだよ!《ライトロード・サモナー ルミナス》を召喚。モンスター効果を発動!」

「そうはいかないわ、永続罠発動《オルターガイスト・プロトコル》!」

「え、このタイミングで発動するのかい?」

「ええ、私の狙いはこちらよ。《オルターガイスト・マリオネッター》を墓地に送って、その効果を無効にして破壊させてもらうわ」

「なるほど。でも、その程度でボクはとまらないよ!ボクは墓地にある闇属性の《トワイライトロード・シャーマン ルミナス》と光属性の《エクリプスワイバーン》を除外して、《混沌帝龍ー終焉の使者ー》をフィールドに攻撃表示で特殊召喚!この瞬間、《エクリプスワイバーン》のモンスター効果を発動、除外されてる《裁きの竜》を手札に加える!」

「でも残念だったわね、ゴースト。これじゃ、あなたのエースである《裁きの竜》は特殊召喚できないわ。光属性がたりないもの」

「それはどうかな?」

「えっ」

「ボクが何も考えずに除外したと思ったら大間違いだよ!今、ボクが《混沌帝龍ー終焉の使者ー》を特殊召喚したことで、ボクの墓地のカードはすべて別のカード!このときだけ召喚することができるカードがあるんだ!」

「なんですって?!」

「ボクの墓地にモンスターが5体以上存在し、そのモンスターがすべて違うときのみ特殊召喚することができるんだ。きて、《影星軌道兵器ハイドランダー》!!」


光が空高く舞い上がる。そして、その光が空を満たした時、はるか上空からこちらを見下ろす巨大な機械が出現した。


紫色の巨体からいくつもの端子が出現し、その先にあるまるで意思を持った龍の頭は火の矢を打ち落とそうとゴーストガールを狙っている。


「《影星軌道兵器ハイドランダー》のモンスター効果を発動、デッキからカードを3枚墓地に送って、墓地のモンスター名がすべて違うときフィールドのカードをすべて破壊することができるんだ。残念ながら違っちゃったけど、問題ないよ」

「3枚も墓地肥やし……」

「さあ、まだまだいくよ。ボクはレベル8《影星軌道兵器ハイドランダー》とレベル8《混沌帝龍ー終焉の使者ー》でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!きて、ランク8!《NO.107 銀河眼の時空竜》!!」


データストームの風を思わせるほどの暴風が吹き荒れる。そのすべてをなぎ払い、出現したのは見上げるほどの巨体である。美しい光沢をまとい、そのドラゴンは高らかに咆哮した。


「さらにオーバーレイユニットを再構築!エクシーズ召喚、《ギャラクシーアイズ・FAフォトン・ドラゴン》!」


銀河を瞳に宿したそのドラゴンを黄金色の輝きが鎧のように幾重にも折り重なり、新たな姿を産み落とす。閃光の先に現れたのは、空を覆わんとするほど巨大なドラゴンだった。


「エクシーズユニットを1枚取り除いてモンスター効果を発動!君の伏せカードを破壊させてもらうよ!」

「──っ!……さすがはデュエルを求めて放浪する亡霊だけはあるわね」

「あははっ!もう一度オーバーレイユニットを再構築!エクシーズ召喚、《NO.95ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》!エクシーズユニットを1枚取りのぞいて、モンスター効果を発動!デッキからドラゴン族モンスター3体を墓地に送るよ。もちろんボクが送るのはガンドラ達!さあ、デッキからモンスターを3体除外してくれるかな?」


遙か上空から打ち落とされた強烈な光がフィールドに降り注ぐ。すべてが光に包まれてしまった。


「───っ!」

「これでバックはがら空き!いくよ、ゴーストガール!《NO.95ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》でダイレクトアタック!」

「ちょっとせっかちすぎないかしら、ゴースト。もうちょっと楽しみましょうよ」

「おっと?」

「私は手札から《オルターガイスト・クンティエリ》を守備表示で特殊召喚するわ!」

「えっ、でもフィールドには」

「せっかちさんなんだから。《オルターガイスト・クンティエリ》は《オルターガイスト》カードが表側で存在していればいいの。つまり罠でもOK、わかった?」

「あ、あー、なるほど。そういうことかあ」

「ええ、そういうこと。せっかちさんは女の子に嫌われちゃうわよ、ゴースト。そういうわけでその攻撃は無効にさせてもらうわね。もっとゆっくり楽しみましょうよ」


ウインクを飛ばすゴーストガールに、彼は笑う。


「うん、それもわるくないかもね」


ちょっとデュエルが楽しくなってきたようである。


「ふう、どうなることかと思ったけど、なんとか防ぎきれたわね。それじゃ、今度は私の番よ。ドロー!」


ゴーストガールは髪をなびかせ、カードを掲げる。


「それじゃあ、真打ち登場といきましょうか!私は《オルターガイスト・マリオネッター》を攻撃表示で召喚、デッキから《オルターガイスト》罠カードを1枚セットするわ」


ふたたびフィールドの盤面を整え始めた彼女は、攻勢を強める。ゴーストガールのフィールドに、歪な踊りに興じる独特な形状をした亡霊が出現する。そして仲間を呼ぶ悲鳴をあげた。


「ここで《オルターガイスト・マリオネッター》の第2の効果を発動、《オルターガイスト・プロトコル》を墓地に送って、墓地の《オルターガイスト・マリオネッター》を攻撃表示で召喚よ!」


増殖した亡霊達は、動きを封じられているドラゴンを挑発するように舞い踊る。


「これで準備は整ったわ。さあ、私の前に開きなさい、未知なる異世界につながるサーキットよ!」


ゴーストガールが宣言した瞬間、両手から無数の糸があふれ出し、周囲に魔方陣を形成する。巨大なゲートが真下に出現した。


「アローヘッド確認、召喚条件は《オルターガイスト》モンスター2体以上!私は《オルターガイスト・マリオネッター》2体と《オルターガイスト・クンティエリ》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン、リンク召喚!リンク3,《オルターガイスト・プライムバンシー》!!」


赤い異形の亡霊が不気味な音を立てながら、ゴーストの前に立ちふさがる。


「ここで私は魔法カード《ワン・フォー・ワン》の効果を発動するわ、手札からモンスターを1体墓地へ送って、デッキから《オルターガイスト・メシュリーク》を攻撃表示で特殊召喚!そして《オルターガイスト・プライムバンシー》のモンスター効果でリリース、《オルターガイスト・シルキタス》を特殊召喚!ここで《オルターガイスト・メシュリーク》の効果でデッキから2体目の《オルターガイスト・シルキタス》を特殊召喚!さあ、まずは1体目の《オルターガイスト・メシュリーク》のモンスター効果で、2体目をバウンスするわ。ゴースト、あなたも《NO.95ギャラクシーアイズ・ダークマター・フォトン・ドラゴン》をバウンスしてもらおうかしら!」


一瞬の出来事だった。歪な亡霊はその呪詛でもって、一瞬で巨大なドラゴンをエクストラデッキに戻してしまう。


「さっきのお返しよ。2体でゴーストにダイレクトアタック!」

「あはは、結構やるじゃん、ゴーストガール!もっとあとに取っておきたかったんだけど、仕方ない。ボクは墓地の《超電磁タートル》を除外してバトルフェイズを終了させてもらうよ!」


すんでのところで異形の攻撃は止められてしまう。残念そうに彼女たちはゴーストを見つめている。だがゴーストガールはうれしそうだ。


「私はカードを2枚伏せてターンエンドするわ」

「また2枚か、こわいなあ」

「ぜんぜん怖そうじゃないわね、ゴースト。どっかの誰かさんみたいだわ」

「そう?リスペクトしてるところ結構あるからね」


どこかで眉を寄せる誰かがいることを知りながら、わざとらしく言葉を重ねる。2人のデュエルは加速してていった。


白熱したデュエルが繰り広げられている。互いが一番やりたいことを全力でやりながら、肝心のダメージソースである戦闘で決定的な一撃を浴びせることができず、実質膠着状態となって数ターンが経過した。そんな中、動いたのはゴーストガールだった。


「ここで私は罠発動《黒魔族復活の棺》!このカードは相手がモンスターの召喚、特殊召喚に成功したとき、そのモンスター1体と自分フィールドの魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる!そのモンスター2体を墓地へ送るわ。さあ、ゴースト。あなたの《裁きの竜》を墓地に送って頂戴」

「くっ」

「そして、私は自分の墓地、デッキから魔法使い族、闇属性モンスターを1体選んで特殊召喚することができるわ。こい、《混沌の黒魔術師》!!」

「なっ……《混沌の黒魔術師》だって!?あの!?」

「うふふ、いい反応くれてありがとう。そう、あの伝説の決闘王が使用した儀式モンスター《マジシャン・オブ・ブラックカオス》のリメイクカードにして、彼がつかったカードでもある。そう、あなたの愛用している《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》のようにね」

「おどろいたな……もしかして、君もあの大会に参加してたのかい、ゴーストガール」

「うふふ、さすがにそれはないわ。あの大会は海を隔てた向こう側の大会じゃない。いくら私でもそれは無理よ」

「でも、君はそのカードを持ってる。しかも《オルターガイスト》に組み込んで使いこなしてる。……想像以上だよ、君は。さすがはplaymakerがお墨付きを与えるだけはあるってことだね」

「まあね」


ゴーストガールがウインクを飛ばす中、ゴーストはエンドフェイズを宣言した。


「ここで《混沌の黒魔術師》の効果を発動、このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンのエンドフェイズに自分の墓地の魔法カードを1枚手札に加えるわ。私が加えるのは《魔法族の里》」

「やっかいなカードだなあ」

「できたらもっと早く欲しかったんだけどね。まあ、このターン、あなたは《戒めの龍》を使ったばかりだから、またたくさん魔法をドローできる。そう考えたら結果オーライってところかしらね」

「まさかのアシストしちゃったのか、うかつだったなあ」

「ふふ、油断しちゃうのも無理ないわよ」

「そりゃそうだよ、こんな超絶レアカード何処で手に入れたのさ」

「秘密よ、秘密。女は秘密が多い方が魅力的にみえるでしょう?」


そしてゴーストガールのターンがやってくる。


「私のターン、ドロー!さあ、発動するわよ、フィールド魔法《魔法族の里》!自分フィールド上にのみ魔法使い族モンスターが存在する場合、相手は魔法カードを発動できないわ。まあ、自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在しない場合、逆に魔法カードを発動できないけどね」

「これで魔法封じ……!」

「ここで《スキルドレイン》があればいうことなかったんだけどねえ」

「やめて欲しいなあ、ほんとに死んじゃうじゃないか」

「これでも安心できないんだけどね」


軽口もそこそこに、ゴーストガールは笑う。


そして、彼女の展開は加速していく。《オルターガイスト》たちを展開し、ふたたび《オルターガイスト・プライムバンシー》をリンク召喚。そして、攻撃を指示した。


「残念でした、負けてなんかあげないよ。ボクは墓地のカードを7枚除外して《妖精伝姫シラユキ》を特殊召喚、モンスター効果を発動するよ。《混沌の黒魔術師》は裏側守備表示にしてもらおうか」

「あら残念、でもダメージは受けてもらうわよ。私は《オルターガイスト・メリュシーク》のモンスター効果でダイレクトアタック!《妖精伝姫シラユキ》は墓地に行ってもらうわ。これで除去は完りょ……」

「でも墓地のカードはまだ7枚あるんだよねえ!さあ、もう1度戻っておいで、《妖精伝姫シラユキ》!これで《エクリプスワイバーン》の効果で除外していた《裁きの竜》を手札に加えるよ!」

「かわいいのに全然かわいくないわね、この子!」

「そう?かわいいでしょ、ボクの《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》の威力をあげてくれるんだ」

「おかげで何度やっても攻撃が通らないけどね」


残念そうにゴーストガールはエンドを宣言した。


「それじゃあ、そろそろ終わりにしようか、ゴーストガール。楽しかったけどね、ちょっとはしゃぎすぎちゃったみたいだ」

「あら、もう終わるの?私は全然終わらせる気はないんだけど」

「いや、これで終わりだよ。ボクは《裁きの竜》をフィールドに特殊召喚!さあ、モンスター効果を発動だ。フィールドを焼け野原にしてあげるよ!」


ゴーストにより召喚された真っ白なドラゴンが咆哮する。閃光が世界を満たしたとき、フィールドは一瞬で焼け野原となった。


「墓地からカードを7枚除外して《妖精伝姫シラユキ》を攻撃表示で特殊召喚!さあ、これで準備は整った!ボクは魔法カード《悪夢再び》の効果を発動!墓地に存在する《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》を2枚手札に回収するよ!」

「まさか、この布陣は」

「もちろんボクがやることはただひとつだけ!ボクは《裁きの竜》と《妖精伝姫シラユキ》を墓地に送って、《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》を攻撃表示で召喚!さあ、これで終わりだよ!《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》でダイレクトアタック!!」


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