風が吹いていた。強い風だ。リンクヴレインズの上空を絶えず青から紫、ピンク色と目が痛くなりそうな蛍光色を伴いながら吹きすさぶ。
光の濁流の中で取り残されたビルなどの建物はやがてその風圧に負けて亀裂が入り、大きな音を立てて崩れていく。そんな中、かろうじて原型を保っている建物があった。
いや、リンクヴレインズの風がその建物だけは避けるようにして流れていくのだ。高層ビルの最上階、フェンスの向こうは光の海が広がっている。
「なんで崩れてないんだろう、ここ」
和波はあたりを見渡す。
「おそらくSOLテクノロジー社の管轄エリアなんだろう、この建物自体が」
「そっか、ここからいろんなサービス展開してるから」
「たぶんな」
playmakerの言うとおり、この建物はこのエリアのちょうど中心部に位置するようだ。ここからなら確実に様々なサービスを展開できる。
なにがあっても存在し続けるように強固なプログラムがくまれている。もしかしたら、サイバー犯罪に巻き込まれそうになった人たちの避難所の側面もあるのかもしれない。
「うーん、おかしいなあ。お姉ちゃん、デュエルしてるみたいだったから、デュエル会場だと思ったのに」
和波は首をかしげる。どう見ても商業エリアである。おそらくここから風の下に飛び込めば、和波達でも知っている、一度はCMを見たことがある、そんな大企業ばかりがひしめき合うエリアのはずだ。
リンクヴレインズの風が強すぎて倒壊の危機に瀕しているとはいっても、データの世界である、所詮は演出にすぎない。あそこまで高いビルだと商業区ははるか後方にあり、あとはデザイナーあたりに委託したにすぎないだろう。
『確かに商業エリアだな、間違いねえぜ。なんだってこんなとこでデュエルしてんだ、姉ちゃんは』
playmakerと和波のデュエルディスクに現在地が表示される。
「和波、このあたりにいるのか?」
「はい、たぶん。そのはずなんだけどなあ」
和波はフェンスにつかまり、その先を見ようとする。
「あ」
白衣の女性がそこにいた。和波によく似ている。今にも消えそうなホログラムがそこにはあった。
今、和波とplaymakerは和波の姉のデュエルディスクに設定されている回線を使ってリンクヴレインズにログインしている。これはSOLテクノロジー社の管理職のみが利用できる、管理者権限が使える回線でもあった。
通常なら立ち入れない場所までいける。そして、和波たちは和波の姉の音声を拾うことができる。それはどこにいようと同じだった。
「私の声は聞き取れているかな?話はできるかい?」
はるか下方のエリアである。いました、と和波は指さす。遊作は降りる場所を探した。2人はあわてて階段を駆け下りる。風が強すぎてワイヤーで降りるのはあぶない。
「これはだめだな、話にならない。侵食もここまで来ると深刻だな……しかたない。データは取らせてもらうよ」
彼女はデュエルディスクを構えた。
「私は魔法カード《闇の誘惑》の効果を発動しよう。デッキからカードを2枚ドローし、手札の闇属性モンスターを1体除外させてもらう。私が墓地に送るのは《トワイライトロード・ソーサラー ライラ》だ」
彼女の頭上に表示された闇落ちの魔法使いは墓地に消える。
「さらに魔法カード《おろかな埋葬》の効果を発動だ。デッキからモンスター1体を墓地へ送る。私が墓地に送るのは《ライトロード・サモナー ルミナス》」
白の装束を身にまとった少年のカードが墓地に消える。
「私は《ライトロード・サモナー ルミナス》を攻撃表示で召喚、モンスター効果を発動だ。《Emトリック・クラウン》を墓地に送り、墓地にあるレベル4以下のライトロードモンスター1体を特殊召喚する。蘇れ、もう1体の《ライトロード・サモナー ルミナス》!攻撃表示で召喚だ」
まるで双子だった。召喚に応じて参じた少年は同じ光をまとってフィールドに降り立つ。
「そして、墓地にある《Emトリック・クラウン》のモンスター効果を発動、ライフポイントを1000支払い、フィールドに守備表示で特殊召喚!」
道化師の男がフィールドに参上する。
「さらに魔法カード《死者蘇生》の効果を発動、墓地から《妖精伝姫シラユキ》を攻撃表示で特殊召喚。コレで準備は整った」
彼女は笑う。
「レベル4《妖精伝姫シラユキ》とレベル4《Emトリック・クラウン》でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!さあこい、ランク4!《ライトロード・セイント ミネルバ》」
エクストラゾーンに可憐な少女が降り立ち、翼を広げる。
「エクシーズユニットを一つ取り除き、モンスター効果を発動だ。デッキトップからカードを3枚墓地に送り、その中にライトロードがあった場合デッキからカードを1枚ドローできる。私が送るのは《妖精伝姫シラユキ》」
彼女の頭上に表示される3枚のカード達。ライトロードカードは2枚落ちた。
「私は2枚ドロー」
いい手札が舞い込んだのか彼女は笑う。
「《ライトロード・アーチャー フェリス》はライトロードの効果でデッキから墓地に送られたとき、フィールドに特殊召喚できる。守備表示で特殊召喚だ」
猫耳の少女が弓を構える。
「ここで2体目の《ライトロード・サモナー ルミナス》のモンスター効果を発動、手札を1枚捨ててレベル4以下のライトロードモンスター1体をフィールドに特殊召喚する!舞い戻れ、《トワイライトロード・ソーサラー ライラ》」
黒のローブをまとった女性がフィールドで杖を振るう。
「そろそろ行こうか。アローヘッド確認、召喚条件はモンスター2体以上!私は《ライトロード・セイント ミネルバ》、《ライトロード・マジシャン ライラ》、《ライトロード・サモナー ルミナス》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン、リンク召喚!リンク3,《電影の騎士ガイア・セイバー》!!」
これでモンスターゾーンがあいた、と彼女は笑った。ついでにモンスターゾーンにエクストラデッキのモンスターを展開可能になる。
「レベル4《ライトロード・アーチャー フェリス》にレベル3《ライトロード・サモナー ルミナス》をチューニング!シンクロ召喚、レベル7!《月華竜 ブラック・ローズ》!」
美しいドラゴンが降臨した。
「ここで私は墓地にある光属性モンスター、闇属性モンスターを1体ずつ除外する。そして《暗黒竜 コラプサーベント》を攻撃表示で特殊召喚!」
あっというまにフィールドが整っていく。
「さあ、バトル!」
彼女の勝利を告げるブザーが鳴り響いた。
「……ありがとう、いいデータがとれたよ。ここのところ、リンクヴレインズ主要エリア全体のデジタルウェイブが非常に不安定になってるんだ、私たちの生活に支障を来すレベルじゃないから誤差の範囲として看破されてはいるけれどね。問題はその状態ではなく、なぜ異常が発生しているのか、その要因。君はその一端を担いでる。意図しない形でね」
彼女は倒れて動けない相手に近づいていくと、そのデュエルディスクから何かを抽出し、結晶化する。そしてデータを抜き出すとその残骸を砕いた。ぱらぱら、と流離が1と0のプリズムにとけていく。そして彼女は顔を上げた。
「ところで、さっきから私を見ているのはどこの誰だい?そんなに見つめられると照れちゃうなあ」
和波は僕だよと返そうとしたが、風があまりにも強すぎてかき消されてしまう。
「あら、ばれてた?」
「うん、ここは部外者以外立ち入り禁止のエリアだからね。特に君みたいな人は入ってきちゃ行けないところなんだ。誰からおしえてもらったのかな?」
「それは言えないわね、私の商売道具だから」
「それは残念。おかげで私の仕事がまた増えるわけだ。ほんとうにやめて欲しいな、全く」
誰かと会話する姉の声が聞こえてくる。誰だろう、とつぶやく和波の隣で遊作は目を見開いた。
「まさか、あいつか?」
「え?」
「ゴーストガール!一度戦ったことがあるぞ、こいつは複数の取引先を持つ情報屋だ」
「ゴーストガール?え、え、なんでそんな人が姉さんに?」
「ゴーストガールはSOLテクノロジー社にも依頼人がいるらしい。もしかしたら、グレイ・コードとも取引があるんじゃないか?」
「え、じゃ、あぶないんじゃ!?」
「いや、あいつは取引以上のことはしない。たぶんなにか目的があるんだ」
「!?」
和波達の動揺をよそに2人の会話は続いていく。
やがて、和波の姉は意味深な笑みを残して消えてしまう。
「お姉ちゃん!」
叫んだ声は届かない。
「おねえちゃん……」
寂しそうな声がとけていった。
葵が退院すると連絡があったのは昼休みのことである。さっそく和波たちはお見舞いに出かけた。
「もう大丈夫ですか、財前さん」
「うん、ありがとう、和波君」
「よかったな」
「ええ」
「葵から聞いてるよ、和波君いつもノートありがとう」
「財前さんは大事なデュエル部の仲間ですから」
「そうか」
「はい」
「……君は、いつかの」
「はい、藤木です」
「デュエル部だったんだな、気づかなくてすまない。また葵と仲良くしてやってくれ」
「はい」
「あの、財前さん。少しいいです?お話が」
「葵じゃなくて私か?ああ、構わないが」
「これのことでちょっと」
和波はデュエルディスクを指差す。合点がいったらしい財前は一緒に人目がつきにくいところに来てくれた。
「どうしたんだ、和波君」
「実は昨日、ネットにダイブしたら姉さんを見つけたんです。あと少しのところでどこかにいっちゃったんだけど、そのとき#ゴースト#ガールとなにか話してたみたいなんです」
「なに?#ゴースト#ガールとか?」
「はい、なにかご存知ないです?」
「いや、私は知らないな。彼女はプロだから知っているにしろ簡単には明かしてくれないだろう」
「やっぱりお金?」
「まあオーソドックスにいくならそうだな」
「僕そんなにお金だせないです…」
「下手に策を弄すよりはストレートに聞いたらいいんじゃないか?」
「え?」
「そしたら条件を提示してくるだろう。和波君がそれに足るものを用意すればいい。難しいようなら私にも一言くれれば考えるよ」
「ありがとうございます!」
これが連絡先だと財前はメールをさしだした。
そして数日後。
「ゴースト、お前に聞きたいことがある」
「うん?なんだい?」
「お前が和波誠也の姉の所有するカードを使った理由はなんだ」
「え?だってめずらしいじゃない。世界にたった6枚しかないカードだよ?」
「いつものお前なら見せびらかすはずだろ。なんで俺だけ」
「なんでってそりゃ、手札にきたから?」
「嘘だな。ネットに上がってる動画を検証したが、お前があのカードを使ったのは俺とのデュエルだけだった。後にも先にもあれだけだ。違うか」
「わー、わざわざ調べてくれたの?興味持ってくれるなんて嬉しいな」
「話を聞け」
「つれないなあ、今度は何?」
「お前が使ってる《ライトロード》と《トワイライトロード》の混成デッキに使われてる型番を調べさせてもらった。5年前、和波の姉が使ってたデッキと全く同じパックに収録されてたカードが使われてる。それも全部だ。どこから手に入れた?お前は和波の姉のデッキを使ってるんだ。再現したデッキじゃない、そのもののデータを使ってる」
「おおう、そこまで調べちゃったの?まいったな、そこまで熱心なファンが現れるとは思わなかったよ。でも和波君から聞かなかったかい?」
「デッキデータが盗まれたって話なら聞いた。でも違うだろ、お前のカードエフェクトは現物をスキャンしないとでない。それだけ親しいってことだ」
「ふむふむ、面白い推測だね」
「最初は和波かと思った。でもお前とデュエルしてるときもあったし、俺とお前がデュエルしてる時、和波は俺と違ってちゃんと授業に出てるし、草薙さんとバイトしてるときもあった。どう考えても不可能だ」
「たしかにそうだ。ボクは人間だしね」
「ああ。だから近しい人間だと思ってる。そして、気づいたんだ。お前がわざわざ親しい人間のデッキをわざわざ持ち出してデュエルをする理由はなんだろうってな。まるで和波の姉のことを思い出させるような行動だ。でも似せる気はないらしい」
「そうだね、男の時もあればおばあちゃんの時もあるし」
「お前はいつもアバターがちがう。それはまさかそのデッキ目当てなのか?」
「うん?話が飛んじゃったね、playmaker」
「飛んでなんかいない。ずっとお前がアバターを固定しないのは、正体がばれないようにするためだと思ってた。でも和波に聞いたんだ。グレイ・コードはデュエリストの魂ともいうべきデッキのデータさえあればあの世から蘇らせることだってできるらしいな。もしかして、お前の目的はそれか?アバターを固定化すればそのデッキは和波の姉ではなく、そのアバターのものになる。そうじゃなくてデッキのデータがほしいだけなんじゃないか。実験の精度を上げるために」
「何が言いたいの?」
「お前は和波の姉が植物状態なのを知ってる。それは現物をスキャンできるだけの環境にいるから明らかだ。デッキのデータがたくさん集まれば、本来の持ち主の蘇生だって簡単になる。やっちゃいけないことをお前はしようとしてるんじゃないか。それだけ親しい仲だったんじゃないか」
「お説教のつもりかい?」
「否定しないんだな」
「否定も何も事実だし」
「やっぱりそうか」
「うん」
「グレイ・コードのせいで和波の姉が植物状態になった。でも万が一が起こったら助けられるかもしれない方法も知ってしまった。だから、こんなことやってるんじゃないのか」
「まあ、和波君見てるとなかなか難しくはありそうなんだけどね」
「正気か、まだ和波の姉は死んでないぞ」
「時間の問題だよ、playmaker。彼女は体と心が離れた時間があまりにも長すぎる」
「…………お前。どうして、グレイ・コードを潰す方向じゃなくて、こんな回りくどいことしてるんだ」
「できるならとっくの昔にやってるよ」
「なに?」
「お前はグレイ・コードのことを知っているのか?」
「知ってたら?」
「だから俺に誘導かけるようなことしたんじゃないのか」
「誘導って?」
「お前がガンドラシリーズを使わなかったら、俺は何も知らないままだった。たぶん、グレイ・コードのウィルスに島が感染したことにだって気づけなかったはずだ。でもお前は教えてくれた」
「ずいぶんと好意的だね」
「お前が俺とデュエルするときはいつもAIじゃないだろ。それは俺がリンクセンスでAIと人間を区別できるからだってわかってるからだ。違うか。ほかの動画だとほとんどのお前はアバターをAIに操作させてる」
「へえ、動画でもわかっちゃうんだ?まあ、体はひとつしかないからね」
「どこまで知ってるんだ」
「どこまでって?」
「答えろ、ゴースト。お前は俺が自覚する前からリンクセンスに気づいてる。それは俺について何か知ってるからじゃないのか」
「今日の君は質問だらけだね、playmaker。一つ聞くけどさ、ボクが初めて会ったときなんていったか覚えてる?」
「覚えてるに決まってるだろ。忘れようがないからな。5年前から探してたって、お前」
「そうそう、開口一番ネタバレかましたのにずいぶんと時間かかったね。それでも思い出さないんだ?」
「なんのことだ」
「ボクはね、playmaker。君が驚く顔を見たいんだよ、だから思い出すなら早いうちによろしく」
「おい、それどういう」
「それくらい自分で考えなよ、考えることは人間の特権だよ?」
ゴーストは笑った。
「で?今回僕をお呼び立てしたのはなんでだい?」
「……お前が和波の姉と親しい人間だと仮定して頼みがある」
「一言もそうだとは言ってないのにすごいね」
「ゴーストガールがお前を指名してる。デュエルしてくれ」
「え、ボクがかい?」
「ああ」
「どういう風の吹き回し?」
「和波の姉についての情報をあいつが握ってる。でも俺たちはそんな大金もってないし、交渉材料になりそうなものは持ってない」
「だろうね、未成年」
「財前晃が仲介してくれたから連絡はとれたんだ。で、それならって条件を提示された」
「それがボクとのデュエル?」
「ああ」
「君の正体明かしたら?」
「ふざけるな」
「あはは、冗談だよ。気にいったデュエリストにはお近づきのしるしとしてパーソナル情報は抜き出させてもらってるけどさ。デュエルする以外では使ってないから安心して」
「なにひとつ安心できないけどな」
「まあそういわないで。そーだね、いいよ、ほかならぬ君からの頼みだ。うけてあげる」
「ほんとか」
「うん。ゴーストガールってあれでしょ、巷で噂のトレジャーハンター。結構いいデュエルしてたよね、君と。だから気になってたんだ」
「いいかげん勝手に人のデュエルログ見るのやめろ」
「あっはっは、やだね。ただし条件がある」
「なんだ」
「やだなあ、playmaker。ボクがお願いすることなんて一つでしょ?」
「…………それだけでいいのか」
「もちろん。ボクの行動基準はいつだってデュエルだよ」
「わかりやすくて助かる」
「あははっ」
「先攻は俺がもらう」
「いいよ。正面から叩きのめしてあげるから、準備してみたらどうだい?」
「いってくれる」
playmakerは手札をみた。
「俺は魔法カード《予想GUY》を発動!自分のフィールドにモンスターが存在しない場合、レベル4以下の通常モンスターを1体特殊召喚する!こい、《ビットロン》!守備表示で特殊召喚だ!」
playmakerのフィールドに小さなモンスターが召喚される。可愛らしい声を上げ、あたりを飛び回る。
「俺は《ドラコネット》を攻撃表示で召喚、モンスター効果を発動だ!このカードが召喚に成功したとき、レベル2以下の通常モンスターを守備表示で特殊召喚することができる!こい、《デジトロン》!」
《ビットロン》とよく形状の白いモンスター、そして電子の光をまとう小さな竜の子供が召喚された。
「現れろ、未来に導くサーキット!アローヘッド確認、召喚条件はサイバー族モンスター2体以上!俺は《デジトロン》《ビットロン》《ドラコネット》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン、リンク召喚!リンク3,《エンコード・トーカー》!」
白亜の鎧を身にまとい、自慢の盾を振りかざす戦士が召喚された。
「さらにフィールド上にサイバース族モンスターが存在する場合、俺は手札から《バックアップ・セクレタリー》を守備表示で特殊召喚!」
青い衣装を身にまとい、電子秘書は得意げに電子書籍を広げた。
「アローヘッド確認、召喚条件はモンスター2体以上!リンクモンスターはリンクの数だけリンクマーカーにセットするモンスターを代用することができる!俺はリンク3《エンコード・トーカー》と《バックアップ・セクレタリー》をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン、リンク召喚!リンク4、《ファイアウォール・ドラゴン》!!」
playmakerのエースが雄叫びを上げる。その勇姿を誇示するように白い翼が風を生む。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
ふふっとゴーストは笑う。
「ちょーっとばかし迂闊じゃないかなあ?《ファイアウォール・ドラゴン》の真価は相互リンクできないと発揮できないよね?」
「それがどうかはこれから見せてやる」
「ほんとに?興ざめさせないでよね。ボクのターン、ドロー!!」
ゴーストは口元をつり上げる。
「ボクは魔法カード《光の援軍》の効果を発動、デッキトップからカードを3枚墓地に送り、レベル4以下のライトロードモンスターを1枚手札に加えるよ。さらに《ソーラー・エクスチェンジ》の効果を発動!手札からライトロードモンスター1体を捨てて、デッキから2枚ドロー!そしてデッキトップからカードを2枚墓地に送るよ。さらに《強欲で貪欲な壺》の効果を発動、デッキトップからカードを10枚裏側で除外して、デッキからカードを2枚ドロー!」
すさまじい勢いでゴーストの墓地と手札が肥えていく。
「さあ、発動させてもらうよ、魔法カード《トレード・イン》!手札からレベル8モンスター1体を捨てて、、デッキからカードを2枚ドロー!ボクが墓地に送るのは《破壊竜ガンドラ》」
頭上に表示されたカードが墓地ゾーンに送られていく。
「まだまだいくよ。さらに2枚目の《光の援軍》を発動、もう1度デッキトップからカードを3枚墓地の送ってレベル4以下のライトロードモンスター1枚を手札に加えるよ。そして《闇の誘惑》を発動、デッキからカードを2枚ドローして、そのあと手札の闇属性モンスターを1体除外するよ。ボクが除外するのは《トワイライトロード・ソーサラー ライラ》」
ゴーストが掲げたカードが虚空に消える。
「さあ、おいで!ボクは《トワイライトロード・シャーマン ルミナス》を攻撃表示で召喚!」
ようやくゴーストはモンスターを召喚する。もはやデッキよりも手札や墓地の方が分厚くなっている状態だ。ここまでくればなんだってできるだろう。playmakerは警戒を強める。
「ここで発動、《手札抹殺》」
「なつ!?」
「お互いの手札をすべて捨てて、その枚数分だけドローだよ!」
「まさかデッキをすべてひく気か!?」
「もちろんそのつもりだよ、いったでしょ?全力で行くってね!!」
お互いにカードが墓地におくられ、補充される。
「モンスター効果を発動、1ターンに1度、自分の手札・墓地からライトロードモンスターを1体除外して、同名カード以外の除外されているライトロードモンスターをフィールドに特殊召喚!ボクが送るのは2枚目の《トワイライトロード・ソーサラー ライラ》!もちろん除外ゾーンにいる1枚目のこの子を特殊召喚!」
黒いローブをはためかせ、少女は次元の彼方から帰還する。
「ここで《闇の進軍》の効果を発動、墓地の《ライトロード》モンスター1体を手札に加えて、そのモンスターのレベル分デッキからカードを除外するよ。私が手札に加えるのは2枚目の《トワイライトロード・サモナー ルミナス》。この子のレベルは3、よって3枚除外」
ゴーストは笑う。
「ここでフィールドの《トワイライトロード・シャーマン ルミナス》のモンスター効果をチェーンして発動するよ。ライトロードモンスターの効果でデッキからカードを3枚墓地に送る」
playmakerは顔が引きつるのがわかる。
「《ライトロード・アーチャー フェリス》を守備表示で特殊召喚!ここで《悪夢再び》の効果を発動、自分の墓地の守備力0の闇属性モンスター2体を手札に加えるよ。ボクが加えるのはもちろん《破壊竜ガンドラ・ギガ・レイズ》2枚」
「やっぱりくるか」
「もちろん」
ゴーストが掲げるのはもちろん破壊竜だ。
「ボクは《トワイライトロード・シャーマン ルミナス》と《トワイライトロード・ソーサラー ライラ》をリリース!すべてを無に帰す破壊竜、新たな姿を得て生まれ変われ!《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》!!」
漆黒の翼を広げ、真っ赤な目に闘志を宿し、破壊竜は高らかに咆哮する。
「そうはいくか、罠発動《リコーデット・アライブ》!墓地のリンク3モンスターを除外し、コード・トーカーモンスターを特殊召喚することができる!もちろん召喚先は《ファイアウォール・ドラゴン》のリンク先である下だ!ここで《ファイアウォール・ドラゴン》のモンスター効果を発動、《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》を手札に戻せ!エマージェンシースケープ!!」
《ファイアウォール・ドラゴン》の羽ばたきにより発生した暴風が破壊竜の降臨を許さない。魔方陣はあっという間にかき消されてしまった。
「まだまだ終わらないよ、ボクはカードを7枚除外して《妖精伝姫シラユキ》をフィールドに特殊召喚!そしてレベル4《ライトロード・アーチャー フェリス》とレベル4《妖精伝姫シラユキ》でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚、ランク4!《ライトロード・セイント ミネルバ》!!エクストラゾーンに攻撃表示で特殊召喚するよ!」
彼女は杖を振るう。
「エクシーズユニットを1つ取り除いてモンスター効果を発動、デッキトップからカードを3枚墓地に送ってその分カードをドローできる!もちろん送るのは《妖精伝姫シラユキ》!ボクは2枚ドロー!まだまだこれくらいじゃ止まらないよ。もう一度カードを7枚除外して《妖精伝姫シラユキ》を攻撃表示で特殊召喚!手札のモンスターと除外して《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》を特殊召喚!!モンスター効果を発動!ボクの墓地に眠るガンドラたちは3種類!だからお互いのフィールド・墓地のカードをすべて除外するよ!」
「ぐっ」
「さあ、バトルだ、playmaker!ボクは《破壊竜ガンドラ・ギガレイズ》で《ファイアウォール・ドラゴン》を攻撃するよ!いっけえ、デストロイギガレイズ!!」