第3話(修正済み)
ターゲットの行動を数日間注意深くうかがっていた遊作は、それすら馬鹿らしくなるくらい、警戒など必要のない相手だと気がついた。和波はデュエルディスクを置きっぱなしにしていることが結構ある。気づいた遊作の行動は早かった。放置したまま前の席にいる友達とのおしゃべりに興じている和波は、こっちに気づきもしない。


まばらになり始めた放課後で、ようやく片付けをはじめた遊作をみても、ただの不真面目な生徒のワンシーンだとしか思わず素通りする。盗難がよく起こる学校なら警戒心も違っただろうが、ここはわりと素行がいい生徒が多く在学していることで知られる高校だ。おそらく個人情報を抜き取るような人間が身近にいるとは思いもしないに違いない。


純粋に相手が悪かったのだ。相手はSOLテクノロジー社やハノイの騎士をもってしても、個人の特定が不可能なほどの技術力を持った一流のハッカー、Playmakerその人である。


遊作からすれば、和波はきちんとしている方に見えた。最新のデュエルディスクのセキュリティはちゃんとアップデートし、推奨されるアクセス制限もきちんとかけている。定期的にパスワードを変えている痕跡もある。ファイル共有ソフトを使用している形跡もない。もちろんメモを外に貼り付けてもいない。個人情報流出といった事例にきちんと対処できている。まあ、デュエルデュエルディスクを貸してくれたクラスメイトが、IDカードの情報を丸ごと抜き出す、詐欺によく使われるプログラムを自作して、仕込んでいるなんて誰も思わないだろう。


和波は以前言っていた通り、SOLテクノロジー社が提供している最新のデュエルディスクをつかっているようだ。遊作のデュエルディスクにIDカードをスキャンしたとき、仕込んでいた読み取り端末が個人情報といったデータをしれっと盗み取っていた。それをパソコンですいだし、自作した偽のIDカードをスキャンし、特定していたパスワードを入力するとデュエルディスク内のデータを閲覧することができた。特定の操作を行うことでその更新情報をこちらにリアルタイムで同期するように設定を勝手に切り替える。カードをポケットにしまい、遊作は下校の準備に入る。


そして、いつものホットドック屋に直行した。営業終了を終えるのを待ち、片付けている草薙の後ろでパソコンを叩く。


「時々息を吐くようにとんでもねーことするよね、お前」

「必要経費だ、問題ないさ」

「どんだけ悔しかったんだよ、Playmakerサマ」

「なんだって?」

「ナンデモナイデース」


口笛を吹き始めたイグニスをひとにらみしてから、遊作は展開したデータをざっと確認する。


「童実野町出身の16歳、こっちに来たのは2年前か」

「おー、見事なもんだな、さすが。これがお前のいうゴーストの身内かもしれないクラスメイトか、遊作?」

「ああ。どこか気になるとこないか?草薙さん」

「んー、そうだな。和波の姉さんがSOLテクノロジー社に転職したのは2年前。両親は童実野町に在住か。まあこっちに行きたいって進学を名目に姉さん頼ってくる。うん、なにも不思議じゃないな。みたところ、10は離れてるんだろ?しかも姉さんは成人してる。保護者代理でも問題ない」

「しかも天下のSOLテクノロジー社の研究者ときた。そりゃ誰だって太鼓判押すぜー」


好き勝手いいながら、データを閲覧する。


和波のデュエルディスクにセットされたデッキ履歴は、やはりというか、《代行者》ばかりだ。天使族で統一されたテーマカテゴリであり、1枚を除きすべて光属性という共通項をかかえているため《代行天使》ともよばれるビートダウンデッキである。昨日の島とのデュエルは《天空の聖域》を軸とした《代行者》デッキだったようだ。他にも《シンクロ召喚》を軸においたデッキのデータがある。エクストラゾーンは充実している。彼は現物をスキャンする遊作のような嗜好の持ち主のようだから、これらはすべて自前のカードをスキャンしたということだ。両親の仕事を考えてもなかなかの裕福層なのだろう。姉のカードをスキャンしていないか確認してみたが、彼がよくアクセスするカード履歴に《トワイライトロード》や《ガンドラ》シリーズを見つけることはできなかった。


「他には《星杯》くらいか」


たしか《バニラ》の下級モンスターと、フィールドから墓地に送られた場合に手札から《星杯》モンスター1体を特殊召喚する共通効果をもつ上級モンスターで構成されたテーマだったはずだ。フレイバー・テキストからわかる通り、ファンタジー要素が強いストーリー進行に則った多種多様な種族、属性をもつ。


「《代行星杯》?変わった組み合わせだな」


遊作が気になったのは、バニラテーマとシンクロを得意とするテーマの歪な構築だ。カードの画像を見る。シナジーがまるでない。これはファンデッキだろうか。


「ちょっとまちな」

「お、何か見つけたのか?」

「ああ、見つけちゃったぜ。さすがに素通りは我慢ならないからいうけど、そこに今から言うプログラムをぶち込んでみてくれ」


突然特定のプログラムをダウンロードしろ、といってきたイグニスに面食らいつつ、二人はそのプログラムをかき集める。それは一般的に体に障害をもつ人向けに開発された医療向けのプログラムだ。五感を通さずに直接脳と機械をつなげ、自由に体を使うことができる技術として広く世界に知られている。体の一部に機械を埋め込むのか、それとも機械に脳波を記憶させて行うのか差はあるけれど、和波とはどうしても結びつかない。


そもそもリンクヴレインズをはじめとした、SOLテクノロジー社が提供するサービスは、どれも体ごと電子に置き換えてネット上にフルダイブすることが前提なのだ。そしてそのデータをアバターに投影することで人々は現実と同じようにネット上の世界を楽しむことができる。


この医療プログラムは一世代前のものだ。ポットに入り、五感を繋ぎ、まるでそこにいるかのような臨場感は味わえるが、フルダイブよりはるかに劣る。脳波で操作するからそこまで古くさくはないが。たしかに安全面ではこちらの方がずっと安全だが、このプログラムを使ってこのデュエルディスクを使用する理由がまるで見つけられない。こちらにとどまりネット用アバターを動かす旧式のゲームと同じではないか。


なぜ最新のデュエルディスクを使いながらそんなことをするのかわからないが、遊作はイグニスの指示通り設定を組む。デフォルトのマネキンがデュエルディスクを構える。そして、その状態でデッキデータを閲覧する。


「これは!?」

「こりゃ驚いたな、すごいじゃないか」


そこに遊作の知るバニラテーマの《星杯》はない。そこにあるのは《リンクモンスター》で埋め尽くされた《星杯》デッキである。


「へへ、まーな」


イグニスは得意げだ。


「どこか懐かしい感じがしたんだよ、なんか」

「懐かしい?」

「ああ」


遊作は注意深くその《星杯》デッキを閲覧する。


「・・・・・・ちょっと待て、この《星杯》デッキなら、《代行者》と組み合わせる意味合いが違ってくる!」

「なんだこれ、文字化けか?」

「いや、違う。これは・・・・・・?」

「おー、ずいぶんと手の込んだことしてあるじゃん。これ、あれだよ。お前が俺にしたやつ」

「変換か!」

「草薙さん、わかるか?」

「んー、駄目だな。どこをどうしたら、こんなの組めるんだ?全然わかんねえぞ」

「・・・・・・だめだ、わからない。これは後回しにして・・・・・・ちょっと待て、なんだこれ」


さすがに遊作は愕然とする。


それはデュエルディスクで自由に設定することができるカスタマイズ要素の項目である。フィールドであったり、デュエル中の様々なエフェクトであったり、AIの設定であったりするのだが、そこには決して見過ごせない項目が付け足されているのだ。


「おっとお、なーんでスピードデュエルのルールがあるんだ?フィールドもスキルもあるじゃねーか、なんだこれ」


さすがにイグニスの茶々を入れる言葉がちょっと真面目になる。現状、サイバース世界の風に乗って行うスピードデュエルは、イグニスがデータマテリアルを解放しなければまず行うこと自体不可能なのである。


Playmakerの行う噂のスピードデュエル自体は熱心な野次馬がそのルールなどを検証し、ネット上でどうにか再現できないかあがいている様子をみることはある。フリープログラムとして公開しようとする動きもあるので注視しているところではあるが、これはその規模を越えている。ここまで再現率が高いものは初めて見た。


いや、イグニスにいわせれば、風が吹かないスピードデュエルそのものだそうだ。さながらスタンディングデュエル用に設定を変更した、と言った方がいいだろう。


「しかも見てくれ、これ。スキルをマスタールールでも使用できるようになってるぞ。オンオフ機能がついてる」

「ゴーストの身内かと思ったら、とんでもねーのがつれたぞ、遊作。とんだかくれんぼの名人だな。どうする」

「そんなの、やることは一つだ」

「《サイバース族》持ってるだけで狩られるんだ、偽造だってするだろーよ」

「うれしそうだな」

「まあな!」


5年も帰ることができない故郷の同族とまさかの邂逅フラグである。イグニスはうれしそうだ。


遊作はデッキを見つめる。《星杯》デッキには、たった1枚だけ、《サイバース族》のモンスターがいるのだ。しかも、そいつは《リンクモンスター》である。所持しているだけでハノイの騎士に弾圧されかねないデッキなど現状をよく知る遊作からすれば、なにがなんでも話を聞かなければならない。ゴーストの身内が《サイバース》やハノイの騎士と関係あるかもしれないのだ。数年前、こちらに引っ越してきた理由がかわるかもしれないのである。


遊作はどうしようか思考を巡らせた。











「こいつが見えるか?」


デュエルモンスターズのカードに浮遊する精神体に、こくりとうなずいたその瞬間がすべてのはじまりだった。


帰りたい、帰りたい、もういやだ、帰して、おうちに帰して、お姉ちゃん、お父さん、お母さん、だれか助けて。


どこかの施設で泣いている少年がいる。ナンバープレートをかけた少年は、病院で支給される薄手の服に似たものを着せられている。デュエルディスクを体に固定され、課せられたノルマをこなさなければ衣食住はおろか、生命の保証までされない地獄の環境で、少年は明日の見えない日々を送っていた。


家族で遊びに行った遊園地で誘拐された少年は、わけのわからないままここに連れてこられ、そして何かの実験を繰り返しさせられていた。少年のような子供は何人もいたが、みんなここにきて長期に及ぶとあきらめの境地に達してしまうのか、生気のない目をしたまま淡々と仕事をこなしている。手を差し伸べる人間は誰もいない。研究対象を冷徹に見つめる白衣姿の男たちしかそこにはいなかった。


だが、その日だけはなにかが違った。少年は白衣の男たちに連れられて、どこかのデュエルモンスターズの大会に参加するよう命じられ、わけのわからないまま予選突破に必要なアイテムを収集するためにデュエルをするよう言いつけられた。逃げ出したくても固定されたデュエルディスクが探知になってしまう。少年は男たちに従うしかなかった。


「おい、てめえ」


少年はデュエルを挑まれて負けた。だが男はアイテムを取らないどころか、よこしてきた。つまんねえ余興にしてはおもしれえもんが紛れ込んでるじゃねーかと嬉しそうに言われた。きっと男にとって少年は路傍の石と変わらない存在だったはずだが、声をかけられた。その理由を少年は今なお知らない。男とのデュエルはあの施設で頻繁に行われていた実験と寸分たがわぬものだった。ぐったりと地面に転がっている少年の腹を蹴飛ばし、男は再び呼びかける。げほ、こほ、と激しくせき込みながら、少年はうっすらを目を開けた。逆光がまぶしく、意識はぼんやりとしており、少年は男がどんな顔をしているのかわからない。


「勝ちたいか?」


それは悪魔のささやきだった。でも、それに少年はうなずいてしまった。ほぼ無意識だった。誰にも負けない力がほしい。あの研究所の誰にも。男は、ひざを折り、少年の頭をつかむ。途端に意識が吹っ飛びそうになるほどの頭痛が襲った。あまりの痛みに頭をかち割りたい衝動にかられるが、男がそれを許さない。その痛みをそっくり飲み込んでしまうまで、続いた。そして、手を放し、ぐったりと倒れこみそうになる少年をつかむ。


「まだ寝るんじゃねえよ、これからだろうが」


胸ぐらをつかみ、男はいう。


「ガキ、お前が望んだんだぜ、この闇の力をよぉ。喜べ、てめえは今日から呪われた身だ」


少年に芽吹いた力を目にした男は、何を思ったのか高笑いする。


「俺様が奪ったあの力に目覚めちまうとは、なんつー偶然だ!この俺様がこんなガキにちょっかいかけた結果、芽生えちまうのがあのマインドスキャンだとはなあ!」

「まいんどすきゃん?」

「今の俺様は機嫌がいいからなあ、特別に教えてやるよ」


男は首元に下げられた黄金色のアクセサリをひっつかみ、少年に突きつける。


それは邪悪な存在が自ら闇から解放されるために、ある人間を唆して書かせた書物の話だった。3100年前の古代エジプトにて、その書物に記された魔術の法を解いた者は神と魔物を操り、あらゆる軍勢をひれ伏させる力を得ることができる。99人の生贄を捧げ、4人の魔術師が魔術的儀式を行うことで非金属を金属に変化させ、神秘の力を持つ千年宝物を作りだすというものである。男の故郷はその生贄として邪神にささげられ、千年宝物は完成した。その神秘的な力を持つが、所有者を試し、値しないと判断する場合は魂を焼かれる千年宝物。男はすべてを手中に収め、かつて支配下に置いて王国に復讐すると共に財を手に入れようとしたが、逆に邪悪な存在に洗脳され、闇の神官として手駒にされたあげく、魂が融合し取り込まれてしまったという。冥界の石板に7つの千年宝物を収め、邪悪な存在を復活させて今度こそその力を我が物にし、融合してしまった魂を解放するために動いていたはずの男は負けた。邪悪な存在は打ち砕かれ、融合していた男の魂は完全に消滅した、はずだった。少年は到底知りえるはずのない大事件が現在進行形で起こっており、その余波で一時的に復活したのだという男は、余興だとばかりにささやく。


もはや邪神を封印する役目を失い、エジプトの地中深くに屠られた千年アイテム。そのうちの1つ千年眼というものがあった。本来、所持者の試練として片目を潰さなければ得ることができないはずの力に、たった今少年は目覚めたという。デュエルモンスターズにおいて、手札、戦術、思考を把握するだけでなく、デッキ構築といった無意識のイメージまでくみ取り、デッキ構成までわかるという恐るべき能力だという。


「もっとも、今のてめぇは人の心を読む、なんてちゃちな能力しか目覚めてねえみたいだがな。いずれはそこまで開花しちまうだろうさ」


少年は愕然とする。男がなに一つ嘘をついていないことがわかってしまったからだ。理解してしまったからだ。それはもう、疑いようがないほどにまで。


「勝ちたい、といったのはてめえだぜ?」


男は高笑いして去っていった。せいぜい足掻け、あの世から見守っていてやるよ、と。もしかしたら、死神だったのかもしれない。


そして、予選を突破した少年を待っていたのは、ハノイの騎士と名乗るクラッカー集団だった。デュエルディスクをハッキングされ、ソリッドビジョンを改変され、デュエルで勝たなければ出られない会場と化したその場所で。ただのバニラデッキを持っていた少年は、今度こそ終わりを覚悟した。そしたら、今まで聞いたこともない声を聴いた。


『おーっとぉ、たった今この俺と目があっただろ、そこのガキ!!』


ぎょっとしてあたりを見渡すがどこにもいない。ここだここという声の先には、デュエルディスクの画面。そっちを見ると、デュエルモンスターズの精霊というには、だいぶん雰囲気が違う精神体がいた。


「み、みえますけど、なん・・・・・・?」

『いやー、サイバースの風を辿ってったら、まさか現実世界に出られるとは思わなかったぜ!さすがは俺様運がいい!ついでに利用できそうなガキが目の前にいるしよ、いひひ』

「な、なんなんですか、きみ、」

『このままだと俺様消えちまうんだよ、だからさー、そのサイコデュエリストとしての才能、ちょっとかしてくれね?』

「えっ」

『俺様の見立てだとアンタ、このままじゃ何もできずに負けちまうぜ?それに俺も本体失っちまってるから、依り代と存続に必要なエネルギーは本体さんが供給止めちまったからどっかで調達する必要があんのよ。どーだ、悪くねえ話だろー?俺様と組もうぜ、クソガキ。あいつらに仕返し、したくねーか?家族に会いたくねーか?』


少年はしばらくの迷いののち、うなずいた。この精神体は自我を持つAIが破損したときに、バックアップとして存在していたかつての残骸のかけらであり、本体というメインプログラムを探していること。そして彼はサイバースという世界を守るためにハノイの騎士相手に立ち向かった存在であること、イグニスという種族であること、そういった情報がリアルタイムで流れ込んできたのだ。ついでにSOLテクノロジー社はサイバース世界からあらゆるものを搾取する存在であるため、助けを求める気がみじんもないことを知った。もともと感受性が高かった少年は、自分の境遇も相まって同情した。利用できそう、が口の悪い彼の協力してくれそう、という意味だということもわかってしまった。


『そーそー、クソガキ、てめーは俺様のいうこと聞いて、にこにこしてりゃいいんだよ。裏切らねえ限り、俺様はてめーの味方だ』

「クソガキ、じゃないです。僕は和波、和波誠也って名前があります」

『へ、いい名前じゃねーか、クソガキにはもったいねーくらいだぜ。それをナンバーで呼ぶとか頭腐ってんじゃねーのか、あの下種ども』


よく忘れなかったな、自分の名前をよ、と笑った精神体に、少年は泣きそうになる。


『おーっと、まだ泣くんじゃねーぞ、クソガキ。てめーが泣くのは家族に会ってからだ』

「はい」

『てめーのデッキデータちょいとばかし、拝借するぜ!そんでてめーのそのサイコデュエリストとしての力と俺様の頭脳をもってすればっと!よっしゃ、完成だ!今日から俺様はてめーのエースだぜ、誠也!ぜってえ、負けんじゃねーぞ!』


バックアップ用にプログラムされていたデバック空間からデータマテリアルを限定解除し、和波の持っていたデッキのデータを解析、分解、再構築を行い、サイバースの力を付与する。ここにリンク召喚を主軸とする世界でただひとつのテーマである《星杯》デッキは誕生した。


『なーんでただのデュエルモンスターズの大会でスタンディングデュエル形式のスピードデュエルが行われてるのかはしらねーが、本家本元のデュエルってやつを見せてやるよ!さあ、いこうぜ、誠也!』

「はい!」


ハノイの騎士を退けることができたあと、その大会の中学生以上の部門で初優勝した姉と奇跡的な再会をすることができた和波は、数年ぶりに家族のところに帰ることができたのだった。






それから5年の歳月が流れている。AIプログラムから精霊という存在に書き換えられた存在は、電子の海を自在に泳ぐ精神体、通称電霊という形で和波のデュエルディスクのAIを務め続けていた。


『さすがは本体様だぜ、俺様の存在に気づきやがった』

「え、ほんとですか?」

『おうよ、どーだ大成功だろ、決死のノーガード戦法!あとはてめーがその実力をplaymaker様に認められるように精々がんばるこったな』

「はい、がんばります!playmakerがスキルのオンオフの選択肢自体認めないというのなら、僕はマインドスキャンを解禁した状態でデュエルするだけです。ろくに自分を制御できないサイコデュエリストが生身の状態でリンクヴレインズにダイブしたらどうなるか、目撃してもらうのが一番てっとり早いですからね!」


デュエルディスクに送られてきた差出人不明のデータを開く。和波は生まれて初めて、リンクヴレインズに正式な形でログインしたのだった。


prev next

bkm






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -