Effects that Target a Card
「さあ、いよいよ効果に関する講義もフィニッシュが近付いてきましたね。どんな難関が待ち受けていようとも、自分を信じてこのまま突っ走ってしまいましょう。今回は【このカードは効果の対象にできない】や【このカードを対象とする効果を無効にする】といったデュエルモンスターズ特有のテキストについてと、その違いについてお話しましょう」

「いわゆる対象をとる、対象をとらないってやつね」

「対象をとる?とらない?どういう意味ですか?榊先輩の講義にそんな言葉でてきましたっけ?」

「なるほど、主語がないからわかりにくいのですね。それではこれはどうでしょう?Mr.比嘉が魔法や罠、モンスターの効果を発動する時、相手のモンスターはその効果の対象になるか、ならないか、と考えればいかがでしょうか?」

「あ、そういうことですか。わかりました」

「デュエリストの間だと当たり前の言い回しだからなあ。昴君にはちょっとわかりにくいかもしれないな。主語が抜けてるから難しいイメージを持ってしまうかもしれないが、全然そんなことはないぞ。ちょっと一人歩きしてる部分もあるから、そんな身構えないでやってくれ」

「えっ、お父さんがそれをいうの?統一されてないテキストの時代にデュエルやってたお父さんが!?」

「それはいわないお約束だぞ、柚子。あれは限られたテキスト内に、いくつもある効果をたった2,3行でまとめようとするから、さらにややこしくなってたんだ。今でも十分ややこしいが、あの時代に比べればずっとましだ。ましなはずなんだ。なんせ今のテキストに落ち着くまで、何回もテキストが変わってるからな、あっはっは」

「どうしましょう、榊先輩。塾長が死んだ魚の目で笑ってます」

「あとでトリシューラの新・旧テキストを見せてもらったらいかがでしょう?きっとその意味がわかりますよ」

「……どのみちややこしいんですね。僕でもデュエル始められるかなあ」

「好きこそものの上手なれと言いますし、大丈夫ですよ。慣れてしまえばどうということはありません。デュエルは実践あるのみです。さいわいMr.比嘉がはじめる第九期のデュエルモンスターズでは、テキストの統一化が進んでいますからね。ジャッジさえwikiだよりでデュエルの審判をしていた時代と比べたら、デュエルディスクもありますから、だいぶんデュエリストの負担は軽減されていますよ」

「僕、今の時代に生まれてよかったって思います」

「ええ、わたくしも同感ですよ」


さて、話に戻りましょうか、と遊矢は笑った。


「基本的な考え方として、デュエルモンスターズでカードの効果の対象になるか、ならないかを決めるのは、【カードの効果を発動する時に、対象になるカードを選ぶか、選ばないか】が基準となります。専門的な用語では、【カードの効果を発動する時に、対象になるカードを選ぶもの】を【対象をとる】。【カードの効果を発動する時に、対象になるカードを選ばないもの】と【対象をとらない】、といいます。いちいちカードの効果を発動する時に、対象になるカードを選ぶ効果と呼ぶのは面倒ですからね」

「あー……なるほど、たしかにメンドクサイですね」

「クアラルンプールみたいなものですね」

「メチャクチャ長いんでしたっけ、ほんとの名前。そっか、やっとわかりました」

「それはよかったです。【対象をとる】と【対象をとらない】カードの違いは、具体的にいいますと、サイクロンと大嵐があげられますね」


遊矢は比嘉の前にサイクロンと大嵐を並べた。


「サイクロンは魔法罠ゾーン、フィールドゾーンに存在するカードを1枚【選んで】破壊します。このようなカードは、魔法、もしくは罠を1枚対象にするカードといえます。一方で、こちらの大嵐は1枚だけではなく、フィールド上にあるすべての魔法罠カードを破壊しますので、カードを【選ばない】ですね。つまり対象をとらないカードというわけです」

「えっと、対象になるカードを選ぶか、選ばないかだから……あ、そっか。1枚破壊するなら対象をとるけど、たくさん破壊するなら対象はとらないってことですか?」

「そう思いますよね、普通は。ええ、わたくしもデュエルモンスターズを始めたばかりのころはそう勘違いしていました。非常に残念ながら、それが初心者のデュエリストがテキストを見て判断するときに、一番間違えやすい考え方なのです。Mr.比嘉」

「えっ、ちがうんですか?」

「ええ、ちがうのですよ。ではためしにこのカードを読んでいただけますか?」

「はい。えっと、地砕きですね。相手フィールドの守備力が一番高いモンスター1体を破壊する通常魔法です」

「このカードは対象をとる?とらない?どちらだと思いますか?」

「えーっと、普通に考えたら対象に取るですよね?守備力が一番高いモンスターを選んで、1体を破壊するって書いてあるし」

「そう思いますよね?」

「……もしかして、違うんですか?」

「ええ、そのまさかです。地砕きの効果は対象をとらない効果なのです」

「えっ、なんでですか?」

「それはなぜなのか、それはまさしく【効果を発動するときに選ぶかどうか】の違いによるものなのです。地砕きの効果を発動する時、相手のどのモンスターを破壊するのか決定するのはプレイヤーではないのです」

「えっ、誰が決めるんですか?」

「地砕きのカードが勝手に決めるんですよ」

「えっ!?」

「【対象をとらない】効果だと、プレイヤーがカードの効果を発動しただけで相手フィールド上にいる最も守備力の高いモンスターが勝手に破壊されます。ですからプレイヤーはどのカードを破壊するか選べないのですよ。ですが、確実に1体はフィールドのモンスターを破壊できます。ちなみに【対象をとる】効果だとプレイヤーはきちんとカードの名前とその場所を指示し、効果を発動して破壊すると宣言しなければなりません。そして、初めてモンスターが破壊されるのです。ですから、プレイヤーは的確に破壊したいモンスターが選べます。ただし、デメリットもあります。【対象になる効果を無効にする】モンスターがいるのですが、これは【効果の対象を選んで発動する効果】=【対象をとる効果】をすべて無効にするので、そのモンスターは【そもそも効果の対象にできないので破壊できない】のです」

「ごめんなさい、榊先輩。ぜんぜんわからないです」

「それでは、少し見方を変えてみましょうか」

そういって遊矢はホワイトボードのマーカーを手に取った。

              効果を発動する      結果
@対象をとらない         →         破壊

A対象をとる   →      宣言    →    破壊

「他のモンスターに対象を移すことができるか、を基準に考えてみましょう。地砕きは対象をとらない効果だと言いましたね、勝手に相手フィールド上の守備力が一番高いモンスターを1体破壊すると。それでは、相手が地砕きを発動、Mr.比嘉は1体しかいないモンスターはどうしても守りたい、でも伏せカードがリビングデットの呼び声だけ。Mr.比嘉ならどうします?」

「え?えーっと、そうですね。地砕きにチェーンして、リビングデットの呼び声でもっと守備力が高いモンスターを特殊召喚します。チェーンを処理すると、リビングデットで守備力がもっと高いモンスターが特殊召喚された後に、地砕きが発動するので、そっちが破壊されますよね。初めに破壊する対象になってたのが逸れます」

「なるほど、いい考えですね。それでは、そのモンスターで相手にダイレクトアタックを宣言した時に、相手が聖なるバリアー ミラーフォースを発動しました。相手のフィールドには攻撃表示のモンスターが1体あります。あなたの手札にはエネミーコントローラーがあります。どうしますか?」


遊矢はエネミーコントローラーを比嘉に見せた。手札を捨てて相手の表示形式を変更する効果と、自分のモンスターをリリースして相手のモンスターを奪う効果がある。


「そのままだと次のターンでやられそうなので、チェーンしてエネミーコントローラーを発動します。僕のモンスターをリリースして、相手のモンスターを奪います。僕のモンスターは墓地に行って、代わりに相手のモンスターが僕のフィールドにある状態でミラーフォースが発動するので、相手のモンスターも破壊されます」

「すばらしい!初めのころと比べると、だいぶんチェーンについて分かってきましたね。このように対象をとらない効果に対しては、プレイング次第では、カードの効果を別のモンスターに移すことができるのです。しかし、対象をとる効果ではそれができません。たとえば次元幽閉があげられます。一応、月の書で裏側守備表示にしたり、強制脱出装置でバウンスしたりすれば回避はできますけどね」

「ってことは、対象をとる効果は、その対象になったカードがフィールドからなくなると失敗するんですか?」

「ええ、対象になるはずのカードが存在しないので、効果を発動すること自体ができなくなります。しかも、宣言した時点で撤回はもちろん、別のカードを指定し直すこともできません。ですから対象をとる効果については、相手は何に対して効果を発動するかわかったあとで、チェーンを積むタイミングがあるわけです。チャンスですね。一方で、対象をとらない効果は宣言が必要ありませんから、チェーンや効果の処理のあとデッキやフィールドを見て効果が発動します。どちらも一長一短ですね」

「そっか。一度そのテキストを見て、他のモンスターに移せるかを考えてみます」

「そうですね。対象をとる、取らないの見分け方は人それぞれですから、Mr.比嘉が見分けがつきやすいと思う方法でいいと思いますよ。ゴッドバードアタックとバルバロスのように、テキストでわかりやすいものもありますが。どちらもいくつものカードを破壊するカードですが、ゴッドバードアタックは2枚のカードを指定して、破壊するとプレイヤーが宣言して初めて破壊できます。しかし、バルバロスの効果を発動すると、フィールドのカードを勝手にすべて破壊します。とりあえず、効果を発動するときに、カードの枚数は関係ないと覚えていただければと思います」

「そういえば、新しいテキストは統一されてるんですよね?【対象をとる】と【対象をとらない】のテキストはどんな感じなんですか?」

「【〜を対象として発動】と書いてあれば、その効果は【対象をとる】、残りは【対象をとらない】というわけです。ただスタンディングデュエルは、アクションデュエルと違って、旧テキストのカードも使用が認められているので、テキストに頼らない覚え方はあるにこしたことはありません。時代によっては【選ぶ】が【対象をとらない】、【選択する】が【対象をとる】だったこともあると聞きますし。そもそもこの記述があっても対象をとる効果の時もありますし、一方は対象をとるけどもう一方はとらないなんてこともよくあります。ですが、簡単な見分け方としては有効ですね」

「えっ、そうなんですか?じゃあどうしたらいいんでしょう?」

「一番楽なのはパターンを覚えてしまうことでしょうか。デュエルモンスターズのテキストはたしかに自由度が高いです。しかし、ある程度法則性がありますから、重要なカードだけ覚えてしまえばいいわけです。英語でも必要とされる英単語や熟語を覚えてしまえば長文問題でも案外何とかなるでしょう?それと似たようなものですよ」

「それ、いつも私が遊矢にいってることじゃない」

「ほんとに英語の勉強に役立ってたら、説得力あるんだけどなあ」

「あ、あはは」

「えー、ごほん。英語は必須単語や熟語は3000ほどありますから、丸暗記は大変です。でもそれと比べたらデュエルモンスターズの重要なカードの効果をを丸暗記するのは難しくありませんよ。まずは【〜を対象として発動】のテキストを捜してみましょう。これだけでかなり多くの効果を【対象をとるか】【対象をとらないか】判断できます。そして、デュエルモンスターズで使用頻度が高いカードはある程度決まっていますので、覚えてしまいましょう。せいぜい30程度ですからね」

「たしかに英語より楽ですね!」

「でしょう?」

「こらこら、遊矢」

「遊矢!比嘉君は学校の成績下がったら、デュエルモンスターズ禁止されちゃうかもしれないの!そっちの道に誘っちゃだめじゃない!」

「ご心配なく!わたくしはみんなを笑顔にするのがモットーのエンタメデュエリストです。冗談にきまっているではありませんか、あははっ。もちろん、テキストは一番新しいものを確認してくださいね、Mr,比嘉。【〜を対象として発動】のテキストは最新のテキストにしかありませんからご注意を」

「わかりました、気を付けます。その30のカードってどんな感じですか?」

「デュエル雑誌やネットでは、多くのデュエリストにアンケートを取り、使用されているカードのトップ10をランキング形式で紹介しているのです。それを覚えていくとよいですね」

「なるほど、わかりました。ほかに、【対象をとる】と【対象をとらない】ってわかる基準ってありますか?」

「そうですね。他には手札やデッキがかかわってくる効果は、【対象をとらない】効果であることが多いです。あとは、効果の対象がチェーンや効果の処理のあとに決まる効果でしょうか」

「それって地砕きですよね?」

「ええ、そうともいいます。よくわかりましたね」

「………習うより慣れろってこのことなんですね」


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