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「おれは……どんなことをしてでもみんなを助ける!そして、みんなとの約束を守る!だからおれは負けるわけにはいかないんだ!おれ達の世界を好き勝手するお前なんかに、おれは負けない!絶対に負けちゃダメなんだ!見てろ、おれの運命はまだ何も決まっちゃいない!おれは未来を信じる!おれのターン、ドロー!」

きた、と遊矢はカードを見た瞬間、確信した。

「よし、まだ道は閉ざされていない!おれはカードを1枚捨てて、ペンデュラム・コールの効果を発動!この効果により、おれはカード名の異なる魔術師P(ペンデュラム)モンスター2体をデッキから手札に加えることができる!そして、ペンデュラム・コールの効果により、次の相手ターン終了時までおれのPゾーンの魔術師カードは効果では破壊されない!おれがサーチするのは竜穴の魔術師と相克の魔術師!さあ、いくぞ!」

遊矢の前に相対するのは、ただ広がる虚空である。だが、この決闘における敗北がすべての終わりだと遊矢は知っていた。

「おれはスケール8の竜穴の魔術師とスケール3の相克の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティング!これでレベル4から7のモンスターが召喚可能になった!揺れろ魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、EMペンデュラム・マジシャン!ペンデュラム・マジシャンが特殊召喚に成功したこの瞬間、おれはモンスター効果を発動する!自分フィールドのカードを2枚まで破壊し、破壊したカードの数だけデッキから同名カード以外のEMモンスターを手札に加えることができる!おれが破壊するのは竜穴の魔術師とペンデュラム・マジシャン!そしてサーチするのは、EMドクロバット・ジョーカーとEMヘルプリンセス!そのままドクロバット・ジョーカーを召喚する!その瞬間、ヘルプリンセスは特殊召喚できる!そしてドクロバット・ジョーカーの効果を発動!デッキから彗眼の魔術師をサーチする!彗眼の魔術師をペンデュラムゾーンにセッティングし、ペンデュラム効果を発動!このカードを破壊し、デッキから相生の魔術師をサーチする!さあ、これで準備は整った!」

遊矢は高々と宣言した。

「レベル4のヘルプリンセスとレベル4のドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ!竜の守護者と神竜が巡り合うとき、新たなる竜の防人がその姿を現す!エクシーズ召喚!いざ括目せよ!竜魔人クイーンドラゴン!そして、エクシーズ素材を1枚取り除き、墓地からレベル5以上のドラゴン族モンスターを1体選択して特殊召喚することができる!おれが蘇生するのはもちろんオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンだ!」

遊矢のフィールドには、2体のモンスターが並ぶ。

「対立を見定める相克の魔術師よ、その鋭利なる力で異なる星を一つにせよ!そして和合を見定める相生の魔術師よ、その神秘なる力で天空高く星を掲げよ!2体の魔術師のペンデュラム効果により、ドラゴンクイーンはオッドアイズとおなじレベル7のモンスターとして扱うことができる!おれはレベル7竜魔人クイーンドラゴンとレベル7オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでふたたびオーバーレイ!二色の眼の龍よ!その黒き逆鱗を震わせ刃向う敵を殲滅せよ!エクシーズ召喚!出でよランク7!怒りの眼輝けし龍!覇王黒龍オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン!さらにおれはエクシーズ素材を取り除き、効果を発動する!」

虚空は嗤った。姿なき相手のフィールドには、虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)がいる。血迷ったかと囁く深淵に、遊矢は不敵に笑った。虹光の宣告者がリリースされ、その効果の発動を無効にしてモンスターを破壊しようとしてきた。

「それはどうかな?」

遊矢は叫んだ。

「罠(トラップ)発動、ブレイク・スルースキル!虹光の宣告者のモンスター効果をターン終了時まで無効にする!さあ、これで終わりだ!反旗の逆鱗!ストライクディスオベイ!」

その瞬間、凄まじい暴風がすべてを薙ぎ払った、はずだった。しかし、虹光の宣告者は破壊されたが、そこには虚空が広がっている。目を見開いた遊矢の前には、一時休戦が消えるのがみえた。お互いにカードを1枚ドロー出来る代わりに、つぎのターンまでお互いが受けるすべてのダメージが0になってしまうカードである。虹光の宣告者が破壊されたことで、相手のデッキから高等儀式術が手札に加えられるのが見えた。遊矢は悔しそうにカードを1枚伏せ、ターンの終了を告げた。

深淵が蠢いた。

正体不明が地響きとなって襲い掛かる。悪夢が始まった。直接脳内に浮かび上がる言葉の羅列。音ではなく、言葉の羅列。意味がしっかりと認識される恐怖が遊矢に襲い掛かる。音ならば性別や年齢、性格といったものが認識できたかもしれないが、無機質に頭の中に浮かび上がる言葉の渦が、相手がなしている事だけを知らせる。目の前には淡々とカードが浮かんでは消え、モンスターが出現する。まるで機械を相手にしているような無機質さに遊矢の悪寒は止まらない。

『マンジュ・ゴッドが通常召喚された。マンジョ・ゴッドは召喚に成功した時、儀式モンスターか儀式魔法をサーチすることができる。その効果によりデッキからをリチュアの儀式鏡をサーチする。そして発動、高等儀式術。手札の儀式モンスター1体とレベルの合計が同じになるようデッキから通常モンスターを墓地へ送り、その儀式モンスター1体を特殊召喚する』

がんがん脳内に響き渡る警告のような頭痛。これ以上聞いてはいけないと本能が拒絶するが決闘を放棄することはできない。そして、音はようやく色を帯びる。それは思い出すだけでもおぞましいなにかだった。

『はるかなる深淵より、無意識なる波動が解き放たれる!欲深き者の禁術(リチュア)により、産声をあげよ、我が新世界!儀式召喚!降臨せよ!イビリチュア・ソウルオーガ!』

フィールドには禍々しいオーラを放つ悪魔が降臨する。

『手札からリチュアを捨てモンスター効果を発動。モンスターをエクストラデッキに戻す』

思わず遊矢は反応した。

「そうはさせない!おれは墓地のブレイクスルー・スキルを除外し、その効果を無効化する!」

虚空が嗤う。

「どういう意味だ」

遊矢の問いには答えず、ふたたび色をなくした言葉たちが遊矢の頭の中で渦を描く。

『召喚術のスキルを発動。手札よりリチュア・ビーストを召喚する。その効果によりもう1体のリチュア・ビーストを表側守備表示で特殊召喚。レベル4のリチュア・ビースト2体でオーバーレイ・ネットワークを構築』

イビリチュア・ソウルオーガの隣のフィールドに深淵から這い上がる影が出現した。

『はるかなる深淵より、無意識の波動が解き放たれる!禁術(リチュア)により、術者は自らを超越する!目覚めよ、我が新世界!エクシーズ召喚!降臨せよ、イビリチュア・メロウガイスト!』

2体のモンスターが遊矢の前に立ちふさがる。

「儀式モンスターとエクシーズモンスターが並んだっ」

無情にも儀式は進行する。

『手札より簡易融合を発動する。1000のライフポイントを支払い、レベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いでエクストラデッキから特殊召喚することができる』

「次は融合召喚!?」

何が目的かわからず、遊矢は困惑する。ライフポイントをゼロにするだけなら、この2体で事足りるはず。まだなにか恐ろしいことをしようとしているのか。目の前で淡々と行われるカードたちの乱舞に遊矢は眼を離すことが出来なかった。おぞましき声は色を帯び、音となり、遊矢の目の前に絶望を召喚する。

『滅びを囁く古の神よ、光輝を振りかざし目覚めたまえ!来たれ、我が新世界!旧神ノーデン!』

遊矢の血の気が引いたのは、その効果である。

『モンスター効果を発動。墓地からレベル4以下のモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する』

「うそだろ……そんな……」

『墓地より蘇れ、虹光の宣告者』

「1ターンで4種類の特殊召喚を成功させるなんて……」

そして下される攻撃宣言。起死回生をかけて、遊矢は伏せカードを手にした。

「そうはさせるかぁっ!罠発動、カバーカーニバルっ!」

目の前には遊矢を護るつかの間の盾が生まれる。無情にも粉砕されるトークンたち。そして、オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン。一時休戦の効果でダメージは発生しないが、遊矢にはトークン1体が残された。

「ぐっ、でもまだ次のターンがある!」

拳を握る遊矢は、相手の4体のモンスターたちが次々と姿を消していくという現象に見舞われた。なにがおこったのかわからず、固まっている遊矢の目の前で、無感情な言葉が頭の中で意味を綴る。

『フィールド上に存在する儀式・融合・シンクロ・エクシーズモンスターすべてを除外する』

「なんだって!?」

『そして特殊召喚する』

聞いてはいけない。これ以上聞いてはいけない。遊矢の頭のなかでは耳鳴りがなっている。がんがん響いてくる音が色を帯び、ふたたびこの世のものとは思えない音でその恐怖の名を遊矢の脳裏に刻みつける。

『その右手には破滅の暗黒。その右手には創造の閃光。世界を創りし偉大なる神よ。混沌に堕ちし、哀れなる世界に救済を。そしてあるべき世界へと還せ。降臨せよ、我が新世界!創星神sophia!』

遊矢の目の前で、一瞬にしてすべてが塵と化した。呆然と立ち尽くす遊矢に轟音が響く。

『創星神sophiaの特殊召喚は無効化されない。そして特殊召喚に成功したこの瞬間、このカード以外のお互いの手札・フィールド・墓地のカードは全て除外される。そしてこの効果に対して魔法・罠・効果モンスターの効果を発動することはできない。ジ・エンド」

世界は光に包まれた。


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