PACK 3
「えーっと、まずは音響戦士からいこう」


遊矢はEMを片づけて、音響戦士というテーマのカードを並べた。ざっとカードに目を通し、運営の人が添付したカンペを見ながら確認する。アクションデュエルをするたびに演目前の俳優のようにせりふ回しを暗記する遊矢には、それほど時間はかからなかった。


「このテーマはモンスターたちに音響戦士って名前がついてて、機械族で風属性っていう共通点があるみたいだなぁ。みてのとおりいろんな楽器がモチーフで、音符が飛び交ってるし、楽器を演奏してる楽しいやつらだよ。最後に新規モンスターが出たのいつだったかな、全然音沙汰ないからおれも忘れてたよ」

「へえ、ペンデュラム用にデザインしたわけじゃないんですね。もともとあったテーマにペンデュラムモンスターが入った感じかな?自分で自分を演奏してるんですね」

「そーだな、バンドみたいだろ。でもまだヴォーカルが収録されてないからいないんだよなー。新しいカードがもらえるっていうのも新しいテーマの楽しみでもあるんだけど」

「あ、そうなんですか?マイクかな?」

「意外と人型だったりしてな。音響戦士はチューナーモンスターからわかる通り、シンクロが得意なテーマなんだ。フィールドにいる時効果を発動する奴と墓地にいる時効果を発動する奴で出来てる。その効果っていうのが豪快でさ、レベル・種族・属性を変更できるんだ。うまく回せれば高レベルのシンクロモンスターが出せるよ」

「レベル・種族・属性ってほとんど全部じゃないですか。すごい、それなら指定されてるモンスターを音響戦士だけで揃えられちゃうんですね」

「うん、だから音響戦士はがんがんシンクロしていくデッキになるよ。そのキーカードが今回初めて収録される音響戦士ギータス。音響戦士はじめてのペンデュラムモンスターだな」


遊矢は音響戦士ギータスを差し出した。


音響戦士ギータス(スケール:7)
「音響戦士ギータス」のペンデュラム効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):手札を1枚捨てて発動できる。
デッキから「音響ギータス」以外の「音響戦士」モンスター1体を特殊召喚する。
【モンスター効果】
(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の「音響戦士」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚できる。


「え?たった1枚だけ?ペンデュラム召喚できないですね」

「そこでEMとかブンボーグの出番なんじゃないか?それにこいつをペンデュラムゾーンにセッティングするだけで、指定なしのカードを捨てるだけで音響戦士を特殊召喚できるし、的確なサポートカードだよ。今回は看板シンクロのメタファイズ・ホルス・ドラゴンもいるしな」

「かっこいいですね、そのモンスター」

「シンクロ素材によって効果が変わるのも面白いよなー。たしか、レベルモンスターのホルスの黒炎竜のリメイクだったけ」

「レベルモンスター?なんですか、それ」

「あ、そういえば言ってなかったっけ。レベルモンスターっていうのは、フィールド上に存在する同じ名前のモンスターを墓地に送ることで、手札かデッキから名前は同じでレベルが上のモンスターを特殊召喚できる共通点があるんだ。ほら、あの伝説の決闘者も使ってただろ?サイレント・ソードマンとか、サイレント・マジシャンとか」

「あー、あの!そっか、レベルモンスターっていうんですね、知らなかったです」

「ペンデュラムが主軸だとレベルモンスターも出せるし、試してみるのもおもしろいと思うよ」

「わかりました!お店で上級モンスター探してみますね」

「あ、もしかしてペンデュラムテーマ使ってくれるのか?うれしいなあ。それじゃ、比嘉の気分が変わらないうちにブンボーグいってみよう」


遊矢は笑って音響戦士を片づける。ブンボーグという名前がついたテーマを並べた。


「今度はみんな地属性で機械族、しかも攻撃守備が500っていうモンスターで統一されてるな。みんなブンボーグ001とか002とかついてるけど、最後の数字がレベルと一緒かぁ」

「なんてよむんですか、001って」

「ルビみたらゼロゼロワンみたいだな」

「やっぱりあれですか?アニメとか漫画の」

「それと文房具?」

「あははっ。えーっと、みんな攻撃守備が500ってことは、ロービートなんですか?」

「いや、ちがうよ。テキストみたらわかるけど、単体の効果とコンボで攻撃力が跳ね上がるから、全体的にはハイビ―トになるのが特徴なんだ。ほら、001は自分フィールドの機械族の数×500アップするし、004は墓地にブンボーグを送って、その攻撃力分を上げる効果があるだろ」

「えーっと、あ、ほんとですね。それに他のブンボーグを特殊召喚する効果があるブンボーグもあるし、001はチューナーだから音響戦士みたいにシンクロできますね。こっちは005と006がペンデュラムモンスターなんだ……ってことはエクシーズもできるのかな?」

「その通り!こいつはペンデュラム召喚の利点を詰め込んだようなテーマだとおもうよ。ブンボーグしかペンデュラム召喚できないから、こいつらはこいつらだけでデッキ組んだ方がよさそうだなー。もし他のテーマとまぜるならペンデュラムゾーンにべつののテーマのペンデュラムモンスター置かないと」

「そっか、ペンデュラムモンスターがあるっていっても、いろんなテーマがあるんですね」

「そーだな、その中で比嘉がおもしろそうだと思ったデッキをつかってみるといいよ。今の環境で出てくるテーマって、メリットばっかりでデメリット全然ないんだ。メリットとアドバンテージの塊みたいな?弱いわけがないんだよ。だから比嘉みたいに新しくデュエルモンスターズを始める人が使うにはいちばんおすすめできる、といいたいとこだけど、これでストラクがあればなー」

「あ、そっか。まだパックしかないんですよね……さすがに1年は待てないので、ちょっと考えてみます」

「あ、ほんとに?それならおれも考えとくよ。それじゃ、次のブースターみてみるか。こっから本格的にペンデュラム召喚に対応した新テーマが始まるんだ。ペンデュラム召喚のメタカードが入ってたり、サポートカードが入ってるみたいだよ」

「融合もシンクロもエクシーズもペンデュラムまで、ぜんぶ新しいテーマなんですね。すごいなあ」

「そーだな。ぜんぶ新しいテーマだから、ペンデュラムカードが入ってるのも1つだけか。クリフォート、このブースターの看板テーマだな、ちょっと待っててくれよ」


遊矢はメタファジック・リバースのカードをボックスに戻し、アカシック・ストームのブースター・ボックスを開ける。アーケードゲームで稼働しているデュエルターミナルというゲームがあるのだが、そこではゲーム内オリジナルのテーマを購入することができる。すべてカードデザイナーが手掛けたため、テーマデッキとして完成度が高いものばかりが収録されている。げんに、LDSの優等生たちが使うデッキはいずれも第1期のテーマであることが知られている。しかし、アーケードゲームで購入できるというハードルの高さから売り上げが伸び悩んだようで、第1期でデュエルターミナルは稼働を中止してしまった。このアカシック・ストームは第2期で展開される予定だったテーマ群のようだ。遊矢にペンデュラム召喚のルール講習を依頼したこの会社が販売元のようだが、なぜ第1期のようにLDSに支給されずにいきなり一般発売されるのかまでは、さすがに遊矢はわからない。カードデザイナーを多くもつスタンディング・デュエルの大手とレオコーポレーションで何かあったことしか誰もわからないだろう。


遊矢はわくわくしている比嘉の前で、この会社が初めて手掛けたペンデュラムテーマを広げてみる。ざっとテキストをみた遊矢は、その会社の本気を見た。


「わー、なんかUFOみたいでカッコいいですね。背景がきれいだなー」

「アクションデュエルだと迫力ありそうだなぁ、結構大きいし。えーっと、クリフォートは地属性、機械族で統一されてるみたいだな。アドバンス召喚をすることで自分とか相手のモンスターのステータスに関わる効果を発動するモンスターが多い、かあ。やることはわかりやすくていいかもな、これ。アドバンス召喚とペンデュラム召喚が得意なテーマみたいだし。比嘉がアドバンテージとか勉強するのに向いてるかも。アポクリフォート・カーネル以外はぜんぶペンデュラムモンスターで上級モンスターか、ペンデュラム召喚ならではのテーマってかんじだなぁ」

「え?あ、ほんとだ。ぜんぶ☆5つ以上ありますね。あれ、でもぜんぶ上級ってことは、ペンデュラム召喚でしか出せないってことですよね、榊先輩。すっごく思い切ったテーマだなあ」

「ううん、違うよ、比嘉。クリフォートは、アポクリフォート・カーネル以外はぜんぶ妥協召喚できるんだ。だからぜんぶ上級だけど、手札が召喚できないモンスターで一杯になる手札事故にはならないよ」

「え、妥協召喚?なんですか、それ?」

「妥協召喚っていうのは、デメリットがあるんだけど、ホントなら必要な条件を無視してできる召喚のことをいうんだ。たとえばリリースするモンスターを減らしたり、リリースするモンスターなしで召喚できるモンスターのことだよ。クリフォートの場合だと、妥協召喚をするとステータスが下がって、レベルも下がって、モンスター効果が使えないみたいだな。でもレベル4の攻撃力1800だろ?攻撃力も高い方だし、悪くないよ」

「えーっと、クリフォートの戦い方って、ペンデュラム召喚でモンスターを並べて、効果を使いたいモンスターを通常召喚したらいいってことでしょうか?どうしても手札にモンスターがない時は妥協召喚するとか?」

「うん、それでいいと思う。注意しないといけないのは、妥協召喚は表側攻撃表示でしか召喚できないんだ。だから、クリフォートはカードをセットすることはできないよ。あ、もちろん、モンスターをリリースして裏側守備表示で召喚することはできるけど」

「そっか、なんだかおもしろそうなテーマですね。でもなあ、共通効果が……」

「そうだな、比嘉は色んな特殊召喚してみたいんだし、ちょっとクリフォートはなしだよなー。共通のペンデュラム効果がきつすぎるよ、これ。クリフォートしか特殊召喚できない上に、ペンデュラムゾーンにある限り無効化できないってことは……。うん、やっぱりだめだ。クリフォートって名前のシンクロとかエクシーズ、融合、儀式モンスターでも出ない限り、特殊召喚自体組み込むのは無理だよ」

「ペンデュラムスケールは1から9まであるんですけどね……」

「手札から通常召喚することはできるんだよな。リリース要因にするって考えたら、アドバンス軸って手もあるけど……あとはフーコーの魔砲石とかで自分でカードを破壊するとか?あんまりメリットないけど。バウンスできれば一番いいんだけどなあ」

「1度セッティングしたらそのままなんですよね、ペンデュラムカードって。うーん、僕、どういうカードがあるかわからないです」

「ごめん、おれもスタンディングデュエルのカード効果はぜんぶ覚えてるわけじゃないんだ。アドバンス時代のEMならわかるんだけどなー、その効果もペンデュラムゾーンに適応されるかどうかは、運営に聞いてみないとわかんないしなあ。いつもアクションデュエルしてるからさ、ごめん」

「いえ、気にしないでください。ありがとうございます。えーっと、これでぜんぶでしょうか?」

「そうだな、これでぜんぶだと思う。どれ回してみたい?いろんな特殊召喚したいなら、音響混ぜたEMかブンボーグになりそうだけどさ」

「そうですね、ブンボーグもおもしろそうですけど、せっかくなので音響とEM使ってみたいです!榊先輩が使ってるモンスター、僕も使ってみたい!」

「そ、そうなのか?あはは、ありがとう。よーし、それなら俺もデッキ組むの手伝うよ。スタンディングデュエル用のEMの効果、また覚えなおさなきゃいけないしな。デッキができたらマッチデュエルしよう」

「はい、わかりました!」


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