Scrap match 1
「Mr.比嘉に回してもらうデッキは、先ほどわたくしがシンクロ召喚を実演いたしました、【スクラップ】というテーマデッキになります」

「スクラップ・ビーストとかありましたし、スクラップってつくモンスターなんですか?」

「ええ、その通りです。スクラップと名のついたカードで構成されるビート、つまり特殊召喚をたくさん使うデッキになりますね。モンスターを破壊したり、蘇生したりを繰り返しながら、シンクロモンスターをどんどん召喚して、フィールドを埋めていくデッキになります。このデッキはそれにレベル4特化のエクシーズ召喚ができるようにギミックが入っていますが、やることはかわりませんね」

「なるほど、確かに自分の効果で破壊されたり、他のスクラップを蘇生したりする効果が共通してますね。だからスクラップっていうのかな?」

「そうですね。それでは、スクラップを回すうえで主力になるモンスターと、中心になるコンボを紹介しておきましょう。手札がそろったら、どんどん挑戦してみてくださいね」

「はい」


遊矢は2枚のカードをおいた。


スクラップ・キマイラ(地)
      ☆☆☆☆
【獣族・効果】ATK1700 DEF500
自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたチューナー1体を選択して特殊召喚することができる。このカードをシンクロ素材とする場合、「スクラップ」と名のついたモンスターのシンクロ召喚にしか使用できず、他のシンクロ素材モンスターは全て「スクラップ」と名のついたモンスターでなければならない。

スクラップ・ビースト(地)
     ☆☆☆☆
【獣族・チューナー】ATK1600 DEF1300
フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された場合、バトルフェイズ終了後にこのカードを破壊する。このカードが「スクラップ」と名のついたカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、「スクラップ・ビースト」以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加えることができる。


「まずは、この2体を揃えて、ランク4のエクシーズ召喚を行なうか、スクラップ・ドラゴンをシンクロ召喚する方法があります。墓地にあるスクラップ・ビーストをスクラップ・キマイラで蘇生させるなどして揃えてくださいね」


ふむふむ、と比嘉はノートにとる。


「これがモンスター同士のシナジーってやつですね!」

「ええ、そうです。よく覚えてましたね」


遊矢はうれしそうにうなずいた。


「つぎはこの2体の組み合わせですね」


遊矢はさらに2体を横に並べる。


スクラップ・ゴーレム(地)
       ☆☆☆☆☆
【岩石族・効果】ATK2300 DEF1400
1ターンに1度、自分の墓地に存在するレベル4以下の「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択し、自分または相手フィールド上に特殊召喚することができる。

スクラップ・ゴブリン(地)
       ☆☆☆
【獣戦士族・チューナー】ATK  0 DEF 500
フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された場合、バトルフェイズ終了後にこのカードを破壊する。このカードが「スクラップ」と名のついたカードの効果で破壊され墓地に送られた場合、「スクラップ・ゴブリン」以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスターを1体選択して手札に加えることができる。また、このカードは戦闘では破壊されない。


「スクラップ・ゴーレムでスクラップ・ゴブリンを相手フィールドに攻撃表示で蘇生させて、バトルフェイズが終わるまで破壊されない効果を利用してサンドバッグにする。もしくはスクラップ・ゴーレムで他のチューナーを蘇生させてレベル8,9のシンクロ召喚を行なうといった方法もあります。この2つの組み合わせのコンボができやすいように、魔法や罠が組まれていますね」

「ああ、だからこのデッキ、モンスターを墓地に送ったり、破壊しないと発動できない効果のカードが多いんですね」

「ええ、自分がやりたいコンボを決めて組んだ典型的なコンボデッキというやつですね。スクラップの効果を最大限に生かすため、自分から積極的にスクラップを破壊していくタイプのデッキになります。1度展開すればどんどん攻めることができます。ただし、手札が揃わないと展開が始められないのが難点なので、蘇生手段が多めですね」

「わかりました。榊先輩、初めて見るカードばっかりなので、少し時間をもらってもいいですか?」

「ええ、もちろん。じっくりカードを眺めてみてください。でも、ぜんぶの効果を把握する必要はありませんよ。Mr.比嘉は初めて見るデッキでしょうから、わからない時は聞いてくださいね。デュエル中でもどうぞ。それが今回の目的ですからね。見ているだけではわからないことがたくさんあります。やって覚えることが近道のときもありますからね」

「はい、わかりました!」


30分後、比嘉がようやくミラーマッチをやりたいといったので、遊矢は準備に入った。


「ライフポイントは4000、それぞれの持ち時間は無制限でいきましょう」

「持ち時間ってなんですか?」

「これは公認大会だけのルールなのですが、公認大会だとマッチ制といって、3回デュエルをして勝ちが多い方が勝利というルールを採用しています。大会ではたくさんの参加者がいるので、デュエルの時間も決められているんですよ。その時間内に勝負がつかないと引き分けになります。もし制限時間がなかったら、1回勝利して、のこりの2回をずっと考えるふりをしたり、必要のないことをしたりして、わざと時間切れになって引き分けなんてことを考える者もいるんです。それはだめなので、1ターンは3分くらいと決められているんですよ。まあ、公式大会でなければ時間を制限する意味は無いので、気にしないでください」

「ってことは、榊先輩も公式大会では3分で1ターンを終わらせるんですか?」

「スタンディングデュエルの大会では、みんなそうですね。アクションデュエルではそんなルールありませんが、リアルタイムで進んでいくので悠長に考えている時間はありません。ですから、あんまり変わらないかもしれませんね」

「うわー、ほんとにすごいんですね」

「いえいえ、そんなことありませんよ。デュエリストならみんなやってることですから。心配しなくても、Mr.比嘉もきっとできるようになりますよ」

「そうだといいんですけど……」

「今回は初めてデュエル形式で最初から最後まで通してやりますからね、そんなに堅苦しく考えず行きましょう。ほら、スマイルスマイル。それでは、よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」


ぺこり、と頭を下げた比嘉たちの横には、4000と打ち込まれている電卓がある。デュエルディスクの代わりである。ダメージを計算する用のメモ用紙と筆記用具もわすれずに。


【遊矢】LP(ライフポイント)4000
【比嘉】LP(ライフポイント)4000


毎度おなじみのコインが投げられる。幼稚園のころから使っているせいか、また遊矢が落ちた面を綺麗に言い当てた。比嘉からすれば、遊矢のお手本をまじかで見てからの方がデッキの回し方もわかると思うので、あんまり気にしていない。


「あなたもわたしも明るく楽しくエンタメ!、どんなときもそれを忘れないのがわたくしのモットーです。Mr.比嘉にもデュエルを楽しんでいただけるよう努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!まだまだデュエルははじまったばかり、この先何が起こるのかわからない、だからわたくしはとてもそれが楽しみなのです。なにせこれがMr.比嘉にとって記念すべき最初のデュエルなのですから!そのお相手をさせていただけることをとても光栄に思いますよ、Mr.比嘉。まずは、その開幕にふさわしい序章を開演させていただきましょう!それでは先行をいただきますね。わたくしのターン。メインフェイズ1に入ります。まずご登場願いますのは、舞台を整えるにはこのモンスターが一番でしょう。わたくしはカードガンナーを通常召喚いたします。Mr.比嘉、なにかありますか?」

「いえ、なにもないです。でも、榊先輩がどんなことを見せてくれるのか、わくわくしてます。だから見せてください、榊先輩のエンタメを!」

「その御期待に添えるのもエンターテイメントをモットーとするデュエリストの役目です。かしこまりました、わたくしはカードガンナーの第一の効果を発動しましょう。このカードは1ターンに一度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って効果を発動することができます。この意味がわかりますね、Mr,比嘉」

「はい。それがどれだけ重要な準備かわかります。でも、僕はそれを止めることはできませんので、続けてください。あの、墓地を見せてもらってもいいですか?」

「もちろんいいですよ。カードの順番は変えないでくださいね」

「わかりました……うわ、モンスターばっかりだ。1ターン目はバトルができません。でも、墓地に送ったモンスターを蘇生させる効果をもつモンスターがたくさんいますっ!」

「ご名答、墓地に送られるカードはランダムですが、だからこそデュエリストの運命力が試されるカードでもあるのです。どうやら勝利の女神はわたくしに向いているようですね。これは幸先がよさそうだ。このカードの攻撃力はわたくしのターン終了時まで、この効果を発動するために送ったカード×500ポイントアップします。わたくしはデッキからカードを3枚墓地に送りますので、カードガンナーの攻撃力は400+500×3=1900となります。どうします?」

「続けてください」

「かしこまりました。そして、わたくしはカードを1枚セットしてメインフェイズを終わりましょう。1ターン目ですからバトルフェイズとメインフェイズ2は飛ばされ、わたくしはエンドフェイズになります。そのままターンエンドといきましょうか。同時にカードガンナーの効果は終わりをつげ、もとの攻撃力に戻ります。わたくしのターンはこれにて終了です。これで次のターン、わたくし主演のデュエルが幕を開けます。それまでしばしのお立合いといきましょう。それではMr.比嘉、どうぞ、あなたのターンです」

「わかりました。僕のターン、ドローッ!僕はメインフェイズに入ります。僕は手札から通常魔法のおろかな埋葬を発動します。このカードの効果により、僕はデッキからモンスターを1枚墓地へ送ります。僕が墓地へ送るのは、スクラップ・ゴーレムです。榊先輩、どうしますか?」

「おっと、序盤からスクラップ・ゴーレムを墓地送りですか。これは厄介なですね。残念ながら今のわたくしにはそれを止める手段がありません。どうぞ、つづけてください」

「それでは僕は手札からカードガンナーを通常召喚します。なにかありますか?」

「おやおや、本当にミラーマッチになってしまいましたね。これはおもしろい。止めることもできますが、止めておきましょう。わたくしは手筈を整えることに専念しますので、今はなにもしません」

「うう、その余裕っぷりが怖いなあ。ブラフなのか、ほんとにそうなのかわからないのが怖いです、榊先輩。でも、行きます!僕はカードガンナーの効果を発動します。デッキからカードを3枚墓地に送り、カードガンナーの攻撃力は1900にアップします。なにかありますか?」

「ご安心ください、なにもありませんから。しかし、墓地を確認させていただいてもよろしいですか?」

「あ、はい。どうぞ」


「………ドンマイです、Mr.比嘉。こんな日もありますよ」

「残念がられた!?うう、僕だって好きでこうなったんじゃないですよ!僕はカードガンナーで榊先輩のカードガンナーを攻撃します。なにかありますか?」

「さあ、どうぞどうぞ、攻撃してください」

「うわあ、ほんとに怖いですよ、榊先輩!伏せカードが怖いけど、怖がってちゃダメですよね。僕はカードガンナーで榊先輩のカードガンナーを攻撃します」

「わかりました、通しますね」



prev next

bkm
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -