雨の日2
「女将さん、ちょっと出かけてきますね」
「はい、いってらっしゃい」
「だから言ったじゃない」
肩に乗ったてるるが頬をふくらました。
ちょうど買い物が終わった時に雨が降りはじめたのだ。
「ラジオでも言っていたじゃない!雨降るから傘持ったほうがいいて」
笥朗の肩をばしばし叩きながらてるるに耳元でさけばれ、顔をしかめる。
「もう、止むまでここで待たなきゃいけないじゃないのよ」
「いいじゃん。雨見てるのも楽しいよ」
「わたしはつまらないわ」
そんなてるるにふうっと息をつく。
ざあざあと響く雨の音。ぽたぽたと落ちる雫の音。
雨にもいろいろな音が聞こえる。
「雨なんて嫌いだ」
となりから聞こえ、見てみれば男の子がどうやら呟いたようだった。
「どうして?」
そう笥朗が聞けば、男の子は足元を睨みつけながら答えた。
「だって外に出たって濡れるし遊べないもん」
「そうかな、嬉しいことだってあるよ。『あめあめ、ふれふれ母さんが』ってね」
じゃのめでお迎え嬉しいな。
笥朗が歌えば、ぱしゃりと水がはねる音が近づいてくる。
「こんなところにいたの。帰るわよ」
「お母さん!」
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