雨の日1
『今日は曇りのち雨になります。お出かけのさいは傘を持っていくのがいいでしょう』
「笥朗、笥朗!今日の新聞見た?」
「いや、まだだけど」
「ほら見て!」
てるるが引っ張って見せてきたのは音楽特集のページ。
そこには今、注目されているバンドの記事が書いてあった。
「あいつ頑張っているな」
「あんたの知り合いなんでしょ?あんたもこいつに負けないぐらい頑張りなさいよ」
「いいの。俺は気まぐれで」
ギターをいじりながらのんきに笑う笥朗に、てるるは呆れたようにため息をついた。
「だからあんたはいつまでたってもプロになれないのよ」
「別に俺はプロになりたいわけじゃ、……あ」
ビィンという音がなり、弦がはじけた。
どうやら切れてしまったようだ。
その音を聞いたてるるが心配そうに近づいてきた。
「大丈夫?」
「平気だけど、あらら。切れちゃったよ。買ってあったっけ?」
「ないわよ。この前買わなくちゃって言ってたじゃない」
「…本当だ。てるるよく覚えてるね」
しょうがない、買いに行こう。と笥朗はギターをケースにしまうと肩に背負い込んだ。
「ギター持っていくの?」
「ついでにメンテナンスでもしてもらおうかなって」
『もう一度天気予報です。今日は曇りのちになります……』
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