小説 | ナノ
小金井慎二、水戸部凛之助
「あれ、伊月と黒子じゃーん」
「……」
「コガ、水戸部」
3人で連れ立っていると、どこか猫を彷彿とさせる少年と、やたら背の高い少年(と言っていいのだろうか。長次を思い出させる貫禄がある)2人組に出くわした。伊月と黒子の知り合いか…
「部活行くの?一緒に行こーぜ!」
「あぁ、行こう」
「あれ、こっちどちら様?てか、すごい髪長いねー!男の子?伊月たちの友だち?」
兵助の存在に気づいた小金井は、人好きのする笑みを浮かべながら、興味津々といった様子でいきなりの質問攻めだ。
水戸部も軽く首を傾げてジッと見つめてくる。
そんな2人に、伊月と黒子は若干の苦笑い。
「毎回説明しなきゃなんないのか、これ…」
「どうせキャプテンたちにも言うんです。学校に着いてからでいいんじゃないですか」
「だな」
伊月と黒子がボソボソと相談している間、兵助は初対面の2人にジロジロと見られて困り果てる。
まだこちらの世界のことは全然分からない。
不用意な発言も出来ず、兵助が困りきった顔で伊月を見つめると、気づいた伊月が助け船を出してくれた。
「俺の友だちだよ。黒子ともさっき会ったばっかりでさ。ちょっと色々あって、今日部活に連れていく」
ちらりと伊月が兵助を見てきたので、空気を読んでペコリと頭を下げた。
「……久々知兵助です。男です。よろしくお願いしま」
「よっろしくー!!オレは小金井慎二!こっちは水戸部凛之助!誠凛高校2年生バスケ部!久々知くんはどこの高校?」
兵助の言葉を食いぎみに挨拶してきた小金井の頭を、伊月が軽くはたいた。
「あんまり兵助を怖がらすな。……大丈夫、心配はいらない。いいやつらだから」
後半は兵助に向かって言う。
伊月が大丈夫と言うならば、大丈夫なのだろう。
先程の黒子ではないが、何故か伊月にはそう思わせる、不思議な信頼感がある。
「コガ、兵助のことは後でちゃんと紹介するから。あと、こいつはまだ14歳だ」
「嘘!?」
「…………!」
「そうなんですか?」
そういえば黒子にも兵助の年齢までは言ってなかった。
三者三様の驚き方を見て、伊月がクスクスと笑う。
「俊…俺、そんなに年相応に見えない?」
「悪いけど見えない」
シレッと言ってのける伊月に、兵助は僅かに膨れっ面になった。
「大人っぽいってことだよ。でも、そういう顔するのは、ちょっと年相応に見えるかな」
伊月の細い指が兵助の頬をツンツンとつつく。
そして、不意に兵助の長い髪を一房さらう。
「あと、やっぱりこの時代にしては髪が長めだから。男にしちゃその長さはけっこう珍しいし。何歳なんだろうとは思う」
「これ、目立つ?」
「…ま、ぶっちゃけな」
確かに伊月たちはみんな短髪だし、すれ違う男性も、誰一人として髪を結ってる人は見かけなかった。
「……………」
「なんか伸ばしてる理由でもあるの?」
「いや、特には…俺の時代じゃ基本的にみんな結ってるから」
兵助の何とも言えない表情に、伊月が吹き出しそうになるのを堪える。
急にそわそわしだした兵助の頭を伊月がぽんぽんと撫でた。
「部活終わったら、髪切りに行くか」
2013.9.17
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