#4 旅立ちと弟

朝食の席にも来ず、いつもいた甲板にも洒落たテーブルやカップはなかった。1日目は誰も気にも留めていなかったがそれが3日となるといないことに気づき始めるものもいた。エースもその1人である。

エースは今度こそ勝とうとモビーの甲板に来たのだがいなくて諦めた。という方が大きかったのでトキを探すことはしなかった。

実は具合が悪く部屋にいるのではないかとと憶測が飛び、4日目の朝にマルコが部屋を尋ねるとそこには何もなかった。何年も誰も住んでいなかったかのように、床や家具に白く埃があった。数日で埃がこんなに積もることもない上、家具はトキが運んだものであるのでそれでも日数が合わない。

机の上に、「白ひげ海賊団の皆様方へ」と丁寧な字で書かれた手紙が真新しく置かれていたのを発見した。

エースは手紙の内容を聞くと、そのまま単独航海の準備を始めた。

『白ひげ海賊団の皆様方へ。
突然、姿を現し約束を一方的に突きつけてしまい申し訳ありません。今回のやり方は良くなかったようです』

「俺が追わなくていいと言っているのに、聞かねえ馬鹿息子だ」

『確かにわたくしの目的は達成できるでしょうが、それではサッチが余りにも浮かばれません。ごめんなさい』

「すまん、オヤジ」

『でも、エースに追わせる訳にはいきません』

「だが、行くからには、俺の名を背負って暴れてくる限りは死ぬんじゃねえぞ」

『ですから、弔いは僭越ながらわたくしが行いたいと思います』

「おう」

『決して、追わないでください、わたくしもティーチも』

「決着をつけてくる」

『どうか、どうか、次に私と会うことがないことを願っています』

・・・・・・トキがもたらした数日間は、エースの頭を白ひげ海賊団の仲間の許で冷やさせることが出来た。白ひげは旅立とうとするエースの目に、仲間の敵を取ろうとする激情の他に、仲間を残していく強い炎を見た。
だから、エースに「追え」とも「追うな」とも言わなかった。



「俺達を茅の外にさせるとな!グラララ!
エース、酒の肴に土産話を持ってこい!」








ティーチは今は「黒ひげ」と名乗っているらしい。その情報から、黒ひげが暴れた場所を追って来てグランドラインを旅をしている。
ティーチがエターナルポースを使ったりしなければ、ログポースで同じ道を辿れる。が、その姿はなかなか掴むことが出来なかった。

そんなある日、嬉しい情報も入ってきた。今、進んでいる航路を「麦わら」一味が来ているらしい。海に出てから弟の便りを聞くことが出来て、嬉しい。

そして、今、目の前に弟・・・・・・ルフィがいる。

「エース!」

「よっ、ルフィ!」

海軍に追われて慌てての出航であったが、ルフィに会うことが出来た。ていうか、俺の伝言伝わってねえのか、ははは!

言い面構えの仲間達で、兄として安心した。でも、仲間にする誘いを断られたのはちょっとショックだ。まだまだルーキーな海賊団。出来ればお互いに悔いのない再会を次もしたいところだ。

「トキの言う通りだったな!にししっ」

「あいつを知っているのか?」

「おう、冬島に行く前に仲間になったんだ!」

「最後まで仲間になるの拒絶してただろっ」

ルフィが得意げに言ったが、俺が驚く前に長っ鼻ツッコミを入れていた。ああ、思い出した。ルフィはこういう奴だった。

「エースと同じように「黒ひげ」を追っているって言ってたな。もしかしえて、トキってエースの仲間か?あいつ、すっげーよな。ふしぎ時間なんだぜ!」

「いや、あいつは・・・・・・」

仲間、ではないはず。そうだ、仲間ではない。
では、何故、俺達の前に現れた?

「エースもいい仲間持ったんだな!嬉しそうにエースのこととか話してた。にししっ、エース、メシ食いながら寝るんだってな」

「あ、ああ・・・・・・」

弟が笑う姿に何か、思い出しそうで何も思い出せない。

(エー・・・・・・おと・・・が、・・・・・・すてき・・・・・・)

大事な物を、何処かに忘れてきてしまった気がする。







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