かたぐるま

 





あんなに風を感じたのは初めてだった!
















ホールには既に皆揃っているらしい。

ガヤガヤと騒がしかった。


特にノブナガとウボォが。




「連れてきたよー。」

シャルの声に、騒がしさが止む。


「ルーエル、おはよう。」

マチが傍に来て、頭を撫でてくれた。


「よし、じゃあ行くぞ。」








車に揺られていると、何だか眠くなる。


今車にいるのは、シャル・クロロ・マチ・フェイタン・私の5人。

全員は乗れないから、何人かは違う車に乗っているらしい。




「どこに行くの?」


クロロに聞くと、ふっという笑い声が聞こえた。

そして、


「秘密だ。」


と言われてしまった。



ぷーっと頬を膨らませていると、マチが苦笑しながら頭を撫でてくれた。










「着いたぞ。ここから少し歩く。」


マチが手を引いて車から降ろしてくれる。

降りると、ふわっと緑の香りがした。


「木の香り…」


呟くと、“ここは森の中だからな”とクロロが教えてくれた。



足場の悪い道を、マチに手を引かれながら歩く。
目が見えないから、たくさん躓いてしまう。
その度に、フェイタンが腕を掴んでくれた。


中々前に進めない私。

何だか、すごく…悲しくなる?

迷惑を掛けてるって思ったら、泣きたくなった。


そう…

ごめんなさい、って気持ちだった。





「……ごめんなさ――っ!」




皆に謝ろうとした。

その時、


ふわり――と体が浮いた。




「こうすりゃ、もう転けねぇだろ!」




すぐ下でウボォの声がする。



どこかに座っている――?



でも、椅子みたいに固くなくて、とても柔らかくて暖かかった。

びっくりしていると、ぐらり、と座ってる場所が動いて思わずバランスを崩した。


咄嗟に掴んだもの。

ふさふさしていて、柔らかい。
そう、動物の毛みたいな感じだった。



………髪?



その柔らかい物をふさふさと触る。

そしたら、ガッハハハ!とウボォの豪快な笑い声が聞こえた。



「ルーエル、くすぐってぇよ!
髪の毛くしゃくしゃしてねぇで、しっかり掴まっとけよ。」


ウボォがそう言うと、さっきよりも揺れが激しくなった。



「私、ウボォの上にいるの?」


「おぅ!“肩車”っつーんだぜ」


「かたぐるま…」



ふわり、と風が頬を掠めた。

いつも感じている風よりも心地良い。


揺られる感じも、吹き抜ける風も気持ち良くて、私は自然と笑みが溢れた。




「かたぐるま、好き!」




満面の笑みでそういうと、下から皆の笑い声が聞こえた。








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