アニオリ◆災害救助2
アニメオリジナル(仮免試験前)後編


「「東堂!!」」


力なくずるりと倒れ込んだ梓に轟と常闇は顔を真っ青にして駆け寄った。

壁に強く頭を打ったせいか、梓は気を失っており、慌てて轟が抱き起こし、ぺしぺしと頬を叩く。


「東堂、東堂、しっかりしろ!」

「すまん、東堂…」

『んう…』


二人の呼びかけが届いたのか、梓の意識が戻ったのようで、眉間にシワを寄せ、痛そうに唸りながらゆっくりと目を開ける。


『…、あ、れ?私…気ぃ、失ってた?』

「ああ、悪い、俺を庇ったせいで」

「東堂、すまない、ダークシャドウが、」


目を開ければとても悲しそうな顔をする2人がいて、梓はぽかんと口を開けるとやっと先ほどの状況を思い出した。
ダークシャドウが暴走してしまい、嵐を発動できない状況で、仲間の個性に刃を向けるわけにもいかず、どうにかこうにか受け流したのだ。結局壁にぶつかって気を失ってしまっていたらしい。

気に病む2人を安心させるように梓はパッと笑った。


『…謝る必要ないよ、ごめん私こそ、こんな時に気を失っちゃって』

「「しかし、」」

『ほら、道開けたし…結果オーライだ』


瓦礫の壁は崩れ、道が開通していた。


「立てるか?」

『大丈夫大丈夫』


ぶつけた箇所を摩りつつ、轟の手を借りてよいしょと立ち上がる。


「東堂、平気か?」


心配そうに眉を下げる常闇に梓は繰り返し大丈夫だと屈託なく笑った。


『心配しすぎだよ、常闇くん。たんこぶできただけ!』

「お、ほんとだ。ポコってなってるな」

『轟くん触るなよ、痛いでしょ』

「わりい」

『それより、なんで非常灯が付いたんだろう…』


ダークシャドウの暴走が止まって良かったけど、と天井を見上げる梓に轟は「恐らく誰かが非常用電源を直したか、電源装置に電気を送ったんだろう」と推理した。


「電気……上鳴か」

「上鳴に指示を出した奴もいるだろうな。こんな機転がきくやつは…緑谷か八百万、それと、」

『かっちゃんの可能性もあるね』

「そうだな」


そんな話をしていると、突然、
ドオォンッという爆発音が建物内全体に響いた。

「「『!?』」」


思わず歩みを止め、3人で顔を見合わせる。


「この音……」

「爆豪か?」

「いつまた崩落するかわかんねえ状況で、あいつ何考えてやがる」

『ほんと。やり方が派手だねぇ、相変わらず』

「爆発音は下から響いた」

「地下6階…最下層か、よりにもよって一番脆い場所で」

『最下層……、ふうん、非常用電源を復旧するよう上鳴くんに指示を出したのはかっちゃんか』


納得したような声で地面に手を当てた梓に思わず常闇と轟は「「え?」」と声を揃えた。


『だって、そうでしょ。ここに入る前に言ってたもん、最下層の頑丈なところに非常用電源はあるはずって。要救助者も最下層にいたのかな』


爆破しないと助けられない状況だったのかなぁ、とぺちぺち床を叩いて考え込んでいる梓を見て、思わず轟と常闇は、梓以外にこの状況で訓練を続けようと思う奴がいたのか、と顔を引きつらせた。
この幼馴染コンビは少しイカれているとちょっとだけ思った。


『でもあんまり爆破しちゃったら脱出難しくなりそうで怖い…。早いとこ私たちも最下層に行ってかっちゃん達と合流し……』

「「東堂?」」


喋っている途中。
なぜか眉間にシワを寄せて辺りをゆっくり見渡し始めた梓に轟と常闇は首を傾げた、が、シッと梓に制され、静かにする。


『…、なんか、ヤな音がする、』

「…音?聞こえねえぞ」

『…んん、』


と、その時だった。

壁の隙間からドドド、と勢いよく水が溢れ出してきた。


『っ、あれか』

「水…!?」

「まずいな、さっきの地震か爆豪の爆破が原因だろうが、地下の配水管から大量の水が流出している」


常闇の解説に梓と轟は((それはまずいだろ))と顔を青くして見合わせた。


『こっここまで水がきてるってことは下層はやばいんじゃ…!?』

「ああ、ダミー人形も抱えてるだろうし、身動きが取れてねえかもしれねえ」

『助けに行かないと!で、でもどうやって…ここから階段まで回り込んでるうちに水はどんどん、』

「俺に考えがある。東堂、常闇、ついてきてくれ」


梓は元気よく、うん!と頷くとマップを立ち上げどこかに走っていく轟の後を常闇と2人で追いかける。

そして、その階の中心部に着いた。



『と、轟くん、ここは?』

「この真下が最下層のホールだ。もし爆豪達がまだ最下層にいるなら、恐らく天井が高いこのホール部分に移動しているはずだ」

『アッこの床ぶち抜くってこと?それなら私できる!』

「「待て待て待て待て」」


やっと役に立てる、と意気揚々と刀に手をかけるものだから、轟と常闇は慌てて梓の腕を掴む。
この状況下で雷ぶっ放されたら感電してお仕舞いだ。


「常闇に床を抜いてもらう。東堂はだめだ」

『エッ』

「雷で感電してしまうからな。だが轟、この暗闇では制御が、」

「俺の炎で抑える」


ボウッと轟の掌に炎が灯り、わかった、と安心したように頷いた常闇のダークシャドウがぐわりと空中に舞い上がる。
ドガァン!とダークシャドウが床を穿つのを梓が(役立たずでごめん…)と寂しい思いで眺めていると、
下階への穴が開け、胸元まで水に使った爆豪達が見えた。


『かっちゃん!』


思わず飛び降りようとした梓の首根っこを「危ねえから降りるな!」と轟が掴み、ぐえっと悲鳴を上げている間に彼の氷の柱がパキパキッと下まで降りる。


「こっちだ!登ってこい!」

「轟ィ!」「梓ちゃんも!…猫みたいに首根っこ掴まれてるけど」

「だァれがテメェなんかの世話になるかァ!」


ホッとした様子の切島と、安心しつつも相変わらず救助が苦手そうな梓に思わず笑ってしまった上鳴。
そして爆豪は安定のツンケンした態度をとっていて、元気そうだと梓もホッと息をついた。


『かっちゃん!切島くん!上鳴くん!無事で良かったよ!早く登ってきて!』

「嫌に決まってんだろ!!」

「この状況で何言ってんの!?梓ちゃんの言う通りだよ!轟の世話になろうよ!轟のスネしゃぶり尽くそうよ!」

『かっちゃん早く来ないとその水没しちゃうよ。豪水で空気が揺れてるから』

「救助系ポンコツの梓ちゃんがああ言ってんだよ!?今の状況マジでやばいんだから早く上がろ!?」

『ポンコツて』


ほんとのことだけど酷い、と泣き真似をする梓に思わず轟がブフッと吹き出す。
戦闘ではあそこまで頼りになるのに、確かに救助となると心配で目が離せない。
今日1日で何回「だめだ!」と言っただろうか、と思い返してみれば、やっと説得に応じた爆豪たちが氷の柱を登ってきた。


「ハァ…ハァ…助かった」

「サンキューな、轟、常闇、東堂」

『私何もしてないよ。轟くんに“だめだ!”って怒られてただけ』

「救助ポンコツすぎて安心するわ」


思わず上鳴がくしゃくしゃと梓の頭を撫でれば、間髪入れずにパシィンッ!と爆豪に払い落とされ
「痛!?」と悲鳴が上がる。


「気安く触ってんじゃねェぞ」

「ひどくない!?撫でただけじゃん!」

「喋ってる暇はねえぞ。地下水がまだ収まっていない。東堂、まだ空気は揺れてるか?」

『うん、ゴオオオって感じで、不穏な空気だね』

「だよな。俺が凍らせて食い止める。その間にお前らは脱出しろ」

「轟、俺も一緒に、」

「お前らの個性じゃこの状況に対応できねえし、近くにいたら氷結の巻き添えだ。足手まといになりたくなけりゃ、とっとと行ってくれ」

「轟の言う通りだ。事態は一刻を争う、脱出するぞ」

「、わかった」

「カッコつけちゃってよ。上で待ってるからな!ほら、梓ちゃんも行こうぜ」


轟に促され、常闇、切島、上鳴が足早に階段まで向かおうとする。
梓も上鳴に腕を引っ張られるが、


『わ、私ここに残る』

「「「は?」」」


思わず切島達は素っ頓狂な声を上げた。
ここにいてはいけないし、梓は轟の氷結のように足止めできる個性でも無い。
ここにいること事態が危険なのに、と上鳴が眉間にシワを寄せるが梓は頑なで、


『水の操作なら出来る。機動力もある。何かあったときには、轟くんの脱出の一手になる』

「……でも、」

「どうする、轟」

「……、言っても聞かねえだろうから、東堂は置いていってくれ。確かに…、窮地の時にこいつがいるのは心強い」


ぱあっと梓の顔が明るくなる。
切島たちは、しぶしぶ梓から手を離すと、「絶対追いかけてこいよ!」と声をかけ、先に脱出するためにその場を後にするのだった。





3人がいなくなって、持続的に地下水を凍らせる轟の隣に梓がのんびりと並んだ。


『……こんなだだっ広い空間を凍らせるのは、さすがにむりだよ。轟くん』

「…やっぱり、気づいてたか」

『隣で戦うことが多いからねえ。君の氷結はすごいけれど、あの3人が逃げてる時間を稼ぐことはできても、自分が脱出することはできないんじゃ無いかと思って』


はっきりと言うものだ、轟は自嘲気味に笑った。


「残って俺を守ってくれんのか?」

『むりだよ。私だってこの規模の水を操作することなんてできない』

「だろうな」

『でも、状況を打開する矛となることはできると思ってる』


閉ざされた道をぶっ壊すことなら。と肩をすくめた梓は頼もしくて、今日イチのカッコ良さだと轟が思わず笑えば、『そう考えるのは私だけじゃ無いよ』と梓の視線が後ろに向いた。


「…爆豪」

「テメーに借りは作らねえ」

『心配だから残ってくれただけでしょ』

「違ェ!…テメェも状況分かってんだろ。確かにアイツらが逃げる時間は稼げたが、所詮水面だけ凍らせたに過ぎねェ。地下は水で圧迫され続けてんだよ」


このまま圧迫が続けば、そこら中の壁の亀裂から瓦礫もろともウォータージェットにみたいに飛び出して、最悪、地下街全体が崩落する。

そう冷静に分析する爆豪の説明を聞いて、梓はあわあわと慌て出した。


『エッそんなにやばい状況なの!?』

「わかってて残ったんじゃねェんかテメーは!!」

『いや、なんとなく、水溢れ出るかなとは思ってたけど、地下街崩落までは思ってなかったよ!?』

「もちろんそうなることは俺も予測してた」

『アッそうなんだ!予想できてなかったの私だけか!』


ど、どうしよ、と取り敢えず刀を抜いてみた梓を他所に、轟と爆豪の言い争いのような話し合いが続く。


「抜かせよコラ!」

「なのにお前はここに残った。もう考えてんだろ、脱出方法」

「…よーく聞けよ、半分野郎。……梓もよく聞け!」

『アッはい!』

「今から俺が、氷に爆破で穴を開け、意図的に間欠泉を作る。そうすると、勢いよく水が噴き出るわけだが、そこで梓、テメーの出番だ」

『??』

「コンマ何秒とない一瞬だが、噴き出た水を一本の水柱のように集約しろ」

『……う、うん』

「反射神経お化けのテメーにしか出来ねえ技だ。いいな?んで、その表面を半分野郎、テメーが凍らす」

『その噴き出した水柱の上にみんなで乗って上昇するってこと?』

「そういうことだ。俺が上に乗って爆破を続け、一気に上の階に行くって寸法だ」

「脱出方法はわかった。だが、水を噴出させる穴を、お前の爆破でピンポイントで開けられんのか」

「出来る!!」

『かっちゃんの作戦は分かったけど、いくらなんでもそれは難しくない?私の斬撃の突きの方が確率高そう…』

「テメーは雷混っちまうだろうが!!」

『ぐっ』


ど正論で怒鳴られ、たじろいでいれば、「みんな!」と聞き覚えのある声が聞こえ梓は顔を輝かせた。


『いずっくん!』

「梓ちゃん!大丈夫?怖くなかった!?」

『怖くないよ!あっ、かっちゃん!いずっくんに開けてもらえば、』

「何しにきやがったこのクソナードがァ!!」

『ひい!』

「こ、氷の穴は僕が開けるよ」

『え、いずっくんもう作戦知ってるの?なんで?』

「なんとなく、予想はついたよ。氷の穴を開けるのは、僕が適任だと思う」

「てンめ…ッ」

「轟くんは氷結の準備を、梓ちゃんは水操作の準備をお願い」

「『わかった』」

「かっちゃんは天井への爆破準備を!」


緑谷の指示に対し「俺に命令すんじゃねェ!」と爆豪が声を荒げる中、梓と轟は背中合わせに立つと大きく深呼吸をした。


『「ふぅ…」』


誰かが失敗したら、怪我じゃ済まない。最悪死ぬかもしれない。
それは、言わなくても4人ともわかっていた。
チリチリと肌を刺す緊張感の中、轟は背中合わせに梓の体温を感じ、安心する。

やれる、と無条件で思わせてくれる存在。


「東堂、息合わせて行くぞ…」

『うん、轟くんとなら、一発勝負でもちゃんと合わせられる気がするっ』

「そだな」

「何駄弁ってんだ能天気コンビ!」

「時間がない、行くぞ!」


テメェが仕切んな!という怒鳴り声を背に、ドガァンッ!と緑谷のフルカウル、5%SMASHが炸裂した。


(今だ!)


緑谷が水流に巻き込まれる寸前、梓が飛び込むと一気に水流をズオッと真上にコントロールし、同じタイミングで轟が水面を凍らせる。


『いずっ、くん…!』

「梓ちゃん…!」


激しい水流の中、緑谷の腕をギュッと掴んだ梓の腰のベルトを轟が掴み、地盤が一気に上昇した。


「死ねェ!!」


ードガァァンッ!


爆豪の爆破で天井が開ける。
続いて迫り来る次の階の天井に「次が来る!」と轟が声を上げ、爆豪が2発目を繰り出すが、


(壊れてない!)


鉄筋コンクリートの頑丈な床を破壊する程の火力を、この短い間に出力することは流石の爆豪も難しく、焦げ目のついた天井目掛けて緑谷がフルカウルでドガァァン!と蹴りを入れる。


「緑谷!」『いずっくん!』


瓦礫もろとも落下してきた緑谷を間一髪、轟が助けたのを見届けると、
梓は目をギラつかせ、真上を見上げたままシャンッ!と抜刀し、その目にも止まらぬスピードで刀に嵐を纏わせ、


『嵐撃突きッ!!』

「だらァァァ!!!」


梓の渾身の突きと、爆豪の連続爆破で視界がブラックアウトする。
三つ目の天井が破壊され、天井が崩壊し、大量の瓦礫を浴びながらも水圧で上に押し上げられ、


(ヤバイ、瓦礫が、)


三つ目の天井を突破したところで目の前に瓦礫が迫る中、梓の視界は煙と水で閉ざされた。

気を失う寸前、最後に聞こえたのは爆豪の声。
強く引っ張られる感覚に体を預けたまま、梓は気絶した。





身体が重い。
何かにのし掛かられているような感覚がして、息苦しくて、梓は『ぷはっ』と息をするように目を覚ました。


『はぁ、はぁ…』


真っ暗だ。どうやら地下水は収まっており、無事上階に着いたところで気絶したらしい。
三つ目の天井を破壊したところからあまり覚えていないので、状況を確認するように辺りを見渡そうとしたところで、自分を守るように誰かが覆いかぶさっていることに気付いた。


『…か、かっちゃん……?』

「………」


色素の薄い金髪が頬に当たり、いつもギロリとこちらを睨む赤目の三白眼はきつく閉じられている。
爆豪が、自分を庇って瓦礫の直撃を受け、気を失っている。

それを理解した瞬間、


『ッかっちゃん!!』


梓は泣き叫ぶように彼の名を呼んだ。


『かっちゃん!かっちゃんってば!!』


何度呼びかけても爆豪は答えない。
脈はあるから死んではいないようだが、暗闇に慣れてきた目で彼の足が瓦礫に挟まり怪我をしていることに気づき、梓はどうしよう、と泣きそうに顔を歪めるとパニックになった。


『かっちゃんってばぁ!起きて!』

「アッ!梓ちゃん!!」

「東堂!!無事か!?」


無事だったらしい2人が心配そうな顔でこちらに向かってくる中、『私は大丈夫だけどかっちゃんが!!』と梓が半泣きになっていると、


「耳元でかっちゃんかっちゃんうるっせェんだテメーは!!心臓に悪い声出すなや!!」

『「かっちゃん!!」』

「だからうるせェ!!」


怒鳴りつつも、うう〜良かったよぉ!ごめんね!私の事庇ってくれたんだよね!と何故かメソメソし始めた梓に爆豪はギョッとした。
どうしたものか、とオロオロしていれば、少し不機嫌そうな轟に手を差し伸べられ、反射的に眉間にシワがよった。


「爆豪、俺と緑谷に掴まれ、ここから脱出する。東堂、は、1人で立てるか?」

『ううっ、立てる…』

「この程度の傷どうってことねェわ」

「無理すんな」

「お前らの世話にはなんねェ」

「かっちゃん!時間がないから、ねぇ、つかまって」

「嫌だね!」

「かっちゃん!」


何がなんでも2人の助けはいらないと豪語する爆豪に当の2人は困り切って梓を見るが、いつも嗜める彼女は爆豪の足の怪我に打ちのめされているようで。


『かっちゃんごめん私のせいだ〜…』


半泣き状態で腕にしがみついているものだから、使えない。
そんな彼女に「テメェのせいじゃねェっつってんだろ!」と怒鳴りつつも無理やり立ち上がった爆豪は痛みを堪えた顔をしていて。


「無理でも無茶でもやるんだよ。こんなことで助けを借りるような奴が、No.1ヒーローになれっか、」

「ふらついてるぞ」

『か、かっちゃん!足!血!怪我!駄目だよ歩いちゃ!』

「そう!梓ちゃんの言う通り!」

「足が縺れただけだ…!」

「かっちゃん!掴まって!」


緑谷が強引に爆豪の腕を取ったのを見て、梓も腕を掴もうと一歩踏み出すが、


『わ、』

「東堂!?」


ふらつき、瓦礫の上に倒れそうになったところを轟に抱きとめられ、それに気づいた爆豪と緑谷はサッと顔を青くした。


「梓!?」

「轟くん、梓ちゃんどうしたの!?」

「倒れかけた。東堂、もしかしてまた頭打ったのか?」

「「また??」」


不審な目を向けてくる幼馴染モンペ2人に「ダークシャドウが暴走した時に俺を庇ってくれたんだ」と事情を話しつつ、轟は大丈夫を連呼する梓を無理やりヨイショ、と背負う。


「わりい緑谷、俺はコイツを背負うから、爆豪を頼む」

「っ、俺は頼まれねェって言ってんだろが!つか離せデク!!」

「い、やだ!僕だって助けたい!非常用電源を復旧させたの、かっちゃんでしょ!?それって、みんなが避難しやすくなるように、」

「ちげェ!クソ救助者を手早く見つけるためだ!」

「じゃあどうして最後まで残ったの。轟くんを、梓ちゃんを助けようと思ったからでしょ?」

「借りは作らねェ」

「僕は!かっちゃんに助けられた!」

「ああ、俺も助けられた。東堂も、助けられたから半泣きなんだろ」

『うん、私の事助けたせいで、かっちゃん怪我しちゃった…、いずっくん、お願い、かっちゃんを上まで連れてって』

「うん!梓ちゃんもこう言ってる事だし、今だけでいいからやらせて」


助けを借りることに対し頑なに嫌がる爆豪を口説き落とす最後の手段。
緑谷がピッと指さした先には、今にも溢れ出しそうな涙を必死に堪える梓が轟に背負われており、「よしよーし」と何故かあやされている。


「梓ちゃん助けたのはかっちゃんだけど、今泣きそうになってるのもかっちゃんのせいだよ!?」

「ぐっ」

(もう一押しだ!)

「梓ちゃん、かっちゃんが怪我してるのに無理してるんだけど、どうしよう!?」

『かっちゃんいずっくんの肩借りて!その足じゃ上まで上がれないよ!』

「だそうだよ!かっちゃん!」


幼馴染3人の茶番劇に轟が吹き出しそうになる中、やっと折れた爆豪の「杖になれや」という最大譲歩で、やっと緑谷の手を借りて脱出するのだった。


脱出後、
半泣きの梓に相澤がギョッとしたのは言うまでもない。


(…!?……誰だ、泣かせたやつ)

(え!?ま、まだ泣いてないです!梓ちゃん庇ってかっちゃんが怪我しちゃって、それに負い目を感じてしまったみたいで…!目ェ怖!?)


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