07
継承した個性は嵐。

風と水と雷を操れるもののようだが、梓は扱いに戸惑っていた。


『九条さーーん、周りの風は動かせるけど、ちっさな竜巻で頭痛くなっちゃう』

「ほう」

『雷は、体内で精製して放出できるしコントロールもできるけど、コスパ悪い』

「ほうほう」


ここ数ヶ月、毎日のように鍛錬につきあっている九条は、梓の成長記録ノートにメモを取っている。


『水はね、少し放出できるのと、触れている水ならコントロールできる!でもちょっと放出しただけでくらくらしちゃう。なんでだろう』

「多分、脱水症状だろ。大方、お嬢の体内の水分使って放出してんじゃねェか?にしても、なかなか使い方が難しいな。ただ、お嬢、今は発現したばっかりで身体が慣れてねぇ。鍛錬していけば使いこなせるようになるさ」

『うーん、でも時間かかりそうだ』

「ま、わかってっとは思うけどよ、自分の力を調整できずに自分が使い物にならねーなんてことには気をつけろよ?ちゃんと操れるまでは、ムリは禁物だ」

『わかってるよう。風使いすぎて頭痛くなって動けないとか、水使いすぎて脱水症状とか、足手まといの何者でもないもんね!大丈夫、私は今までに培った剣術があるから、継承した個性と、自力の強さを複合させるよ』

「いい心がけだ!じゃ、次行くぞ!」


自分の体を壊せば自分は足手まといになる。それは幼い頃からの父からの教えだった。
だからこそ、無理はせずできることからコツコツと自分のものにしていった。


『刀に、風を纏わせる…!』

「切れ味ハンパないな。水と雷も纏わせられるか?」

『うん、できる!』

「その状態で全身に風をまとい、動きを早めることは?」

『んーー、周りの風をコントロールしてみてるけど、体の動きに連動させるのはむずかしいよう』

「そうか、ダメか」


嵐と伝承されていることを鑑みるに、使いこなせるようになれば相当な武器になるのだろうが今の梓は全体の5%ほどしか使えていない。
こりゃ長期的だな、と九条はノートを閉じた。


「お嬢、一旦休憩だ」

『はぁい!』

「夕飯食ったらまたするぞ、夕飯までは勉強してこい」

『九条さん、お母さんみたい』


面倒そうな顔をする梓の頬をむぎゅっと掴めばすぐにごめんなさいと聞こえてきた。
謝るなら最初からすんじゃねぇと思いつつ、梓の背中を押す。


「ほら、雄英にいきてーんだろ?勉強も大事だろ」

『べつに私が行きたいわけじゃないよ。ヒーロー科ならどこでもいいし。でも、かっちゃんもいずっくんも一緒に受けようっていうんだもん』

「お嬢は、それを了承したんだろ?じゃあ頑張るしかねーだろ」



幸いこの子の学力は低くはない。
個性は使いこなせていないが、そもそもの戦闘能力が高いので実技も大丈夫だろう。多分。

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