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お味はいかが?


「原田・・・その、飲みに行かないか?」


先月から頻繁にこの文句を耳にしている原田は、またかよ、とも、仕方ねぇな、とも思いつつ努めていつもの軽い感じを装って答える。


「おう、行こうぜ」


別に飲むことは嫌いじゃない、むしろ大好き、いや、愛してる。
またかよ、とか、仕方ねぇなとも思いつつ今夜も安くて旨い酒にありつけると夜の街を歩く足取りは軽い。
最近斎藤と二人でよく飲みに行く。ふと思い立って数えると規則正しく中二日を開けて三日に一度飲んでいた。
それも決まった店で。
何故その店が使われているのか充分過ぎるくらいわかる、そもそもそれを知ってしまったから沖田でも永倉でも藤堂でも土方でもなく原田がこうして誘われているのだけれど。
先々月たまたまこれから行く飲み屋に行ったのが始まりだった。
そこに斎藤も嫌々ついて来たのだけれども、二ヶ月も経つと嫌々・・・でもないけれどついていくのは原田になっているのだから不思議だ。


「ふぅ・・・」
「おいおい、なんだよ深呼吸なんてしちまってよ」
「黙れ・・・入るぞ」
「へぇへぇ。いつでもどうぞ?」


辿り着いた行き着けの飲み屋の暖簾を掬い上げ、引き戸を開ける。


「いらっしゃ・・・斎藤さんっ!あれ、もう二日経ちました?」
「あぁ。なまえ、かわりないか?」
「この通りっ。あ、どうぞこっち座ってくださいね」


先ほど原田が捻出した三日置きの法則は、店内でくるくる回りながら笑顔を振りまく看板娘のなまえはとっくにわかっていたようで。
ついでに原田もいるのだけれどなまえの目は注文を聞く間も原田に向きやしない。
別にいいのだ、愛する酒が飲める、それだけでいい。


「斎藤さんっ」
「ん?」
「これ、おまけですっ」


注文したものが全て卓上に並び、ちびちび飲んでいた酒の脇に置かれた小鉢は斎藤がこの店で好物と豪語したおから。
もともと豆腐が好きだから別におかしくもないのだけれど、実はこのおからがなまえの手作りだったと知った時には原田は苦笑したものだ。
おまけと随分甘ったるく告げた口元を追うように斎藤の目線はなまえの動きに合わせてあっちへこっちへ。
おい、俺のことは無視かと原田はため息を吐く。


「で、斎藤。おからがなんか踏んでるが?」
「ん?あぁ・・・」


小鉢の下敷きになりようにさり気なく挟まれていた紙切れを眺めた斎藤は不敵に笑う。
はっはっは、今日の俺はついてるぜ・・・とは、原田の脳内での印象である。


「原田、一人で帰れるか?」
「見えねぇかもしれねぇが、一応お前より歳は上だぞ。ガキ扱いすんなって」
「俺は帰りが遅くなる故・・・」
「へぇへぇ。ってかその辺でもう一杯引っ掛けていくぜ俺も」


原田は酒を引っ掛ける。斎藤は愛する女を引っ掛ける。
中二日で三日に一度の恒例行事みたいなものだ。
普段が優秀な斎藤だからか、たとえ門限を遅れても土方の拳という名の厳重注意はない。
それならあれこれ足される掟も「藤堂専用、永倉専用」とか的を絞って掲げればいいのに。


「・・・あの男」
「ん?どうした?」
「なまえに鼻を伸ばしている」
「仕方ねぇだろ、看板娘ってそういうもんだって」
「・・・」
「お、おいっ、斎藤!」


急に立ち上がった斎藤は、ズカズカとなまえと鼻の下の伸びきった禿頭の間に割って入る。


「な、なんや急にっ」
「不愉快だ」
「はぁ?」
「下劣に鼻の下を伸ばすなら、もうこの店に来るな」
「な、何わけわからんことゆうて、ん、ね・・・」
「わかったな?」
「・・・は、はい」


鼻の下伸ばしに来てるのはお前も同じだろう。
青褪めた禿頭が慌てて店の外に出て行くのを見送って、原田もそろそろ別で一人酒でも始めるかと斎藤に会計を頼んで夜の街に消えていった。

鴨川沿いをゆっくり歩く。
早足で歩く気もないが、こんな風に腰に手を回されていては早足にもなれないだろう。
斎藤が来る日は決まってなまえは早上がりをする。
店の主人が気を遣ってというのもあるけど、先ほど禿頭を追い返したのが新選組の斎藤一であることを考えると、びくびくするよりはさっさとなまえを差し出すほうが命のためだと。


「斎藤さんはお強いですね」
「いや、まだまだ鍛錬が足りない」
「私も強くなって、あの禿頭に『触るなアホっ』ぐらい言ってやりたいですよ」
「言葉遣いに気をつけろ、なまえ」
「はーい」


色恋沙汰にあまり縁がなかった斎藤だけれども、がさつな女はよろしくないとは思っていた。かといって吉原やら島原に無理矢理引っ張られていって学んだのは女らしい女というのもよろしくないということ。
その点、なまえはまさに運命のような女だった。
偶に本音が駄々漏れするのだけれど、客に振りまく心からの笑顔だったり、走り回って額の汗を拭う姿だったり、一言一言はっきり紡がれる裏表のない言葉だったり、何より滲み出る愛らしさに初来店で斎藤はがっちりと心を掴まれてしまったのである。
それから通い詰めて、並み居る恋敵を言葉という刃で斬りまくり、夜の空気に包まれた鴨川をなまえの細い腰を抱いて歩く関係にまで持ってきたのである、あの斎藤が。
これまで色恋沙汰に縁がなかったと言った、そしてそういう人種が恋に目覚めた時・・・人は何かが変わるらしい。


「それに、聞き捨てならんな」
「なにがです?」
「触るな・・・とは、触られたということか?」
「え、あー・・・ちょ、ちょっぴし」
「どこを?」
「お、お尻?・・・ひゃっ」


腰を抱かれるのもくすぐったいというのに、なぞって下りてきた手が客にも好評なお尻を撫でる。
思わず足を止めたなまえを、どうかしたかとどこ吹く風で斎藤が覗き込んだ。


「なまえ、他に触られたところはないだろうな?」
「な、ないですないです!!」
「そうか・・・」


こんな往来で・・・といっても鴨川沿いというのはいつの時代も男女というのがあちこちに潜んでいるのだけれど、あっちもこっちも触られていたらさすがにまずい。
まずいというのになかなか腰に戻ってくれない手はゆるゆるとお尻の周りを徘徊する。


「あっ、もう、斎藤さんっ」
「相手に好きにさせないためには己の防御も必要だ、戦いとはそういうもの」
「は、はい?」
「どうした、防いでみろ」


何か違う気もするけれど、防がないことには斎藤は止める気がないらしい。
慌ててお尻を押えるけれどその手は簡単にどけられてしまう。
今度は斎藤の手を押えてしまおうと握るけれど、かえってその手を取られてしまい・・・


「きゃっ」


体は土手に押さえつけられる。
両の手を頭上で縫いつけるように斎藤の片手に囚われて、斎藤が覆いかぶさって、夜の黒に斎藤の着流しが溶け込んで見えた。
真っ暗な世界に押しつぶされて、なまえは逃げられない。


「勝負、あったな」
「ま、負けましたっ、負けましたから」
「真の戦では、これであんたは殺される」
「そ、そんな物騒なこと言わないでっ」
「なまえ・・・」


揺れる瞳に斎藤が映る。もう見詰め合うことしかなまえにはできない。
とっくの昔に、斎藤には負けているし、吸い込まれてしまっているのだから。


「ひゃっ、さいと、さっ」
「なまえ」
「や、こん、な・・・ぁ・・・外で・・・あんっ」


首筋を這う舌がチロチロとなまえの羞恥を刺激する。
噛み付かれて無理矢理崩された衿元に沿って散る赤い華。
斎藤の空いた手が、お尻を撫でている手がいよいよ着物の裾を割ろうとした時、なまえは息を飲んで思った。
そして、その浮かんだとおりの言葉が耳元で囁かれる。


「俺が喰い殺してやろう」
「んっ・・・あ、」


あぁ、でもそれもいいかもと思ってしまうのだから、なまえも女々しい女じゃいられないわけだ。
飲み屋で斎藤の目に追われていた口元がやっと塞がれて、今日店で出していた魚がまな板の上で捌かれる光景を思い出す。
塩もなにもないけれど、食べるのなら食べてくれ。
土手で上がる息に、熱に、一頻り揺さぶられて啼きながら聞いてやるんだ。




お味はいかが?




「残しちゃ、あっ・・・駄目ですよ?」
「承知、したっ」
「ん・・・あぁっ」



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アトガキ

PASS付けないで挑みましたが・・・大丈夫ですか!?皆様、生きてらっしゃいますか!?
そして・・・
斎藤しゃーーーーーーーーーん!!どこ行っちゃったのーーーーーーー!!
ほんとすみません、すみません、すみませんっ!!!斎藤野獣しゃんということでリク頂いたのですが、私、野獣、書けない☆キラッ
いや、あっはんうっふんバッチコイなんですけど、女体を前に舌なめずりな斎藤しゃんはどうやらあかんようですっ← これ斎藤しゃんですか!?斎藤しゃんなんですか!?斎藤青○しゃんですか!?
ていうかヒロインちゃーーーーんっ!!あなたも帰ってきてーーーーー!!これが斎藤しゃんでしたらそりゃ残さず完食お願い申し上げたいところですがねっ。お味はいかが?・・・旨い。斎藤しゃん、旨い入りましたーーーー!!食べて食べて食べてぇぇ!!
・・・すみません、ついった恒例の荒ぶり癖が。
リク内容をおさらいしますと、町娘ヒロインちゃんのことが好き過ぎる斎藤野獣しゃんとのことでした。最重要ポインツであった好き過ぎるが・・・つ、伝わるでしょうかこの文章で;;;
この斎藤しゃんが紛れもない本物の斎藤しゃんだとすると、私の中で彼の「好き過ぎる」行動はベタベタじゃなくて勝手に目で追って勝手に舞い上がって勝手に「あの男、殺す・・・」とかそういうイメージがあるのです。そのイメージで書いてみたのですが・・・どうでしょうか??と、丸投げしたところで・・・

あおいしゃーんっ、改めましてリクエストご参加ありがとうございました!!
淫らな格好で斎藤野獣しゃんを待っていてくれたのに、こんな感じで仕上がってしまいました、ごめんなさい!!あおいしゃんのように斎藤しゃんが野獣になってくれない・・・調教の仕方間違えたかな??←
私なりの野獣要素その@「喰い殺す」、そのA「お外でフィーバー」以上。これだけしか、私には、私にはぁぁぁぁ(やかましい)
こんな後悔ばかりですが、あおいしゃんに三万打を踏んでもらえて本当に嬉しいですっ、そして管理人同士あーんなことやこーんなことを話しながら斎藤しゃんを愛でながら愛を深められること、この出会いに感謝しておりますっ!!
今回は私の力不足であれな感じですが、いつか真の斎藤野獣しゃんを書けるように調教頑張るのでこれからもよろしくお願いします!!本当にありがとうございましたーごめんなさいー←





MATERIAL: SUBTLE PATTERNS / egg*station

AZURE