05険しい顔で突然入室して来た檜佐木君に驚いたのは私だけでは無いようで、目を見開いた恋次君までがそちらを凝視していた。 檜佐木君の様子が、何処か尋常では無かったから……。 「っ……檜、佐木君?あ!違っ、あの檜佐木副隊」 「んなもん、どっちでも良いんだよ!」 慌てて呼称を間違えた私に、そんな事はどうでも良いと腕を取ると、そっと頬を包むように涙の痕を辿った。 然して、 「良いよな?」 「っ……」 鋭い視線を何故か恋次君に向けた檜佐木君が、返事も待たずに私の腕を引いた。 どう、して…… どうして檜佐木君が私を連れ出すのか。 どうして恋次君が、そんな顔で私を見るのか。 立ち上る霊圧は、まるで抑える術を忘れてしまったかのように、震える躯を其のままに曝して……。 恋次君……? ぐ、と言い淀んだその表情は、本当に辛そうに見えて胸を締め付けて来る。 けれど、 「恋、っ………」 次君と、思わず掛けそうになった声は、躊躇って止めた。 私は、本当の終わりを受け入れなければならないんだと、もう何度言い聞かせれば理解するのかと口唇を噛み締めた。 あの日、伸ばした手を払われる辛さを知った。 私の心配等無用の物だと、何度…… 「………申し訳有りません、が、後程戻りましたら……、お話をお伺いします」 莫迦だ…… もういい加減にしろと口唇を噛み締めて、檜佐木君に連れられるまま、どんどんと遠ざかる霊圧からも目を逸らした。 其れが正解だと、自分に言い聞かせた。 「紗也……」 掠れる声で私の名前を呼んだ、小さな小さな恋次君の声には…… 耳を塞いだ――… こうして、辛いと逃げてばかりの私の選択が、 例え間違いだったとしても…… もう、其れで良い。 「紗也……っ」 其の想いは何処か、悲鳴にも似て…… |