きみがすき | ナノ






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あんなに入隊を拒んで来た私が、こうして席次を与えられる場所に在るのは


恋次君のせい


と言っても過言ではない――…




「紗也さんっ!!」


学院中に響き渡るような大声で私を呼ぶのは、此処ではもう知らない人は居ない

私の… その、こ 恋人…

である恋次君に他ならず。

終鈴と共にズカズカと入って来て、もう終わりっすよねってニカッと笑う。

生徒達にも絶大なる人気を誇る『阿散井恋次』に、否やを告げるような猛者は当然居らず……。
どうぞどうぞとばかりに送り出される。

んじゃ遠慮なくとサッと姫抱きにされると、あっと言う間もなく瞬歩で連れ去られた。


流石…って、そうじゃなくて!


「授業が終わってからって言ってるのにっ」


恋次君の腕の中(降ろして貰えないまま腰を下ろされてしまって、横抱きのままなのだ)から顔を見上げる。


「それじゃ逆効果だっつってんのに…」

「え?」

「あー…いや、ちゃんと終わってから行ったじゃないっすか」

「だから。もっとしっかり終わって、皆が帰っ」

「それじゃあ意味無いっすから」

「は?」


意味が解らない……。


「その意味が解る迄は、今のままっすから」


目を見開いた私に、読んで無いっすよって恋次君に意地悪く言われて、またまた私は悔しくなる。

でも本当は、恋次君が汲み取ってくれるのが少し擽ったくて、嬉しい……。

だけどやっぱり、ほんのちょっと悔しいから


「恋次君…」


名前を読んで、引き寄せた頬にキスをした……。



そうしたら、少しは動揺してくれるかなって思ったのに、恋次君は何だか無表情…で……。


恐いっ…んですけど!


「ああ、の、恋次く……」

「紗也さん…」


問い掛けようとしたら、低く、低く返されて、身体が強張った。


「解ってるんっすよね」


すみません……。
さっぱり解りません。


チラッと視線を向けると眉間に深い皺が刻まれていて……。


あ、また読まれ…


「だから、読んでませんって」


ぅう゛

それから恋次君は無言で立ち上がると、狼狽える私を抱えたまま瞬歩で自室へ向かい


「今日は、覚悟して下さいね」


と、相変わらずの無表情で宣った。



その日の恋次君は本っ当に容赦無くて、今までは加減されていたのかと身を以て知ることになった。


何度も何度も堕とされる。

刻み込まれるように。

もうまともな思考なんて残らないくらい、ただ、恋次君の熱だけを与えられるままに受け留めて――…



「紗也さん… 憶えてますか」


もう何度目なのか。
激る熱を私の胎に吐き出した恋次君が、両手で包み込むように頬に触れてそう訊いてきた。


何を……?


って訊きたいのに、まだ繋がったままの恋次君が私の思考を遮るから、上手く言葉に出来ないまま目で問い掛けた。


「約束…。俺が副隊長になれたら…ってやつ」


傍に居て、下さい――…


ふっと笑いながら、言い終わるか終わらないかの内にまた動き出すから。

ちゃんと憶えてるよって、言葉には出来なかった……。


でも、恋次君には伝わってるはず。


だって私の心なんて、簡単に読めるんでしょう?






*


「紗也さんっ!」


ガラッと教室の扉を開け放って入って来たのは恋次君で、今回は授業も終わっていない。

そんな二週間前に言った事がまるで生かされていない現状に目眩がした。


「恋次くっ…」

「「「おめでとうございます!!阿散井副隊長!!!!」」」


…………は?


驚いて固まる私を取り残したまま


「おう、ありがとな」


ニカッと笑って、お前ら情報速ぇななんて談笑する恋次君。


左腕には副官章…


‘六’の文字はそう言う事だ――


じわじわと浸透するように喜びが湧いてくる。
恋次君は、また一歩、近付いたんだ……。


「おめでとう…」


聴こえるか聴こえないかの小さな呟き……。

それをやっぱり拾ってくれた恋次君が、振り向いて急に真面目な顔になって姿勢を正すから、今まで煩かった教室も、何事かと集まった廊下の野次馬までもがシンとなる。



「本日を以て、六番隊副隊長に着任しました。約束通り、一緒に来て下さい。
……紗也さん」


差し出されたのは任官書。


《四宮紗也 右の者を六番隊第三席に任命する》


見上げた瞬間、私の視界は黒で埋め尽くされてしまった。

そこが恋次君の腕の中だって直ぐに気付いて身を捩ってみても、ここが教室だとか生徒達が居るとか、そんな事、恋次君には通用する訳が無くて
されるがままの私を抱き込んだまま言い放つ。


「返事は先週聞きました。却下も待ったも無しっす」


ウワッと盛り上がる音の洪水の中


や ら れ た


そう思った……。








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