きみがすき | ナノ






03




コンコンコン とノックを響かせて、執務室の前で入室の許可を待てば、


………えっと、な、に?


私に気付いた席官の集団が、其れは其れは嬉しそうに何故だか顔を綻ばせてやって来た。


「あ、の……?」


何か…、と問う間も無く、どうぞどうぞと案内された其所は檜佐木君の副官室で。


「直ぐにお茶をお持ちしますね」

「えっ、あの、ですから私は書類を渡しに来ただけ、」

「大丈夫です。直ぐに連絡を取りますから」

「いえっ そうじゃな……」

「檜佐木副隊長が戻られるまでゆっくりしてらして下さいっ」

「待っ、」

「ではっ」

「………………」


物凄くイイ笑顔で微笑まれてソファに沈まされ、退席して行く席官の彼を唖然と見送った。


あまり隊外に出た事は無かったけれど……


護廷十三隊という組織は、人の話を聞かない集団なのかと呆れた。






*


「………………」

「えっと、何か……。忙しい所に本当にごめんね」


もう黙って帰る訳にも行かなくなって、大人しく檜佐木君を待つこと四半刻。

少しザワ付いた扉の向こうに現れたのは檜佐木君の霊圧で、


『彼女だぁっ!?……なんて言って来る余計な女を部屋に入れんなってあれだけ言っ……た…………』

『……本当にごめんなさい』

『………………』


バン と荒々しく、不機嫌さを隠しもせずに扉を開けた檜佐木君に謝れば、ピシッと音を立てたままに固まってくれた。


『檜佐木、君……?』

『お…、前、ら……』

『『『『はいっ』』』』

『四宮なら……』

『『『『はいっ』』』』


四宮って先に言いやがれーーっ!!!


『『『『すみませーんっ!!!』』』』



怒鳴り付ける檜佐木君を其れは其れは愉しげに見遣って、散り散りに仕事へと戻って行く彼等は本当に檜佐木君を慕って居るんだろうと苦笑する。


「えっと、大丈夫……?」

「………………」


どうやら私だとは知らされて居なかったらしい、檜佐木君はなかなか復活は難しいようだけれど……。


「…………からな」

「檜佐木君……?」

「彼女だの何だの、変な女なんて、居ねぇから……」

「っ………」


アイツら本当、後でシメる。


ガクリ と項垂れたまま、苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。








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