きみがすき | ナノ






05




傍に居て……



言葉にしてしまった想いは本心で。

自分の想いに手一杯だった私は、結局、手を伸ばしてしまった。愚かな私は自分の想いで手一杯だった。-->





『……四宮?』

『っ……』


戸惑ったような、少しだけ困ったような。
そんな声が頭上から聴こえて、一瞬で頭が冷えていた。


莫迦っ……


何て事をと歯噛みして、咄嗟に寄せていた胸に手を付いて距離を取った。


『ごめんっ なさい。今のは……』


莫迦だ莫迦だと思って居たけれど、此の上まだ私は間違おうと言うのか。
檜佐木君の優しさに縋り付いて、迷惑ばかり、掛けて……。


『違っ……』

『……今のは?』



お前の、本心だろ?



『っ……』


違うからと、続けるはずの言葉を遮られて、思わず振り仰いだ視線の先に在ったのは、逸らされる事のない強い眼差し。

取ったはずの距離を戻される。

優しい、躯中に呼応する檜佐木君の声が、私を包んでくれた……。





「四宮?」

「っあ……」


急に黙り込んだからだろう。

どうした?と、直ぐに心配そうに問われて微笑が溢れた。


誰でも良かった訳じゃない。



誰も……



檜佐木君、だからだ。


「やっぱり、檜佐木君は優しいよ」


絶対にと微笑む私に、だから違うっつってんだろと子供みたいに不貞腐れる檜佐木君が、何だか可愛いと思ってしまっては胸が痛くなる。


「…………」


考えるな。
忘れてしまえ。



ちょっとだけ、

恋次君に似ている


なんて――…









終わらない想いに揺さぶられるのは、私が、弱いからだ。








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