きみがすき | ナノ






04




柔らかな衝撃が全身を包んで、ゆっくりと辿られる手のひらが心地好くて目を閉じた。

今は泣いて良いんだと、許された気がした……。








檜佐木君の腕の中で目覚めたのは、二度目の事で。


「はよ……」

「……お、はよう」


寝起きで掠れてしまった声が恥ずかしい。

そして何より、泣き疲れて眠ってしまった事が恥ずかしくて目を逸らした私を、優しく微笑んで引き寄せる。其の表情に、また寝ずに抱き締めていてくれた事が解って、ごめんなさいと伝えようとした口唇を塞がれた。


「寝ちまったから、俺が勝手に連れて来ただけだ」


だから、気にすんな……


夏ったって、あんな所で寝たら風邪引くだろと苦笑する。


「っ、」

「違うからな」


此の人は、一体何処まで優しいのかと、申し訳無さに俯いた私の額を小突く。


「俺はそんな善人じゃねぇんだよ……」


そんな事を言って、ほんの少しだけ苦い顔をする。


やっぱり……


そんな所も、檜佐木君は優しいと思った……。





「其れにしても……」


少しだけ震えたような声に目を向ければ、くっと笑いを堪えたような檜佐木君が居て首を傾げた。


「何?」

「マジで何しても起きねぇのな」


抱き抱えても、瞬歩しても。


布団に降ろそうが、隣に潜り込んで抱き締めても……って、彼是羅列されるだけ居たたまれなさが弥増すだけで……


「……本当、すみません……」

「襲われても知らねぇ……」

「そんな何処でも寝ないからっ」

「…………」


此れでも実は、神経質な方なんだ。


「今までこんな事は一度も無いし、何か檜佐木君の霊圧は眠くなると言うか……」

「………俺のせいかよ」

「だから、すみません……」


檜佐木君のせい、では無くて、檜佐木君のお陰で。

久しぶりにぐっすりと眠れたみたいだ。


「ありがとう」


一緒に居てくれて。


ずっと、一人で眠るのが怖かった。

目が覚めても、夢の中でも、私は一人なんだと思い知る、

あの、瞬間が……











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