きみがすき | ナノ






02




「……此のっ 莫迦っ!!!」


キ――…ン と耳鳴りがする程に怒鳴られて、声も出せない処か涙も一瞬で引っ込んだ。


泣いていた理由迄は話せないものの。


「説明しろって言うからしたのに……」

「何か言ったか」

「いいえ、別に」


泣いて、状況が判らなかったなりに事の経緯を説明したら、話せば話す程、質問に答えれば答える程、檜佐木君の機嫌が急降下して行った。


『親切で……』

『な訳無ぇだろ』

『心配してくれたのかと思っ……』

『んな訳無ぇだろっ』

『気を遣っ……』

『…………っの、』


莫迦かっ!!!
俺が行かなかったらどうするつもりだったんだよっ!!!


って怒られても……。


そう思ったんだからしょうがないじゃないと、つい口にしてしまえば。


「お、前は……」


ふるふると怒りに震えて居る檜佐木君の第二声が聴こえて、怖くて身構えるように目を瞑ってしまった……。


「…………檜佐木君?」


想像した怒声は聴こえず、そろりと開けた瞳に映ったのは、憮然とした顔で腕組みをした檜佐木君だった。

ふ――…っと、まるで怒気を逃がすように息を吐き、窺うように見詰める私に苦笑する。


「本当は俺が云う事じゃ無ぇんだけどよ……」


ぐしゃぐしゃと頭を撫でながら、でもやっぱりと前置いて


「頼むから、少しは警戒心を持ってくれ」


と真顔で言った。

持ってるよって言いたかったけれど、また檜佐木君の怒りが再燃しそうだなと口を噤んだ。




瞬歩で連れて来られた瀞霊廷からは少し離れた此処は、泣いていた私への気遣いが感じ取れる、人目の付かない緑の多い場所だった。


「ありがとう……」


素直に嬉しいと思えた。

私を探しに来てくれて。
私を見付けてくれて。

忙しいのに、檜佐木君も大変なのに……。


思えば、ずっと傍で支えて居てくれたのは檜佐木君だった。

震えそうになる躯を保って居られたのも檜佐木君のお陰で、今もそう……。

さっきまでの焦燥も慟哭も全てが、凪いで行く気がした……。









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