きみがすき | ナノ






02




あの日……

再び空になった見るも無惨に破壊された隊舎牢を見て


やっぱり……


皮肉でも何でも無い。
ただ、そう思った。






恋次君は朽木さんを諦めたりしない。

少し上がった口角は笑みを象って居ただろう。
部下にはとても見せられないなと、私は内心で苦笑した。




恋次君が囚われていた最中。

私は忙しいを自分の中で正当化させて、一度も見舞う事をしなかった。

そうなる事を予測していたからかも知れないし、そうでは無いかも知れない。

自分の事だと言うのに、色々な事が、もう良く解らなくなっていた。



「どう、しますか?四宮三席……」


何で、こんな……


眉尻を下げた理吉君が呆然と呟いた言葉で、漸く自分の立場を思い出す程に、私にとっても全てが選択だったんだ。


何にしてもと。

あれで私の取るべき道を決められた。
背後に控える席官達を振り返って指示を出し、想定内の進言を潰して行く。


「全班、担当区域にて待機。抜刀は自衛にのみ限定、追撃は不要です」

「三席?」

「絶対に、双極には近付かない事。其れから……」


阿散井副隊長は、お通しして。


出来るだけケガはしないようにと付け加えれば、其れは不味いのではと云い募る席官を視線のみで黙らせた。


決して、邪魔だけはしちゃいけない。
出来ない事はしない。


させない。


其れだけを思っていた。


「各班に地獄蝶をお願いね」


責任は私が取りますと云い置いて、此れ以上の討議は無意味だと背を向けた。


旅禍の目的が朽木さんならば、余計な小競り合いで隊士達が無駄に怪我を負う必要も無い。

消えた恋次君も、程無くして同じ道を辿るだろう。

どうせ行き着く先が同じなら。
其れが避ける事の出来ない過程だと言うのなら、傷は最小限に収めればいい。

其れがきっと、お互いの為になると口唇を噛んだ。

合理的且つ、機械的算段だと自分に呆れながら……。





厳戒体制の振りをして静観を決め込めば、各所で上がる霊圧は正しく隊長格の其で、轟音と遠く離れて居ても肌に突き刺さるような霊圧が戦闘の激しさを物語って居た。

もう、異論を唱えて来る者も居なかった。

自分達の立ち入る範疇を疾うに超えているのだと、各々が理解しての結果だ。


『明日の正午』


…………また、短縮された朽木さんの処刑に合わせて全てが動く。


「やっと終わる……」


辿れない霊圧を思いながら口にした想いは残酷で。

結末は、残念ながら誰にも均しく訪れた訳では無かった。


きっと誰もが皆、其々の想いを抱えていた。

誰もが皆、誰かの幸せを願って居たんだ――…









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