きみがすき | ナノ






05




恋次君の告白を受け留めて、恋次君を男の人だと自覚して。

それからの私は、諦めて貰う為に必死だった気がする。


大切な女のコがいる恋次君が怖かった。
もう傷付きたくなかった。


それは私が、恋次君に惹かれていたからだと今なら解る。


逃げて、逃げて。
逃げ切れたと思った場所で絡め捕られる。

気付けば、出逢ってから優に二十年は経っていて。

私は……


恋次君ならいいかなって。
こうして逃げる事しか出来なかった私の傍にずっと居てくれた、恋次君となら、これから何が遇ってもいいと、思ったんだ……。


なのに。

たった一日、姿を見ないだけでこんなに不安になる。


今、私が笑っていられるのは恋次君が居たからで。
毎日が泣きたくなるくらい幸せで……。

どんな時も、ずっと傍に居て笑顔をくれた恋次君だったから……。


いつ終わりが来たって大丈夫。


なんて、私はまた知らない間に同じ間違いを繰り返していたんだ……。


細く息を吐き出して副官室を見渡した。

書類も全て片付いて、今日はもう此処には用は無いのに、立ち尽くしたまま動く事も出来ない。


こうして、恋次君が居なくなる不安に怯えている。


失う恐怖に震える私は


あの頃と何一つ変わっていないんだ――…








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