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  03


私達の終わりは修兵からだった。

心変り…… では無かったのかも知れないし、そうだったのかも知れない。只の浮気だと言われても、私に其の事実を知りたいと望む強さは残っていなかった。

そんな事はもう今更で、私にとってはもうどうでも良い事だ。

私にとっての真実は、何の言い訳もされ無いまま、本当に呆気無く終わりが訪れたという事だけ……。


急用だと予定をキャンセルされた夜。

着信を知らせた伝令神機は、確かに修兵の名前を表示していた、のに……


『はい?修兵、どうし……』

『アンタ、誰?』


どうかしたのかと慌てて出た伝令神機の向こう、聴こえた声は、修兵のモノでは無かった。


誰って……


『……此れは、修兵の伝令神機、ですよね』

『だから、アンタは誰って訊いてんのよ』


高圧的な声音の後ろで、耳に遠く聴こえたのは愉しげな笑い声。


『私、は…………』

『修兵は今、私と居るのよ』



―‐――――……



ブツッ 切られた通話と共に、世界から遮断されたような感覚に陥った。

ツ――…と、ただ鳴り響くだけの機械音。


私は………。

修兵の、彼女だよね。


シン と静まり反った一人の空間で、嫌な感情ばかりが渦巻いていった。



『そんなに俺が信用出来ないなら、好きにしろよ』


別れたいなら俺は其れで構わないと、暗に示された言葉は酷く冷たく響いて、何の言い訳もされないまま向けられた背は、他人のように思えた。


『昨夜は誰と居たの?』


あの女性は、誰……?


明け方近くに帰宅した、少し気だるそうな修兵に訊ねた。

責めるつもりなんて無かった。ただ、不安を取り除いて欲しかった。

安心したかっただけ。

そんな私に返されたのは、本当でも嘘でも無い、只の終わりの言葉だ。

言い訳でも良いから……


『何か、言ってよ……』


ぽつりと溢した声が、修兵に届いたかどうかは知らない。

不機嫌を顕に寝室へと消えて行く後ろ姿を見送って、直ぐに最低限の物だけを纏めた。

修兵が起きる前にと家を出て……


私達は、其れきりだ……。


修兵は追い掛けて来てはくれなかった。其の後も、何を言ってくれる事もなかった。


修兵が誰かと噂される度、性懲りも無く傷付いた。

もがいて、足掻いて、修兵を忘れる為に要した時間は、私にとっては計り知れない。

のに……


「何、でよ……」


もう良いじゃない。もうっ……


「何度も私に終わりを見せるのは、止めてよ……」





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