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「先輩っ!」
突如立ち昇った俺の霊圧に、何事かと飛んで来た尋ね犬に手間が省けたと胸ぐらを捕まえてやった。
「何処だよ……」
ドスの利いた俺の物言いに、
「は……?え?先輩の部屋に居なかったっすか」
と慌てふためいて居やがるが、だったらこんなに殺意は湧いて無ぇ。
「正か一人で歩かせてる訳じゃ無ぇよなあ……」
「え!?俺はしてねぇっすよ!」
「‘俺’、は……?」
「え゛、あ、いや……」
はっきりしねぇ阿散井の言に舌打って、直ぐに霊圧の補足に入れば、
「っ……あ゛ーー…、だから!あのっすね」
と罰悪く止めに入って来る。
「………何だよ」
邪魔すんじゃねぇと睨み付ければ、アイツの霊圧は補足出来ねぇようになっていると、訳の分からねぇ事をしどろもどろに答える。
「あ゛」
「だからっすね、先輩の所に居ねぇならっ 其の……」
多分、阿近さんの所に居ます!
ダラダラと冷や汗を流しながら言う台詞に血が沸いた。
「…………先輩?」
「…………」
何で、どうして、が、あの鬼に通用しない事は重々承知している。
アイツが此処に来た経緯だって、想像に難くない。
一刻も早く捕まえて誤解を解く。謝って、抱き締めて、甘やかして……と思う気持ちも間違いは無ぇ、のに……。
アイツが、他の男の元に居る。
其れだけで、殺気立った俺を責める野郎は居ねぇだろう。
「っ……」
此処に居る。
なのに其の気配を感じ取れない。其の事が、こんなにも不安に思う現状に舌打った。
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