SSS | ナノ

   46


「阿近さんっ!」

「………珍しく騒々しいな」

「っ、ふざけっ……それ、より!アイツ……、は!?」

「…………」


此処に居るはずだ。なのに姿処か気配も感じ取れない。

此の目の前の鬼の落ち着きはらった様子に躯中が騒つく。


「阿近さ……」

「四宮紗也なら、丁度現世に帰した所だ」

「…………は?」


何、で……と、回らねぇ頭に、「処置が済んだからな」と冷然と畳み込まれて何かが込み上げる。


……処、置って、


「正か……」

「データは揃ったしな」

「っ……」


血の気が、退く……


「監視は終いだ。後の保護は黒崎にでも任せりゃ良いだろう」


今、直ぐに駆け出して行きたいという衝動を、ギリ と歯噛みして堪える。胃の奥底から沸き上がる恐怖にも似た感情に、足が震えた。


「つーか、元々副隊長が関わるような案件じゃねぇだろ」


今までも此れからも。

そう云わんばかりの呆れを含ませた言葉は、きっと何一つ間違っちゃ居ねぇんだろう。

けれど、其れでもと、


「………邪魔、しました」


其の言葉と共に駆け出した俺を引き留める声は無かった。


任務……、なんて只の口実で、アイツに会いに行く機会を増やす為に無理矢理奪い取ったもので、只の職権乱用だ。


「ヤベぇ、吐く……っ、」


『アンタ、此れ以上仕事増やしてどうすんのよ……』


只でさえ忙しいくせにと呆れてくれたのは乱菊さんだったか……。


「其れでも……」


欲しいものが有った。

譬、何を犠牲にしてでも――…



「今更、手放すかよっ……」



俺はただ……

アイツが欲しかった。





prev / next


[ back ]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -