05
「アンタって……」
呆気に取られた黒崎君て言うのもなかなか見物だと思う……って、そりゃそうだ。
帰宅した自宅前に、死神さんに抱き締められたまま言い争うなんて珍妙な状態の私が居るんだからと嘆息する。
「初めまして」
「何だ、知り合いかよ」
「今、初めましてって言ったでしょ」
「嘘を吐け」
どう見ても顔見知りだろって五月蝿いわっ
この目付きの悪いオレンジ頭は間違い無く黒崎君で、そして出来ればお近付きにはなりたくない。
「いや俺、アンタ知ってるって!確か……」
「余計な事は言わなくて良いからね」
よりによって何でこんな時に……って言うか、何で私なんかを知っているっ
黒崎君は他人の名前なんて憶えないって有名だったはずだと眉間に皺が寄る。
とにかく一刻も早くこの場を去りたいのに、私を捕らえる腕を振り解けない。
この変な自称死神に加えて黒崎君て、今日は何の厄日かと言いたくもなる。
「それこそお知り合いなら、この変なの何とかしてよ」
「変なの言うな」
「いや。つったって、何でアンタが……」
「よぉっす一護、って先輩っ?」
「何だ、お前も来てたのかよ」
「また、凄いの出た……」
逃れたいと思えば思うほど、ドツボに嵌まって行くのは何でだろう……。
真っ赤な髪の刺青ロン毛なお兄さんは、阿散井さんと言うらしい。
『見えてるんなら話は早ぇよな』
と簡単に説明された内容に依れば、どうやらこの変なヤツらは本物の死神さんと言う事で、大した害は無いらしい。
「で、何が嫌なんだよ」
退く、という事を知らない此の人は、飽くまでも私の意見を聞く気は無いようで、宣言通り
実力行使の不言実行
本気で嫌がる私を当然のように抱え上げ、黒崎君の自室へと連行してくれて今に到る。
「あまり有名な人には関わりたくないと言いますか……」
「俺は別に不良じゃねぇよ」
「其処じゃない」
髪の色がどうの、喧嘩がどうのと、そんな事はどうでもいい。
この世で一番怖いのは……
「黒崎君に関わると女の恨みを買いそうで嫌だ」
「何でだよっ!」
何でって私達三年の間でも黒崎君は有名で、いつも授業中に女の子を連れ立って、何処ぞへ消えて行くと聞く。
「しかも二股、三股って……」
「誤解だ!」
渋々答えた理由がまた何処に入ったのかは知らないが、何でだよと怒る黒崎君の隣で震えだし、揃って爆笑する二人……
「だから宙に浮くのは止めようよ」
絵面がシュール過ぎると溜め息が洩れた。
どうも此の死神という生き物は、笑い上戸らしいと知った。
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