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  43


「阿近さん」

「もう良いのか」

「……はい」


見付けた答は、私が欲しかった答ではなかったけれど、


「十分、です」


そんな都合の良いモノなんて、きっと最初から何処にも存在なんかしていない。だから、


「ありがとうございました。阿近さん」


私がここに来た意味をくれて……。

頭を下げた私に、阿近さんは難しい顔で「そうか」とだけ短く応えた。


私は、どうしてあの人は私に構うんだろうと、ずっと不思議に思っていた。そうしてそう思いながらも、勘違いも甚だしい。あの人の優しさに莫迦な期待も沢山して来た。

本当、笑える。考えなくても答なんて決まっていたのに。ただ私が別の答が欲しいと目を逸らしていただけ。只の悪足掻きだ。



『戻るぞ……』


どれだけあの場に立ち尽くして居たんだろうか。

照り付ける太陽の下、名前を呼ばれて意識を引き戻されるまで、私はあの人の姿が見えなくなった方向をただ見詰めていた。



『檜佐木さん……』



その声は、届くはずも無いと分かっていたのに……。



「……気持ちは変わらねぇか」

「はい」


そう、自信を持って言えるにはまだまだ覚悟は足りて居ないけれど、後悔だけはしないと決めてここに来た。


「…………」

「阿近……さん?」


上手く笑えた自信も無い。だからかな……。私の髪をくしゃりと撫でた阿近さんが、


「まあ、約束、だからな……」


と、憮然とした顔で了承をくれた。







「……準備は良いか」

「はい」

「次に目覚めた時には現世に居る」

「はい」

「それでも、此処の痛みは消えねぇぞ」

「っ……」



強く、強く思うのは、



「……はい」



こんな今になっても、あの人の事だけだ。





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