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「そんな面白ぇか?」
「はい」
飽きもせずに死神さん?達の流れを見続ける私に、少し呆れを含んだ声が掛けられる。
「阿散井さんが副隊長さんみたいで新鮮で…痛いっ!」
「みたいじゃなくてそうなんだよっ!」
「……っとに、」と、ブツブツ文句を言ってる阿散井さんに、六番隊に行ってみたいですとお願いをしたのは私。
『それ、なら……』
『ダメ……ですか』
『……ダメじゃねぇよ』
一瞬何かを言い掛けて、分かったと直ぐに追及はせずに了承をくれた。
阿散井さんは、本当に優しいと苦笑った。
「阿近さんて、凄いですよね……」
「普通に死神に見えるぞ」
六番隊隊舎を見て回っても、特段私を気に掛ける人は居ない。
一瞬、阿散井さんが私を連れている事で隊内が騒然となったけれど、
『……あー、客人だ。散れ』
隊務に戻れと阿散井さんが諌めて以降は、阿散井さんのファンさんだろうか、時折怖ーい視線が送られるくらいだ。
「これ、なら……」
今の私なら。もしかしたらあの人にだって、私に気付かれないんじゃないだろうかと思ってしまう。
「別人…、みたいですよね」
「髪と瞳の色が違うだけじゃねぇかよ」
「それ、大事じゃないですか?」
会いたくない。
もう顔も見たくない。
二度と関わらないと思いながら、私が想うのはたった一人、あの人の事だけで。
あの人もこんな風に過ごして居るんだろうかと、結局はあの人へと馳せる自分に嘆息する。
会いたい訳じゃ無い。
けれど、ただこうして居たって、結局私は何も変われないままだ。
「あのっ……」
「どうした?」
「……九番、隊に……」
遠くから、後ろ姿を見るだけで良い……
あっちの世界で、あの人の姿をみたい……「い…、え、あのっ、行ってみたいとかじゃ無くて、」
「行くぞ」
「違っ、出来れば近くまでで良い…、」
「会いてぇんだろ……」
「違っ……」
わない。こんな……、私の子供染みた否定なんかが通る訳も無い。
たしなめるように、握られた手に力を込められて口を噤んだ。
会いたい……
「あの人は……」
「おう」
「………こっちの世界でも、格好良いですか?」
「……それだけ惚けれりゃ問題無ぇな」
「…………」
あの人は、本当はどんな人ですか……。
あの人に会った、ら、
たった一つ、私が最後にと望んだ願いが叶うだろうか。
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