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   30


『あの人が怒る気持ちが解る……』


そう言った後の黒崎君は、瞠目する私になんて構う事なくムンズと腕を捕らえると、


「、えっ……」


どこへ、とも言う事も無く駆け出して、雨の中を全速力で引き摺ってくれた。


「ちょっ、待っ……、速いっ……じゃないっ それ、よりっ ベタベタして逆に気持ち悪……」

「良いから、黙って走れっ」


文句を言う私に、直ぐだからと、絶対ぇそれ脱ぐなよと叫ぶように言い聞かせて……。


「………ね、ぇ」

「何だよっ」


さっきから、何でこっちを見ないかな。

何で……


「顔、紅いのっ」

「…――っ、だから黙って走れっつってんだろうがぁあああっ」

「何でそこで怒るかな」


………私には、


「あの人の怒る理由も黒崎の怒る理由も解らないよ……」

「何か言ったかっ」

「いー、え」


解らない事だらけだと、顰まった顔を背けた。







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