SSS | ナノ

   27


「さて、と……。これで30分は戻って来ねぇな」

「大丈夫、なんですか?」


窓から飛び出して行った阿散井さんを一瞥する事もなく、何食わぬ顔でお茶を啜る阿近さんに、焦った様子や何かしらの行動を起こす様子は無い。


「何がだ?」

「え?いえ、虚って化物?が……」


出たんですよねと、大丈夫なのかと焦る私を訝し気な視線が捉える。

私には分からないだけで、阿散井さん一人でも問題無いのかも知れないけれど、


『デケぇな……』


ちょっと行って片付けて来ますと、面倒臭ぇと舌打ちした阿散井さんが直ぐに駆けて行ったけれど……。


「もしかしたらっ……」

「ああ、アレは俺が造った実験体だから全く問題無ぇぞ」

「えっ……?」


実験……体?


「何、で……」

「五月蝿ぇしな。お前が何か話したそうだったから体よく追っ払ってみただけだ」

「………………」


逆に問題大有りじゃあ……


今頃追っ掛けっこでもしてんだろとシレッと言われて、あの人も大概だと思っていたけれど、この人もその上を行くと真剣に思った。







「何だ、聞かれたく無ぇ話が有ったんじゃねぇのか」

「っ……」


飾る事なく確信を突く物言いは、問い掛けの形を取って居ながらそうでは無い。

あんな、たった少しの逡巡でと、全てを見透かした視線に言い淀んだ。


「俺は……、お前は断って来ると踏んでたんだがな」

「っ……………、はい」


私の想いを言い当てて、じっと見据える瞳は強くて深い。


「私、は………」


確かにこの人に訊いてみたい事が有った。
『尸魂界には行きません』と、次に阿散井さんに会えたらそう伝えるつもりでいた。

なのに、


『行きます』


口をついて出たのは、全くの逆の言葉で……



「あの、」

「…………」

「お願いと、お訊きしたい事が、有ります」

「ああ……」







行きたくなんかなかった。

行くつもりもなかった私が、その言葉に頷いた理由はたった一つだ。







prev / next


[ back ]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -