24
『嘘じゃねぇよ……』
だったらよ……「……ぃ」
「…………」
「……おいっ」
「っ―…、あ……」
そうだった、と思い出す。
阿散井さんとの遣り取りを思い出して、そちらに気を取られてしまっていた。
「だから悪かったって」
「いえ、違っ……」
「違わねぇだろ」
何かを勘違いしたらしいこの人が、「もう言わねぇ」と、何やら必死になって謝ってくれているけれど。
この人が謝る必要なんて無い。
本当に、気を遣わせる事しか出来ない自分が嫌になる。
「あのっ、怒ってるとかじゃ無いです」
「だからっ……」
「ちゃんと、解って……ます、から」
昨日それを思い知ったばかりだ。
今日も……、そう。
『俺も最初はどうかと思ってたんだけどよ』そう前置いた阿散井さんが、やっぱりと、お前は一度 自分の目でちゃんと見た方が良いと、言いながら眉根を寄せていた。
『怖ぇかも知れねぇけど……。全部見て、知って。それで……』
先輩を、解ってやってくんねぇか……惑う私に掛かる阿散井さんの声が、耳に木霊するかのようだった。
これからも、先輩と一緒に居てぇなら……それは……
全てを知って、そして、諦めろという事なんだろうと……。
「そう、かよ……」
「ちょっ、え?………………
……だからもう、何で……」
直ぐに気を抜く私が悪いのか……
解ってんなら良いと、当たり前のように私を捉える口唇が、莫迦な勘違いをしそうになる程に優しくて……
「いつもいつも、いきなりなんですか……」
「これからするって言えば良いのかよ」
「いえ、そう言う問題じゃな、」
「するからな」
「……………って、だからっ」
嬉しいのか、ツラいのか
悲しい、のか……
もう、この感情が何なのかさえも見えなくなる。
この感情が、
恋なのか、さえも――…
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