21
「あの……」
「…………」
「あのっ」
「………何だよ」
いや、何だよって本当何なんですかっ
訊きたいのはこっちです!
この暑いのに……っ
一体この状況は何だろうかと問うても良いだろうか。
「とにかく、一旦退いて下さ……」
「…………」
「って、だから何でそこで黙るんですかっ……」
そろそろ……
「貴方の沸点って言うものを教えて貰っても良いですかっ?」
今日はこの人が自隊の仕事だって言う、瀞霊廷通信なる物を持って来てくれた。
此方の世界の雑誌のようなそれを二人で眺めること約一時間。
初めて触れたこの人の世界が嬉しくて、珍しくて。色々と訊きたがる私のその全てに、嫌な顔一つせずに受け答えてくれる事が嬉しくて。
いつになく穏やかな時間を過ごしていた、ような気がするのは気のせいでは無いはずで……
『おい……』
『はい?って、え……?あの、何で急にそんな不機嫌になっ……ちょっ……』
声を掛けられて振り向いた時にはもう、何故か不機嫌丸出しの大っきな子供が出来上がっていた……のはまだ良いとしよう。
「……それで、何で急にこんな事になるんですか」
呼び掛ける声と同時に、不意に伸びて来た腕は乱暴で、あっと言う間に引き寄せられた躯は組み敷かれて身動きも取れない。
話し掛けても返事は返らないまま、不機嫌そうに見下ろされるだけ、で……
「………ですからね、その怒ってる理由を教えて下さ、ちょっと待っ…ンッ…、っ…………」
だから、何でっ……
「………………急に、キス……なんてするんですか……」
解らない私がダメなのか
理由を欲しがる、私が……
「ムカついたからだろ」
本っ当に……
「…………いい加減、セクハラ行為は止めて下さい」
諦めの悪い自分が嫌になる。
「セクハラ言うな」
「いえ、間違いなくセクハラですよね……」
「手前ぇ……」
「…………」
もう、諦めろ。
そこには私の欲しい理由なんて無い。
だったらもう、それで良いじゃないか……
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