02
現れた、まるで私を護るように目の前に立つ大きな背中に、有り得ないと思いつつ見入ってしまった。
ちょっと待ってろと振り向きもせずに駆けて行く、
それは、まるで――…「笑い過ぎ」
目の前でバンバン宙を叩いて爆笑してるのは、
『変なの言うんじゃねぇよ』
と、確り聴こえて居たらしい、自称『死神』さんだった。
散々文句を言い続けた挙げ句、突然何かを思い出したかのように
『霊に痴漢されて右ストレートってお前…………ぶはっ』
と吹き出した後は何がツボに入ったのか知らないが、笑い転げて下さって今に至る。
助けて貰った恩も有ると静観すること早や一分。
初めて見たぞってまだ笑う。
確かに痴漢野郎にムカついていたけれど、まだ殴る前だったし、こっちは本気で怖かったって言うのにこの男……。
「じゃあ、そう言う訳で」
「あ――…、待て待て待てっ」
ありがとうございました。さようならと立ち去ろうとする私を悪かったってと制止する。
悪かったとか言いながら、顔が笑ってるからまたムカつく。
「助けてやったろ」
思いっきり顔を顰めた私に口角を上げて手を取ると、まぁとにかく付いて来いと引き摺った。
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