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  15


「ずーっと訊きたいと思ってたんですが」

「何だよ」

「そんな格好をされてますけど、尸魂界って実はアメリカンな世界なんですか?」

「……ンな訳、無ぇだろ」


急に何を言い出すかと思えばと、心の底から滲み出たような呆れ顔から鑑みるに、やっぱりアレは『キスは挨拶だ』みたいなノリでは無いらしい。


……だったら、この人は何を思っているんだろうかとまた一つ消えた可能性に小さく息を吐き出した。



この人が私に触れる理由は何なんだろうかと、ぐるぐるぐるぐる、無い頭を振り絞って考えてみたところで、答に辿り着くはずもない。


どうして私にキスするんですか。


そう口に出来たなら、きっとそれが一番単純だ。
私が知りたいのは、そう言う事なんだから……。


解って居て、それを口に出来ない私は……


本当に、莫迦だ……


何よりも、その理由が欲しいくせに……。







―――――……

――――……

――…


「…………っ……」


………あ、れ?


ゆっくりと開いた瞳に入った、薄暗い室内を疑問に思う。

思う、と言っても何だか思考までが曖昧で、動かそうとした躯までが鉛のように重い。

その違和感の正体を知ろうと力を込めた躯は、闇の中から伸びて来た腕に押さえ込まれて脈打った。


「目、覚めたか?」

「っ………何、で」

「何でじゃねぇよ」


何でと口にしたのは無意識で。だからそこまで頭は回っていた訳じゃない。

「言いたいのは俺だ」と少し怒ったように言うこの人が、今ここに居ると言う事は……


「今……」


って、私っ


「学校っ……」

「莫迦かお前は!」


慌てて起き上がろうとした躯は目眩と共に布団に沈んだ。


「まだ熱が下がってねぇんだよっ」


何を起き上がろうとしてやがると、怒り心頭のこの人に押さえ付けられて身動ぎすら出来ない。


「お前、倒れてたんだよっ……」


偶々、早く上がれたから良かったもののと、怒りの中に見え隠れする心配の色。


ああ、そうだと……。


朝からの行動をぼんやりながらも思い出す。


考え過ぎて悩み過ぎて、眠れない日が続いていた。
この人の姿を思い浮かべただけでもう、ご飯だって喉を通らなくて……。

なのに、


「……何で、また人間みたいな格好してるんですか」


私は、その姿が大嫌いなのに……。


それは、あの日の事を思い出すから……?


「………また………………」

「何だよ」



また、眠れくなるじゃないじゃないですか……。



「……何でも、無いです」



答が欲しい。

それも、探しているのは私に都合の良い答だ。



それこそ、この人には何の関係も無いのに……。







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