いつか、きっと
100% 叶う恋なんて無い。
誰かが笑えば、きっと誰かが泣いている。
それが、私だっただけなんだ……。「って言うか、泣いてる女性の桁が違いそうですよね」
貴方の場合は、と言えば、「は?」と、訳の解っていない間抜けな顔で返された。
そんな顔でも恰好良いっていうんだからもう、
「……何か腹立つんですけど」
「だから何がだよっ」
いつもとは真逆。
私の割愛し過ぎた話の展開に、それでも何だかんだ言いつつ理解しようとしてくれるんだから、本当にこの人は優しいと思う。
格好良い上に優しいって……。
「世の中って不公平ですよね……」
「頼む、俺にももう少し解るように言ってくれっ……」
二物も三物も与えられたこの人は、尸魂界?でも相当におモテになるんだろう。
だから絶対、陰で泣いている女性が多いんじゃないかと思っただけなんだけど……
「聞けよっ」
「あ、でも!」
「…………」
相手もあれだけの美女なんだから、泣いている男性陣の数も多そうだ。
だったらプラマイゼロで、何の問題も無いのかも知れない。
「余剰バランスって大事ですよね」
「はぁっ?」
それなら、きっと何処かで上手く相殺される。
「だから何が……」
「きっと誰にも、何処かにこの人じゃなきゃって思える人がいるんだろうなって、いつか必ず出逢えるんだろうなって、」
そうなら良いなって、
「思っただけです……」
「…………」
だからきっと。どんなに今が辛くて、どんなに哀しいんだとしても……。
いつか私にも、隣に居てくれる人が、きっと……。
「るよ……」
「え?」
勝手に話して勝手に黙り込んだ私に掛かる声。
泣いた泣かねぇの話は知らねぇけどって耳に届いた声は小さくて、聞き返す私に少しだけ照れくさそうに口をヘの字に曲げる。
「俺にも、もう居る、つったんだよ」
それは……。
そんな、この人が、愛しむような瞳を向けるその女性は……
「誰に泣かれたって、たった一人が傍で笑ってりゃ俺はそれで良んだよ……って、お前は何を言わすっ」
「…………痛い、です」
胸も、瞳も、躯中 全部……。
勝手に、惚け出したくせに何をする。
解ってんのかよってこの人にしては珍しく、真っ赤な顔で「見んな」と頭を強く引き寄せられた。
それに素直に従って、良かったと、痛みを逃すように息を吐く。
埋められた胸の中、泣き出しそうな顔は見られなくて済みそうだと……。
「私、は………」
「……どうした?」
「い、え……」
いつか、きっと……なんて要らないから。
私は、この人のたった一人に成りたかった。