17
「何でそんな格好で歩いてやがるっ」
「……何でこんな所にそんな格好で居るんですか」
「今、俺の事はどうでも良いんだよっ」
「いや、だから何でそんな不機嫌……」
また突然現れたと思ったら、開口一番何故怒る。
「暑いので」
「服を着ろ」
「これは服です」
「…………」
「ちょっ……」
って、何をするんですかっ
急に引っ張るのは止めて下さい!
一体、今日は何に怒っていると言うのか。
相変わらずなこの人に、乱暴に腕を引かれてムッとなる。
今日はこんな出先でも遭うなんて、偶然にしたって程が有ると知らず眉根も寄っていた。
「私はこれから、」
「煩ぇよっ」
「っ……」
私の反論になんて、耳を傾けるつもりは無いらしい。いつもの如く、抵抗さえもお構い無しにぐいぐいと腕を引くこの人は……。
私の見間違いでも何でも無い。
いつも身勝手に現れては、我が道を貫いて下さる死神で、昨日約束をすっぽかしてくれた人で……。
何より、
「お元気そうで何よりです」
ギュッと力一杯足を踏ん張って、思い切りブレーキを掛けてやる。
取られた腕は、力任せに振り解いた。
「お、前……」
目の前で死神が唖然として居るのが判る。
無駄に格好良いこの人のせいで、注目だって浴びている。
少し離れた場所には、この人のお連れらしい、デルモ級の金髪美女がこっちを窺うように控えて居て……
本当に、何なんですかと口唇だけが動いていた。
勝手に決めておきながら、連絡も無しにすっぽかす。
行き成り人間みたいな姿で現れたと思ったら、謝りもしないで怒り出す。
まるで、昨日の事なんて、無かったみたいに……。
莫迦みたい……
昨日から、一体何度自分を嘲た事だろう……。
何か遇って欲しいと思ってしまった。
自分を心底悔いたのに――…
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