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   16


別に、特別な何かを期待して居た訳では無いけれど――…



溜め息を吐いて携帯の時刻を確認すれば、表示されたのは当たり前にあの人の指定した数字ではなくて……。

きちんと5分前行動をした自分が莫迦莫迦しく感じた。


本当は、こんなに何度も見なくたって判っている。


西に堕ちた陽は既にビルの谷間に消えて、子供でも判る色彩を主張してくれていた。


約束の時刻を10分も過ぎた辺りから確認し始めた携帯は、もう充電が切れそうな状態になっていて、自分の往生際の悪さを見せ付けられるようで嫌になる。


何か、ジロジロ見られてるし……


これじゃあ独り言の時と変わらない。

見えない彼ら相手の……、寧ろ本当に居ない分、えも言われぬ恥ずかしさを感じて虚しくもなった。


連絡を付けようにも付けようが無いし、況してや探しに行ける訳でも無い。


「莫迦みたい……」


また、からかわれたんだろうか……。
それとも、何か、遇ったとか……


どっちにしたって、私にそれを知る術は無いんだと苦笑した。





「帰ろ……」


少し離れた場所で、こちらを指差す二人組の男の子が目に付いて、私かなと思ったら、何となく居たたまれなくなって立ち上がる。

こんな所に何時間も一人で待ちぼうける私は、嘸や滑稽に映る事だろう……。


お腹も空いたし、お尻も痛い。


これ以上、道を訊かれるのも御免だと思った。


離れてる間に行き違いになったら……なんて、無駄な心配をして一歩も動けなかった自分が嘲笑えて来る。


「……何も、無ければ良いけど」


本当に?


そう口にしながら自問した。



「違う……」


……嘘じゃ、ない。


それでも、何か理由が在って欲しいと思ってしまう。

そんな自分の浅ましさに辟易した……。






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