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「よっ 元気っ…、か……?」
「「…………」」
部屋の壁を擦り抜けて、ヌッと入って来たこの恋次さん、改め阿散井さん(何せあの人が煩い)と言う人は、あまり物事を深く考えるタイプでは無いらしい。
「見たな……」
「見っ…………、すみません」
ダラダラと冷や汗を流しながら、大っきな体躯を縮込めるように正座する。
いや、そんな怒ってる訳じゃ無いんだけど、当の阿散井さんは顔色を失くして今にも倒れそうだ。
顔色悪いですよと額に手を当てようとすれば更に蒼褪めて、仰け反ってまで躱す。
どうしたんですかと心配すれば、先輩には内密にと頼まれた。
……先輩って、あの人か。
「それはまぁ良いですけど、何であの人」
あの人、関係無いですよねと怪訝な顔をすればブルブルと首を振る。
「い、や。関係無ぇっつーか有るつっーか。とにかく先輩には内密にしてくれたらそれでっ……」
「何をだよ」
「俺がアンタの裸を見た事………あっ……」
……言っちゃった。
あ……ってちょっと、阿散井さん。貴方、ホント阿呆ですか。
ピシッと固まった空気も、氷点下まで下がった気がする室温も、決して私の気のせいだけでは無い気がした。
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