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   10


「よっ 元気っ…、か……?」

「「…………」」


部屋の壁を擦り抜けて、ヌッと入って来たこの恋次さん、改め阿散井さん(何せあの人が煩い)と言う人は、あまり物事を深く考えるタイプでは無いらしい。






「見たな……」

「見っ…………、すみません」


ダラダラと冷や汗を流しながら、大っきな体躯を縮込めるように正座する。

いや、そんな怒ってる訳じゃ無いんだけど、当の阿散井さんは顔色を失くして今にも倒れそうだ。

顔色悪いですよと額に手を当てようとすれば更に蒼褪めて、仰け反ってまで躱す。

どうしたんですかと心配すれば、先輩には内密にと頼まれた。


……先輩って、あの人か。


「それはまぁ良いですけど、何であの人」


あの人、関係無いですよねと怪訝な顔をすればブルブルと首を振る。


「い、や。関係無ぇっつーか有るつっーか。とにかく先輩には内密にしてくれたらそれでっ……」

「何をだよ」

「俺がアンタの裸を見た事………あっ……」


……言っちゃった。


あ……ってちょっと、阿散井さん。貴方、ホント阿呆ですか。


ピシッと固まった空気も、氷点下まで下がった気がする室温も、決して私の気のせいだけでは無い気がした。






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