07
よく笑う、よく怒る。
そして……
「何で直ぐ不機嫌になるかな……」
確か、『今日は恋次さんが来てくれました』と云っただけだよね?
この台詞の何処に不機嫌になる要素が含まれるのか、さっぱり検討が付きません。
一体、この人の沸点は何処に有るのか……
今日は昼休みに、その後はどうだと恋次さんが顔を出してくれた。
派手な外見と反比例するかのような優しさと常識的な対応に、人は本当に見掛けに寄らないと思った。
だから『大丈夫です』の序でに、どうしてあの人はあんなに喜怒哀楽が激しいのかと、常々疑問に思っていた事を訊けば、あんなに笑ってる方が珍しいと言われた。
「有り得ない……」
「何がだよ」
だってこの目の前で不機嫌オーラ垂れ流しの、感情の起伏が激しいこの人が……
『先輩はどっちかっつーと、寡黙な方だぞ?』
『寡黙っ』
ぶっと思わず吹き出せば、何を笑ってやがると頬をツネられた。
「痛いですっ」
「痛くしてんだよ」
「ちょっ……」
ちょっと、離してと、相変わらずの抵抗を試みた……場所が悪かった。
何かに躓いて縺れ込んだ其所はベッドの上で……
「………ご、めんなさい」
この、見た目だけなら『抱かれたい男』トップ3に入りそうなこの人を押し倒す形になっていた。
「直ぐっ……」
退けると言おうとした私の躯は、剥き出しの片腕に易々と絡め取られて叶わない。
「あ、の……」
距離が近い。
普段は喧しいくらいに話すこの人の、無言のまま見上げる強い視線に晒されて居心地が悪くなるものの、どうにも気になって仕方がない事を口にした。
「重くない?」
「もっと別の心配が出来ねぇのか」
別のって、そんな呆れた眼差しを向けられても……
「って、言ったって……っ」
え……っ?と思う間も無く、ぼふっと背中に当たったのは柔らかなスプリングの感触。
いつの間に、と呆けるほど、あっと言う間に入れ替えられた体勢に、処理能力が付いて行かなかった。
ゆっくりと近付く整い過ぎた容貌から目が離せない……
「……ったく」
「っ……」
何を黙ってやられてんだよと小突かれた。
叩かれた額を擦りながら文句を言えば、無防備過ぎだと眉間に深い皺を刻まれてムッとなる。
「無防備も何も、アンタがっ……………… って、え?」
今、この人が……
「目ぐらい閉じろ、初心者」
「―――…っっ」
初心者って何だ、何すんだっ!
そんなのっ……
「私のファーストキスを返せっ……て、いいやもう。死神とはカウントしな……いって、ちょっと何っ…………」
死神の下から逃れようとする私を易々と押さえ込む。
そうして、またまた不機嫌丸出しになった死神が
「ホント、ムカつく」
私の文句も苦情も呑み込んで、今度はキスを深いモノに変えた。
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