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02


「あら〜。修兵、随分とピッチが早いじゃない」


全部知っているくせに、ニヤニヤと寄って来て傷口を抉る乱菊さんは、本当に質が悪ぃ。


「ああ?四宮は誘わなかったんかい」

「違うわよ〜。修兵ったら振られちゃったみたいなのよ」

「何じゃい、儂が折角気を利かせてやったっちゅうに、情けないのう」


好き勝手に話す乱菊さんと射場さんの容赦無い責め立てに、もう反論も虚しいと只管杯を煽る事に集中した。

ずっと気になっていた彼女を、他の誰かに取られる前にと先んじて今夜の飲み会に誘った。

早目に抜けて、好きだと伝えるつもりだった。

顔を合わせる機会を増やして、逢えば挨拶以上の関係を得たつもりでいたのは勝手な思い込みだったのかと溜め息も洩れねぇ。
話し掛ければいつも、嬉しそうに頬を染めて話してくれるから……。

自惚れていたんだ。


『あの、申し訳有りません!十四日は遅番に当たってしまっていて……』


承諾されると思っていた今夜の誘いに返されたのは否だった。

今日は、射場さんに頼み込んで非番にして貰っていたはずで。
況して、射場さんが夜勤に女を付けるなんて有り得ねぇ。

断るにしても……。

そう思って、自分の立場を思い出して自嘲した。


断り、辛ぇよな……


両想いなんじゃねぇかって勘違いしていた自分が気恥ずかしくなって、ぞんざいな態度を取ってしまった気がする。
そんな態度を取ってしまった事も情けなくて、以来まともに顔も見れないままだ。

諦める事も出来ねぇくせによ……

悪循環だと解って居ても、向けられる哀しげな顔が気になって居ても……

本当にガキ臭ぇなと、もう自戒するしか無ぇ自分に呆れた。




「い、射場副隊長……っ」

「お前…… こんな所で何をやっとるんじゃっ!!」


ヒトがシンミリ呑んでんのに五月蝿ぇなと、急に騒がしくなった入り口付近に目を遣れば、女連れの…… 確か七番隊の席官の野郎が直立不動で立っていた。

冷や汗もののソイツに、何かやらかしでもしたのかと俺らの視線が集まった。


「確か、夜勤に当たっとったはずじゃがのう……」


抜け出して来たのかと、射場さんに威圧的に問われたソイツがしどろもどろになって発した一言は、俺の霊圧迄をも跳ね上げる事になる。


「申し訳有りませんっ!四宮三席に、代わって頂きました!」

「何で其れを儂に云わんのじゃっ!!!」


五席の代わりは、四席不在の七番隊では、射場さんか三席で在る四宮しか居ないだろうが、

女一人に夜勤をさせる

その射場さんの怒りは尤もで……。尤もだが、そんな事より……


「手前ぇ……」

「ひ、檜佐木副隊長……っ!?」


顔面蒼白のソイツに何を云ったって、俺がやっちまった事はもう取り戻せねぇ。それでも、

此れで四宮に振られたらマジでシバくと、半ば八つ当たり気味な殺気を放って俺は、四宮が居る七番隊へと駆け出した。





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