01
「しっかし、紗也がアイツと付き合ってるとは意外よねぇ」
「付き合ってた!です。乱菊さん」
何気に傷口抉ってますよ?
絶対、態とですよね!
あら、そんな事無いわよ〜って言っても、顔が笑ってるから無駄ですよ。
しかも、こんな日に振られるってアンタ!って、バンバン卓を叩いて馬鹿笑いとか泣けて来る。
「まぁ、もう吹っ切れてるからそれは良いんですっ」
入隊して直ぐに付き合い始めた彼に浮気をされていた。
と言うか、変に優しい彼が言い出せ無かっただけで、既にアチラが本命だったんだから心変わりと言った方が正しいかも知れない。
本日七夕と言えば、織姫と彦星が年に一度だけ逢瀬を許された日だったか……。
「三番隊の平隊士だった?何度か見掛けたけど、アレの何処が好かったのよ」
普通の男よね?
顔は、まぁ並?
紗也が選ぶ程の男には見えないけどと、本当に楽しそうでいらっしゃいますね。
「誠実そうに見えたんですよ……」
実際、優しかったし。
人当たりが好くて、いつも穏やかで。隣に居ると私までが優しい気持ちになれた。
「浮気されたのに?」
「それはっ……。それはもう善いんです」
ずっと、私が忙しくてなかなか会う時間が取れなかった。
急な討伐が有ればドタキャンなんて当たり前で……
年に一度とは言わないが、入隊して二年強。
私達は、指折り数える程しか一緒に居られなかった。
「それに、最近は上手く行って無かったんです」
入隊が決まった時に駄目元で告白をした。
二組だった彼とは、実際に接点なんて多くは無かった。
そんな私からの告白に、凄く驚いた顔をした彼が何故か快諾してくれた……
「私が、筆頭だったから付き合ったそうです。住む世界が違うと思ってた私に告白されて……」
他人から聞かされた時はショックだった。
でも、今はちゃんと好きなんだ――…
だけど、私は……
「その言葉を、彼の事を信じられなくなっちゃったんです……」
何が真実で何が嘘だったのか判らなくなってしまった。
だから半分は、彼の言葉を信じられなくなった私のせいだ。
やっぱり、俺とお前とじゃ釣り合わないよ……
ごめんと言わせてしまったのは私だ……
「今度は、釣り合うヤツを探しなさいよ」
「……そう、ですね……って!何を言ってんですか!」
「だって理解と懐の深さの問題じゃない。入隊一桁で前線を駆け回るアンタには、それなりの包容力が必要なのよ。例えば隊長格で誰か……」
「普通が一番なんですって!」
理想と現実は違うんですから。
例えばと考えられるのは、乱菊さんが(そうは見えない時も有るけど)同じ隊長格だからですと苦言を述べた。
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