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02


人間パニックに陥ると、時間的感覚も麻痺するようだ。

こうして拘束(抱き締められているとは口が裂けても言いたくない)されてから、永遠のようにも感じた多分ほんの一、二分だろう時間の後、嫌がったり暴れたりしない私に気を好くした(と思われる)彼が、殊更にゆっくりと、存在を確かめるように躯を辿り、更にはその頭部を首筋に埋める。

口唇が微かに触れる。

掠めた吐息が、熱い。

間違いなく、彼は『私が彼が誰かと判っている』と解っている。

解ってやっているんだから益々質が悪い。

私を嫌いなはずの彼が、まるで愛しいもののように触れてくる、その理由が解らない。

罰ゲームか何かだろうかと考えて、はっとした。
そうか、今日は……。


「……ぁっ」


ヤバい。油断、した……

考え事に気を取られて、思わず洩れた自分のモノではないような甘い声にどっと羞恥が押し寄せた。

私は顔に集まる熱を知られたくなくて、ギュッと死覇装を握るとその胸に顔を埋めた。

彼の胸に摺り寄っていると同義だとは全く気付く余裕も無い。

そんな私に優しげに微笑った彼は、形の良い口唇で優しく首筋を辿り、そうして辿り着いた其所に



好きだ……



甘い震えを注ぎ込んだ――…


『………修、兵』


漸く、浮かされるように名前を口にした私を、修兵が嬉しそうに呼ぶ。

私の存在を確かめるように触れていた手を、今度は明確な意思を持って這わせて行った。

口唇は羽のように鎖骨までのラインを辿り続け、私の反応を窺う。そうして時折、思い出したかのように囁くのだ。


『好きだ』


と……。


厭、だ……


脳を侵すような甘ったるい声音で注ぎ込まれて躯が戦慄く。

逃げたい、のに躯に思うように力が入らない。
崩れそうな体を当然のように支える修兵の腕が、

熱く、て……。

恥ずかしい
消えたい

逃げた…ぃ…


熱い、熱い、修兵の腕の中で


私は堕ちるように意識を手放した――…





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