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02


「…………」


俺は今、霊圧の解放なんて何十年ぶりだってくらいに、不機嫌オーラを大絶賛放出中で周囲に屍を量産している……。

またあの女かってニヤニヤ笑ってる鵯州には一瞥もくれず、もう隠すのも面倒臭ぇと舌打ちを咬ました。


「技局の鬼も形無しだなおい……ククッ」


全くだ、と思う辺り、もう末期に近いかも知れねぇとまで思う。


本日、三月十四日。

数日前から再び姿を見せる気配すら無ぇ四宮の顔を思い浮かべながら、高が一人の女に振り回されている現状に頭痛がした。







「……ったく」


何で四宮はこうも予測不能なんだと薄笑いを浮かべる俺の前には、モーゼの十戒宜しく道が開かれている。

歩き易い事この上ねぇ。


「忙しいっつってんだろうが」


だったら放置すりゃあ善いとの選択肢は、残念過ぎるが消去されている。
何で此処まで……なんて問いも存在しねぇ。

それは既に必然だ。


四宮に初めて逢ったのは、珍しくも俺から檜佐木の所に出向いてやった時。

寝食も儘ならずに死相を浮かべる檜佐木に、らしく無く仏心が湧いた。

書類を持って現れた俺に恐縮した檜佐木に因って、忙しいっつーのに無理矢理席を勧められ、要らねぇっつーのに茶の用意を頼むのにはまた呆れ、溜め息を吐いて腰を下ろした。

そうして……


『失礼します』

『…………』


憮然と目を向けた先。
茶を運んで来たアイツに、らしくなく一目惚れと言うものをかましていた。

この、俺がだ。


態とらしく摺り寄る女共に辟易する。
間延びした喋り方には吐き気がする。

正直、生物学上の分類でしか無ぇ生態への興味は薄い。

そっち方面への興味関心が枯渇処か皆無なんじゃねぇかと確信していた俺が、欲しいと思った時点でそう言う事なんだろうと妙に納得したのを憶えている。


『書類は今の女からしか受け取らねぇぞ』


ちょっと待って下さい、何でですか、困りますってとゴチャゴチャ言ってやがる檜佐木を軽く脅して会話を強制終了させた。

お前ぇだって、茶出しを敢えて指名してやがったくらいだ、その理由くらいは解んだろ。

俺を観ても、顔色を変えねぇ処か霊圧の欠片も揺らさねぇ。

無意識に凝視しちまっていた俺の視線に気付けば、反らしもせずに不思議そうに見詰め返して来やがる。

その微笑った顔が可愛いと……


脳が認識しやがった。


『十二番隊への遣いは全てアイツに来させろ』


つまりはそう言う事。

俺が気に入った時点で諦めろと言い放ち、無駄話は終いだとばかりに踵を反した。

以来、月に何度も会えるようになった。
少しずつ、仕事以外でも顔を出す回数が増えて行った。

技局の奴等に遭っても、思った通り顔色一つ変えねぇその態度に、柔らかい微笑みに、コイツで間違って無かったと思った。

どんな事でも微笑って受け入れるお前に心底惚れてんだって、気付いてねぇのは四宮だけだ。





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