01
「阿近さんが好きです」
「………そうかよ」
お前しか……
あの難解過ぎる阿近さんが、初めて真っ直ぐな言葉をくれた事が信じられないくらい嬉しくて、幸せで。
全てを許された気がして、想いを伝えた、のに……
「反応が鬼のようです……」
「其処はあまり重要じゃねぇしな」
「…………っ」
やっぱり、鬼だ……
私の想いなんて必要じゃないと言われてるようで…… ううん、本当にそう言ってるのかも知れない。
反応してくれただけ増しだと思うべきなんだろうか。
許されただけで、好きだと云われた訳じゃないし……
あれからも、阿近さんは何も変わらない。
当然だ。
阿近さんは、私を好きな訳じゃないんだから。
私が許された気になっていただけだ。そう、思い知る毎日を過ごしているだけだ……。
そうなんだろうと思いながらも、ほんの少し期待した自分が恥ずかしい。
だったらあの日、どうして来てくれたんですか。
どうしてキスをしたんですか。
阿近さんを見詰めながらただ思う。
何も訊けないのは、理由なんて無かったと、真実の事を知るのが怖いからだと知っている。
そんなものは愚問だと。
解り切った事を直接聞いて、更に堕とされるのが……
お返しを持って来いよ……
「阿近さんっ………」
何か欲しい物は有りますか――…
「……どうした?」
いつも相手にもしてくれないくせに、こんな時ばかり反応を返してくれる阿近さんに苦笑する。
「何でも、ないです……」
ずっとその言葉を真に受けて、阿近さんへのお返しを考え続けていた。
今月の非番を全て潰して、毎日毎日、云々唸って。
其れは幸せな時間に他ならなかったけれど……。
後、三日……
「また、来ます」
お邪魔しましたと、いつもの台詞を告げて立ち上がる。
まだ怪訝そうに窺って来る阿近さんには、微笑んで見せた。
だって私は、変わらないから……
結局。
私は阿近さん好きで、阿近さんが私を好きじゃ無くても其れは変わるものでは無くて……。
だったら其れだけで良いじゃない。
十二番隊から少し離れた所で振り返る。
「見ているだけ、か……」
傍に居る事を拒絶されないのなら、それで良い。
其れは好きでいられる為の、確認にも似ていた――…
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