▼ 04
「「「はい、乾杯〜」」」
「…………」
もう宴会は懲り懲りだって言ってるのに、何故か私は杯を片手に座らされている。
暫く酒席は遠慮したいと拒否する私を捕獲して
『阿近とは行ったじゃな〜い』
と引き摺った。
いえ。阿近には節度って機能が備わってますからと言えれば苦労しない。
乱菊さんに敵う人がいるなら見てみたい……。
は―――…と溜め息を吐き出して見渡せば、とりあえず今一番会いたくない人の姿がない事に安堵して、あの日と似たような状況に溜め息が洩れた。
『責任を取らせて下さい』
修兵君はそう言った。
目が覚めて、一番最初に見たのは修兵君の顔で、口唇が触れそうなくらい近くに在る修兵君の整った顔に、私は声にならない悲鳴を上げて飛び起きた。
あの日も、乱菊さんの飲み会に参加していた。
何だか機嫌の好い乱菊さんが愉しそうに傍に来て、私を酔い潰そうとするのを修兵君が助けてくれた……はず……
『……紗也さん?』
『修兵、君……』
私を抱き締めて眠っていたせいで間を空けずに目を覚ました修兵君が、茫然と見詰める私を見て瞠目したのが解った。
お互いに言葉を発しないまま、沈黙だけが流れていた……。
責任を取らせて下さいと、修兵君が私に頭を下げて来たのは着衣を整えたその後だ。
落ち着いて周りを見れば此処は修兵君の部屋で、昨夜乱菊さんに潰された修兵君を送って来た事も思い出されて目眩がした。
記憶は完全では無いけれど、多分、私の想像で間違っていないだろう……。
責任を取らせて……
修兵君の言葉が胸に突き刺さるようで、ぐっと競り上がるものに掌を握り締める事で何とか耐える。
それは、そういう事なんだと叩き付けられた事実に、胸が張り裂けるような傷みを感じた。
「……ごめんなさい」
「紗也さん……?」
「修兵君が、責任を取る必要なんてないから」
何でそうなったかは解らないけれど、修兵君が憶えていないなら私が誘ってしまったんだろう。
好きだったから……
修兵君が罪悪感を感じる必要なんてない。況してや、責任なんて……
そんな事をされても、余計惨めになるだけだ。
「最、悪……」
自分の莫迦さ加減に呆れてしまう。
せめて泣き顔を晒すなと奥歯を噛み締めた。
顔も見れずに、立ち上がって部屋を出る私に、修兵君はそれ以上何も言わなかった……。
あの日から一週間。
修兵君に彼女が出来たらしいと噂に聴いた。
噂処か、ご本人に、しかも修兵君付きで遭遇しちゃったけれどと自分のタイミングの悪さに虚しくなるけれど……。
修兵君が好きだった。
もう今更、伝える事も出来ない。
振られたって、ちゃんと伝える事が出来たなら、終わりにする事だって出来たのに。
莫迦な私はこうしていつまでも引き摺って、自分で終わらせる事も出来ないままだ。
今更、好きだなんて言ったら……
また、責任を取ると言い出しかねない修兵君が想像出来て、嘲笑った。
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