▼ 02
『その……、一回で良いから話してみてぇって……』
『一回で良いのかよ』
『違ぇっ!!!』
『だってよ』
完全に遊ばれている檜佐木副隊長は何だか凄く可愛くて。
私は、私なんかにと恐縮するのも何処かへ飛んで、大きい身体を小さくして真っ赤になっている檜佐木副隊長をただじっと見詰めていた。
そうしたら、もう勘弁して下さいと言って檜佐木副隊長が机に突っ伏すようにして顔を隠すから、無意識だった私は慌てて目を逸らして謝ったんだった。
結局、私はあの日が原因と言うか、切っ掛けと言うか。
「修兵君を好きになっちゃったんだよね……」
あれから三人だったり二人だったり、乱菊さん達との宴会だったり。
修兵君とは一緒に居る機会がどんどん増えて、一緒に居れば居る程、好きだと想う事が増えて行って。
いつも一緒だったから。
修兵君が、当たり前のように隣に居てくれたから……。
別に好きだと言われた訳でもないのに、修兵君もそうなんじゃないかとでも思っていたんだろうか。
「そんな訳ないのに……」
もう、自嘲も洩れないからと溜め息を吐いて目を伏せた。
修兵君の彼女は、とっても可愛らしい女のコだった。
何かこう、ふわふわっとしてて小さくて。守ってあげたくなるような……
並んで歩く二人は凄くお似合いで、そうだよなぁと納得している自分がいた。
立ち尽くして見ているのも未練がましいと踵を返した瞬間、予期せず掛けられた声に大袈裟に肩が跳ねていた。
『紗也さん……?』
霊圧で判って居るだろうに
その声音が、何だか罰が悪そうに聴こえたのは気のせいだけじゃない。
その理由が解るだけに、私の眉間にも本意ではない皺が寄った。
振り返って何を言うべきか
聴こえない振りも大人気ない。と言うか、私にそんな事が出来る訳もない……。
一つ息を深く吸って気持ちを落ち着けた。声の方を振り返って、ちゃんと先輩らしい対応が出来るように。
私の気持ちはきっとバレバレで、修兵君だって嫌だろう。
だから、大丈夫だから、気にしないでいいからって想いを籠めてみたけれど。
あまり上手く出来なかったみたいだと、修兵君の悲痛な顔で失敗を悟った。
こんな時に、上手く立ち回る事も出来ない。
その場を取り繕う事も出来ない。
「もー、自分が嫌だ」
ちゃんと笑ってあげたかったのに……。
笑えると、思っていたのに――…
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