好きだと言ってくれたのは修兵だった――――
付き合って欲しいと言われたのを何度断っただろう。
隊長格で、エリートで、六回生筆頭としても有名だった檜佐木修兵と並ぶ自分なんて、私には想像も出来なかった。
自分の事は、自分がよく解っているつもりだ。
だけど修兵は
私なんかじゃダメですと
隊長格の方とお付き合いなんて出来ませんと
恐縮する私を逃してはくれなかった。
『ダメな理由は俺自身にしてくれ』
『檜佐木副隊長にダメな理由なんて有りません』
『なら、俺のものになって』
絶対に後悔なんてさせねぇから
その言葉に、一つも嘘なんてなかった……。
傍に居て、ずっと大事にしてくれた。
私はどんどん修兵が好きになって、そうして言いたいことも言えなくなった。
『好き』と比例して増えて行った想いは、『怖い』なのかも知れない。
こうして離れてしまった今も、修兵の手を取ったことを後悔なんてしていない。けれど――――
「ダメだなぁ…」
次に会う時は終わる時
そう決めた、のに。
何をしていても、何を見ても修兵へと想いが繋がって行ってしまう。
「長く、居すぎたせいかな」
離れてしまった事実も、こうして揺れる想いも、一緒に居た時間のせいだと言うのなら、本当に皮肉なものだと思う。
非番明けから瀞霊廷通信の編集作業に入ったらしい修兵は、恐らく隊舎に缶詰めで、今は絶対に会うことはない。
そう解って居れば、気楽なものだなと思う。
今日までに、別れたのかと何度訊かれただろう。
よく私達の事なんて憶えてたねと、何処か他人事のように感心しながら、私は、どんなに痛くても曖昧に笑って遣り過ごす。
否定はしない。
どうせ終わるんだから、否定は要らない。
いずれ、修兵の耳にも入るだろう。
そうしたら、私はやっと
想う夜から解放される。
その時間くらいは、作ってくれる、かな……。
最後くらい、私を見て。
今はもう、彼女という肩書きさえも私を苦しめているprev /
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